宮崎県延岡市で保険業や資産運用のアドバイスに携わる小田初光さんが、地方で暮らす生活者のリアルな視点で、お金に関するさまざまな疑問に答えます。今回は、牛丼やパンが値上げするなど世界的なインフレの影響が日本経済にも及ぶ中で、あらためて「お金を貯める大切さ」を考えていきます。

  • 働き盛り世代の減少と国の債務の増加への対策としてのインフレ政策と景気刺激策
  • もしハイパーインフレが起きれば預金の価値がなくなる。今後はインフレ対策が大事
  • 運用は早く始めた方がいい。ほったらかしで運用できるつみたてNISAを活用

働き盛り世代が減り、国の債務が増加

【質問】
もうすぐ30歳になる社会人です。最近、周りの知人からいろいろとプレッシャーをかけられます。「あんたもお金はちゃんと貯めなよ! 後で後悔しても誰も助けてくれんよ!」と言われています。恥ずかしながら、預金は微々たるもんで、今が楽しければいいかなって思っています。お金を貯めるといっても今いちピンときません。こんな私に、何かできることはあるでしょうか?

前回までは株式投資を中心に、下落相場での考え方や、下落したときの対処法を考えてみました。前回はあくまで、すでに投資を始めている方が対象で、投資信託や株式への投資をどう継続すれば良いかという考え方などを見ていきました。

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資産運用の怖さと、株式・投資信託を売却する時期

今回は、投資の入り口に達していない若者たちに少しでも「お金を貯める大切さ」に早く気付いてもらいたく、働き盛りの方の「お金の貯め方」にスポットをあてて、相場の上げ下げに関係なく「ほったらかしでもお金を貯められる方法」を考えて、そして実践できるまでを考えていきます。

その前に日本の「お金の現状」を理解しないと前に進みませんので、話していきます。

まず、①働き盛り世代(15歳~64歳)の減少で、お金を使う(回す)人が減りました。働き盛りの人がお金を使わないと、景気も悪くなります。逆に高齢者は増加していて、長生きになり老後生活にお金も必要になります。国の社会保障が増え続けているため、税金は増額され、年金の受給開始年齢も上がります。

日本の借金額(債務残高)は世界最悪の1212兆円に達します(令和3年度末財務省予想)。借金の大きさを示すのにGDP(国内総生産=経済規模)との比で判断しますが、このGDP比で250%、つまり軽く2.5倍の借金をしていながら、日本は景気誘導のため、日銀と組んで赤字国債を発行して紙幣を刷っています。

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この借金を仮に毎年10兆円ずつ返しても、121年かかります。令和2年度の予算では税収が71兆円なので、歳出を61兆円に抑えても、返済に121年もかかることになります。途方もない数字です。これでは日本の財政が借金地獄になったとしても仕方ありません。

ピンとこないと思いますので、家計に例えてみます。日本の財政は、手取り月額70万円の方が毎月80万円の生活費を使って、今までの借金の利息支払いを含めて毎月23万円の新しい借金をしている状況にあります。破産しかありませんね。このままでは国の借金は自動的に国民の負担となり、近い将来、税金の山となっていくことでしょう。

もっとも今の政治では国民に極端な税負担はしないでしょうから、税収を増やすためにはインフレを誘導し、景気を良くしていくしかありません。日銀が株(ETF)を買って日経平均株価を上げる政策もその一つ。こんなに自国の紙幣を刷っている国はありません。理論上は、お金の価値が減少するインフレが進めば、借金を目減りさせることも可能です。まさかとは思いますが、国の借金をなくすには、年に何十%も物価が上がるハイパーインフレしか手立てがないかもしれません。

日本銀行
日銀は国債の買い入れだけでなく、ETFの買い入れなどによって景気を刺激し、インフレを促している

ハイパーインフレになると預金の価値がなくなる

ここで、ハイパーインフレがどんなものなのかを簡単に解説していきます。今の市場は、コロナ禍からの回復によって物価上昇がじわじわと音を立てつつあります。相次いで起きている原材料の値上げで、たとえば吉野家の牛丼など、家計に直結する食品が高騰しつつありますが、もし物価が100倍になり、牛丼1杯5万円になるようなハイパーインフレが起きたらどうなるでしょうか。

たとえば、銀行から500万円借りていたとします。今のように物価上昇がほぼゼロだと、元本の返済は容易ではありません。しかし、ハイパーインフレになって牛丼1杯が5万円になったら、借金返済は容易になります。たとえば個人経営の牛丼屋さんは、一日100杯を売れば、一日の売り上げは500万円になり、一日で銀行に返済できます。
一方、汗水を流して働いて、20年間で銀行に500万円の預金をした人は、ハイパーインフレになると、牛丼を100杯食べるだけで預金がパーになってしまいます。

すなわちインフレになると、お金を貸した人は泣きを見て、お金を借りている人は喜ぶのです。国の財政で見ると、国債を買うことで国にお金を貸している国民は泣き、国はありがたや~となってしまいます。見方を変えると、インフレによって国債の元本が目減りした分は「見えない税金」といってもいいかもしれません。これこそが、国がデフレ脱却を目指している理由です。

一方、インフレになると私たちの生活は悲惨です。そのうち給料は上がるかもしれませんが、最近もニュースであったように、パンなど食料品や日用品の値段は毎日のように上がっています。給料が上がる前に物価が上がれば、お金はすぐ底を突き、最悪餓死してしまいます。噓のようですが、あり得る話です。

ハイパーインフレ
ハイパーインフレになると、一生懸命働いて貯めてきた預金の価値が消えてなくなってしまう

だから、インフレ対策として、インフレに比較的強いといわれる株式などでお金を貯める必要があるのです。
銀行に貯めるだけでない、「お金の運用」が大事になってきます。

目的がなくても、つみたてNISAで投資を始めてみよう

将来の大増税のために人生が変わることのないよう、若い世代で気付いた人はすでにお金の運用を始めています。
時間はたくさんあります。運用を始めるのは、一日でも早い方が良いのです。それだけ給料をもらえる回数があるからです。そのためには、投資信託で自動的に運用できるつみたてNISAはうってつけです。

積み立ての目的なんか関係ありません。目的はいずれわかってくるものだし、難しく考えずに、軽い気持ちで好きな投資信託を選べばいいと思います。売りたいときに売ればいいし、つみたてNISAの商品であれば価格が下がったとしても、ほったらかしにして、運用会社に任せれば問題ありません。明るい未来を信じよう! そして毎日を楽しもう!

日本政府が、いかにプライマリーバランス(財政収支)を無視して怠慢な資金繰りを行っているかを話してきましたが、いつ何が起きても不思議ではありません。
過去の日本でも起きている預金封鎖のリスクなど考えると、円に一極集中だけでは怖いものもあります。日本以外のお金も含めて運用を考える必要かもしれません。

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