海外の資産に投資する投資信託は、為替変動の影響を受けます。為替は金利差や需給、国際情勢などさまざまな要因で変動するため、円高か円安のどちらになるか予想するのは困難です。「為替ヘッジ」を活用すれば為替変動の影響を抑えられるので、円高でも投資信託の急な値下がりを避けられるかもしれません。為替ヘッジの効果について解説します。

  • 投資信託で海外の資産に投資する際に、為替変動の影響を抑える仕組みが為替ヘッジ
  • 為替ヘッジあり・なしを選べる投資信託もあり、スイッチングができる場合もある
  • 投資信託の為替ヘッジでは通貨間の金利差に応じたコストがかかる

海外の資産は円安では高くなり、円高では安くなる

円高とは円が強くなり、円安とはドルなどの外国の通貨が強くなることです。

例えば、1ドル=100円の状態から1ドル=80円になった場合を考えてみましょう。今まで、1ドルを得るために100円かかっていたものが80円で済むため、ドルに対して円が強くなったことになり、「円高」となります。

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逆に1ドル=120円になった場合は、1ドルを得るのに120円が必要になるので、円が弱くなり「円安」となります。つまり海外の資産は、日本から見ると円安では高くなり、円高では安くなるわけです。

投資信託の魅力のひとつが、海外の資産にも少額から気軽に投資ができることです。海外資産は、特に債券については利回りが比較的高い商品も多いため、海外資産を対象とする投資信託を活用すれば、国内資産のみの投資と比較して大きな利益をあげられる可能性があります。

海外の資産に投資をすれば、為替変動の影響を受けることになります。たとえば投資対象となる株式や債券などが値上がりした際に円安局面であれば、投資対象の値上がりと為替の恩恵の両方を同時に受けられて、得られる利益はより大きくなります。

一方で、投資対象が値上がりしても、為替が円高になってしまえば、せっかくの値上がりが為替で相殺されてしまい、場合によっては収支がマイナスになることもありえます。

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為替変動の影響を抑えるのが為替ヘッジ

為替ヘッジとは、為替変動の影響を抑えて投資をする手法です。「ヘッジ」とは英語で「逃げる」という意味で、つまり為替ヘッジとは為替変動から逃げることを意味します。

為替ヘッジでは為替の先物取引を使って、為替変動の影響を抑えます。為替ヘッジの仕組みは非常に複雑なため、投資をする際には必ずしも細かい仕組みまで理解する必要はありませんので、ここでは詳しい説明を省きます。「為替ヘッジを利用すれば、為替変動の影響を抑えられる」と覚えておけばよいでしょう。

為替ヘッジの仕組みがある投資信託は、為替変動の影響が抑えられるので、基準価額が変動する要因は、投資対象である株式や債券そのものの価格変動が主因となります。ただし、為替ヘッジを行った場合でも為替変動の影響を完全にゼロにできるわけではないので、その点は注意が必要です。

為替ヘッジを行う投資信託への投資を検討する際は、自分が持っているほかの金融商品とのバランスも大切です。ほかに投資をしている資産が為替の影響を受けやすいものばかりであれば、為替変動の影響が抑制された商品にも分散投資することも選択肢のひとつといえるでしょう。

円安のデメリットやリスクをどうやって避けるか?

為替ヘッジあり・なしを選べる投資信託もある

投資信託の中には、投資対象の資産が同じで「為替ヘッジあり」と「為替ヘッジなし」の2つのコースを選べる商品があります。また、為替ヘッジありとなしのコースを、運用中に無料でスイッチングできる商品や金融機関もあります。

為替ヘッジありとなしを自由にスイッチングして、円高局面では為替ヘッジありを選択して値下がりを防ぎ、円安局面では為替ヘッジなしを選択して為替を味方につけることができれば、より多くの利益が期待できます。ただし実際には円高や円安を予測することは難しく、狙いが外れて損失を増やすこともありうるので、値動きを抑えた資産運用を望む場合は、為替ヘッジなしの投資信託を選ぶのが合理的かもしれません。

スイッチングで注意すべきことは、税務上、一度売却したという扱いになることです。したがって、特定口座などの場合は利益に対して課税されます。NISA口座で購入した場合は、同じ非課税枠を利用したまま運用することはできず、非課税枠に空きがない場合は特定口座や一般口座に移されることになります。

このように、為替ヘッジあり・なしのスイッチングはメリットもありますが、税務上のデメリットがある点も認識しておきましょう。

外国資産への投資で気になる「為替リスク」をかわす

為替ヘッジのコストやリスクに注意

為替ヘッジありの投資信託に投資をする際には「ヘッジコスト」と呼ばれるコストがかかる点に注意が必要です。

為替ヘッジは先物取引の仕組みを使用します。先物取引では、通貨間の金利差に応じてコストが必要です。そのため、投資信託の投資対象が高金利の国である場合は、為替ヘッジコストも高くなってしまい、利益を圧迫する場合があります。

現在、日本と海外の金利差は拡大傾向にあるため、今後はヘッジコストが増加してしまう可能性が高いでしょう。さらに、日本と外国の金利差が拡大する局面では、為替が円安に振れやすくなります。円安局面で為替ヘッジありの投資信託を選択すると、為替ヘッジなしと比べて、為替とヘッジコストの両方で利益が抑えられてしまう可能性が高くなります。

為替ヘッジのコストや、為替変動に伴うリスクを考えながら、現在の情勢や投資スタイルに応じて、為替ヘッジあり・なしのどちらの投資信託を選ぶかを判断する必要があります。

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