投資の手法としてのFXと外貨預金は、為替差益や利息が期待できるという基本的な原理は同じです。しかし、取引コストや利益を出せるタイミングなど、細かい部分を見てみると違いがいくつも見えてきます。この記事では、5つのポイントに絞ってFXと外貨預金を徹底比較しました。FXのメリットや注意点を理解するために役立ててください。

  • 利益を出すチャンスの多さ・大きさではFXに軍配が上がる
  • ただし、FXは証拠金を差し入れて行う信用取引の一種
  • 使い方次第では、FXはハイリスク。慣れるまではレバレッジを低く、少額から

vs1 取引コスト

FXは、外貨預金と比べて取引手数料が安いことが特徴です。FXでは売買時に手数料がかからないのが一般的ですが、通貨ペアの買い値と売り値の差(スプレッド)が、投資家が実質的に支払うコストとなります。例えば米ドル/円の場合、2022年8月時点では多くのFX会社が、スプレッドを1ドル当たり0.2銭に設定しています。1ドル=130円とすると、手数料率は往復で約0.0031%ですから、FXの手数料が非常に低いことがわかります。

ただし、実際に支払うコストは取引のレバレッジによって変わってきます(レバレッジについては記事の後半で詳しく解説します)。例えばレバレッジ10倍で取引すれば、実質的な手数料率も10倍になってしまいます。

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これに対して、外貨預金は、預け入れと引き出しの際に、為替取引の手数料がそれぞれ数十銭から数円かかるのが一般的です。例えば三菱UFJ銀行の米ドル預金では、2022年8月時点で窓口での取引では1ドル当たり片道1円、インターネットバンキングでは片道25銭の為替手数料がかかります。1ドル=130円の場合、外貨預金の往復での手数料率はそれぞれ約1.5%、約0.38%となり、インターネットバンキングであっても手数料率はFX(レバレッジ1倍)と2桁もの違いがあります。

外貨預金ではFXと違って、銀行が実際に外貨を購入して預金を作成しています。そのため、取引コストや事務コストがどうしてもかかってしまうのです。為替差益が出たとしても、手数料で利益が目減りしてしまうのは外貨預金のデメリットといえます。

【図表1】主な通貨の一般的なスプレッドと為替手数料(片道)
  FX 外貨預金
米ドル/円 0.2銭 1~2円
ユーロ/円 0.4~0.5銭 1.4~4.5円
オーストラリアドル/円 0.4~0.6銭 2~7円

※外貨預金の為替手数料はメガバンク3行の窓口での取引。データは2022年8月時点

vs2 為替差益のチャンス

外貨預金で為替差益を狙えるのは、円安局面だけです。1ドル=130円で米ドル預金を始めた場合、1ドル=135円の円安になれば5円分の為替差益を得られますが、逆に1ドル=125円の円高になると5円分の為替差損を抱えることになります。外貨の価値が下がっている円高局面で外貨預金を解約しなければならない場合には、為替差損が出て損失が確定してしまいます。

これに対してFXは、円高でも円安でも為替差益を狙う取引ができます。FXは外貨を「買う」だけではなく、「売る」ことからも取引を開始できるためです。

例えば1ドル=130円(円安)の時にドル/円を売りから始めて、1ドル=125円(円高)になったところで買い戻せば、差額の5円分が利益となります。このように、FXでは為替の下げ相場でも利益を出すことが可能なのです。

ただし、FXでレバレッジを高めに設定していて、なおかつ為替が想定と逆方向に大きく動いた場合には、保有する通貨のポジションが自動的に決済されて損失が確定する「ロスカット」の可能性があることに注意が必要です。

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vs3 利息獲得のチャンス

FXは毎日、「スワップポイント」という名前の、利息のようなものが発生します。スワップポイントとは、ペアになった通貨の金利差を反映したもので、金利が高いほうの通貨を買った場合に、原則として毎日受け取れます。

例えば米ドルの政策金利が2%で、日本円の政策金利が0%の場合、ドル/円を買い持ちしていると、差し引き2%の金利差に基づくスワップポイントが口座に毎日積み上がっていくことになります(ただし、スワップポイントの利率がぴったり年率2%になるわけではありません)。

これに対して、外貨預金では利息を受け取れるタイミングは満期時もしくは解約時のみです。また、外貨定期預金の利息は適用期間にも注意が必要です。広告には年利で記載されていても、適用期間が1カ月なら実際にもらえる利息は「年利÷12」だけ。外貨預金で利息が思ったより少ない場合は、適用期間が落とし穴になっているケースがしばしば見られます。

vs4 レバレッジ

FXは、手元資金を証拠金として担保に入れることによって、証拠金の何倍ものお金を取引できるのが魅力です。この仕組みをレバレッジといい、倍率は最大25倍まで設定できます。手元資金が1万円であっても、FXでは最大で25万円分の取引ができるのです。

例えばドル/円を1ドル=130円で買って、1ドル=135円の円安となったタイミングで決済した場合、レバレッジ1倍では利益は384円(3.8%)ですが、レバレッジ25倍なら9615円(96.2%)という大きな利益を手にすることができます。

レバレッジを高く設定すると、取引が上手くいけば、短期間で大きな利益を獲得できます。ただし、損失が出た場合にも金額が大きくなることに留意しなければなりません。相場が急変したときにはロスカットされる可能性も高くなります。

一方、外貨預金は実際に持っている金額分しか購入できません。レバレッジが活用できないため、獲得できるリターンも限定的になります。もちろん、損失が出たとしてもやはり限定的なので、リスクを避けたい場合にはメリットとしてとらえることもできます。

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vs5 保全の仕組み

FXで資金を預かった金融機関は、その資金を自己の資産と完全に分けて管理することが義務付けられています(金融商品取引法)。もしFXの運営会社が倒産したとしても、その資産は優先的に保全されるのです。そのため、万が一のことがあっても安心だといえます。

これに対して外貨預金は、預金が守られるペイオフの対象外となっています。ペイオフとは預金保険機構が元本1000万円までとその利息を払い戻す制度で、通常の円建ての預金にはこれが適用されます。金融機関が破綻した場合、すべての外貨預金が戻ってくるとは限らないということはあまり知られていません。

まとめ──FXの方がチャンスは大きい

FXと外貨預金を5つのポイントで比較しました。

【図表2】FXと外貨預金の違い
  FX 外貨預金
取引コスト 安い 高い
為替差益のチャンス 円高でも円安でも 円安のみ
利息獲得のチャンス 毎日(スワップポイント) 満期時または解約時
レバレッジ 1~25倍 1倍
保全の仕組み あり なし

利益を出すチャンスの多さ・大きさという意味ではFXに軍配が上がるといってよいでしょう。ただし、FXは証拠金を差し入れて行う信用取引の一種です。損失が大きくなりすぎないようにロスカットなどの特有の仕組みが組み込まれており、最初のうちは戸惑うこともあるかもしれません。慣れるまでは倍率は低めに、金額も少しから始めましょう。

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