宮崎県延岡市で保険業や資産運用のアドバイスに携わる小田初光さんが、地方で暮らす生活者のリアルな視点で、お金に関するさまざまな疑問に答えます。今回のテーマは、今年10月に保険料の改定が行われる火災保険。物価高の中で保険料も値上がりするとなると、生活費だけでなく火災保険や地震保険の見直しも検討すべきかもしれません。

  • 今までに類を見ない大規模改定となる火災保険。保険料の増加が家計を直撃
  • 築年数が古い住宅は火災保険料の増額が特に大きい。特約も増額される
  • 「保険金を下げる」「自身の負担を増やす」という方法で保険料を下げるのもあり

火災保険料の値上げは今までにない大規模改定

【質問】
いや~参ってます。ここんとこの値上げラッシュで家計はズッタズタ。そこに来て今度は、火災保険の保険料が上がると聞きました。保険は物価に関係ないと思うのですが、もしかしての便乗値上げですかねぇ。火災保険の満期は確か来年あたりですが、見直しをした方がいいのでしょうか?

物価上昇が家計を圧迫している状況で、今回のように値上げでお困りという相談は増えています。しかし、何度もお話ししていますが、今の日本は物価が上がり始めたばかりで、インフレに少し足を踏み入れただけのものです。

新しいNISAの“裏技”教えます! ニッセイアセットマネジメントの情報発信&資産運用アプリ

食品、エネルギーなどは早くから価格転嫁が穏やかに進んだこともあり、株価にも反映されているようですが、製造業など原材料コストがかかるものは、いまだにコストが上がり続けているだけに、価格転嫁はこれからの話で、物価の安定は当分先のことでしょう。まだまだこれからインフレーションの波を感じていくことになります。
その中で火災保険が2022年10月に大規模改定ですから、相談者のように便乗値上げ?と思われがちですが、もちろん物価上昇とはまったく関係ありません。

火災保険は、地震保険ともに数年おきに改定がありましたが、先週のように線状降水帯が各地で発生し、気象庁の特別警報が途切れることもないような状況が毎年のように起きる現状では、大規模自然災害の増加に対して各損害保険会社の支払い余力のバランスが保たれていないこともあり、保険会社の赤字が継続中であることは理解できます。

それでもなお、火災保険の値上げが報道などで大きく言われているのは、今回の改定が今までに類を見ない大規模改定になっていることにあります。物価高も重なって、家計の危機は一層深まる結果となっています。

そこで今回は大まかではありますが、火災保険の主な改定点と、保険を見直した方がいいのかどうかを、契約者目線で考えていこうと思います。

トラリピインタビュー

スーパーマーケット
日用品が値上がりする中で、火災保険まで値上がりするのは家計にとってつらい

宮崎県の一戸建てで火災保険料が33%も高くなる!?

さて、今回の火災保険の大規模改定ですが、主な内容としては、

①全国平均で10.9%(※)の保険料の引き上げ
②契約期間を最長10年から最長5年に短縮
③マンション等を対象に、鉄筋コンクリート造りの保険料率の見直し

となっていますが(※現存する全社契約の改定率を平均した値)、それだけではないことにも注目する必要があります。

ここからは、宮崎県在住の相談者の試算条件を例にして、ある保険会社での保険料がどれだけ増減するか、イメージをつかんでいただきます。

  • 建物:木造専用住宅(築27年)
  • 評価金額:1700万円(地震保険の補償額は850万円)
  • 補償内容:火災、落雷、破裂、爆発、風災、ひょう災、雪災、水災(自己負担なし)、外部からの物体の落下、飛来、水濡れ、盗難など、不測かつ突発的な事故

この条件で、保険期間5年での一括払いの保険料を、10月の改定前と後で試算してみた結果、なんと……改定後は約33%も高くなっていました。
ちなみに1年間にしても約33%とあまり変わりはなかったので、長期契約の割引メリットよりは、これからの改定による保険料増をなくすことの方が意味があると思われます。

マンションの場合も、試算したところ同じような結果となりました。宮崎県の建物は、全てにおいて見直しを考える必要があると結論付けました。特に築年数が重要で、築25年以上建っている建物は最大の増額を覚悟しなければいけません。また改定の変更項目には、水災保障は原則セット(マンションなど共同住宅を除く)とあります。うちには水が来ないからいらないよ、といって保障を外すことはできなくなります。

古い家
築年数が古い建物は、火災保険の保険料の値上がりが特に大きくなる

そして今までなら一部保険(少額)で契約していたものも、「建物の協定再調達価額」と「建物の保険金額」は同じにしなければいけなくなり、保険料は増額となります。そして雑危険(盗難を除く)、破汚損に対して、自己負担が5万円となります(今までは破汚損の自己負担は1万円)。

最後に、基本契約に付けられている特約保険料も増額改定されています。主なものに、個人賠償責任特約、携行品損害特約、借家人賠償責任なども含まれています。火災保険と関係ないものも含まれていることから、今後、自動車保険、傷害保険の特約も値上げになりそうです。

火災保険の保険料を抑える方法とは?

今回の火災保険の改定では、全国的に地域ごとで増減率に開きがあります。同じ保険金額で、九州内でも福岡県の建物と比較した場合、なんと宮崎の建物が約95%割高になっていました。南海トラフ巨大地震など未曾有の災害への備えが、保険料に転嫁されているんだな~と改めて思った次第です。

保険料を抑えるためには、

①評価を最大限に利用して保険金額を下げる
②事故の時に自身が負担する金額を増やす

といった方法があります。あくまでも、大規模災害の時に使用するのが火災保険だと割り切ることもありだと感じます。

不動産投資家にとっても、保険料のコストは大事なものです。これからは災害リスクも重視した運用も考える必要がありますし、できれば今できる最善の方法「長期契約10年」も視野に入れた見直しを考えるべきです。10月改定まで2か月を切った今、やれることは限られますが、少なくとも宮崎県の皆様は約30%アップのコストに対しては何かしら手立てを考えるべきでしょうし、行動を起こさなければなりません。家財保険の保険料もアップしていることも忘れないでください。

メルマガ会員募集中

インデックスファンドの次の一手