ベア型ファンドは、相場と逆の値動きをするように作られた特殊なファンドです。相場の下落局面でも利益を出せるのが特徴ですが、通常のファンドにはない注意点もあり、使いこなすためにはちょっとしたコツが必要です。この記事では、ベア型ファンドが役に立つ場面と上手な使い方について解説するので、興味のある人はぜひ参考にしてください。
- ベア型(インバース型)ファンドは相場と逆の値動きをするように設計されている
- ベア型ファンドは下げ相場での投資や、個別株の損失を抑える目的で活用できる
- ベア型ファンドは上げ相場に弱いため、相場が回復したらすぐに手放す
相場とは逆の値動きをするベア型ファンド
ブル型ファンド(レバレッジ型ファンド)とベア型ファンドはセットにして語られることが多いですが、それは商品設計の方法が基本的に同じであることが理由です。「ブル型ファンド」「ベア型ファンド」と呼ばれる投資信託やETFは、先物取引やオプション取引などの特殊な手法を組み込んで、ターゲットとなる日経平均株価などの指数の2倍、3倍などの倍数で価格変動するように作られています。
相場と同じ方向の値動きで、より大きな値動きになるように作られたのがブル型なら、相場と反対方向に動くように作られたのがベア型だといえます。ベア型ファンドは「インバース型」と呼ばれることもあります。
日経平均に2倍で連動するファンドがブル型なら、日経平均が1%下落すれば基準価額は2%下落します。これに対してベア型のファンドは、設定された倍率が1倍ならば1%上昇、2倍ならば2%上昇するように作られています。
価格変動の倍率が大きければ、当然ファンドの値動きも大きくなるため、投資経験が豊かな人に向けた商品でもあります。仕組みをよく理解せずに初心者が購入すると、想像以上に大きな損失を出す可能性もあるので注意してください。
国内の代表的な資産運用会社がベア型の投資信託やETFを運用しており、ベンチマークとなる指数も倍率もさまざまです。詳しくはこちらの表をご参照ください。
投資信託名 | 投資対象 | レバレッジ | 信託報酬 (年率・税込み) |
運用会社 |
---|---|---|---|---|
日本トレンド・セレクト <リバース・トレンド・オープン> |
日本株 | -1倍 | 1.012% | 日興アセットマネジメント |
One 日本株ダブル・ベアファンド | 日本株 | -2倍 | 0.935% | アセットマネジメントOne |
SBI 日本株3.7ベアIII | 日本株 | -3.7倍 | 0.913% | SBIアセットマネジメント |
NASDAQ100 3倍ベア | 米国株 | -3倍 | 実質 1.52375%以下 |
大和アセットマネジメント |
T&Dダブルブル・ベア・シリーズ8 (中国・ダブルベア8) |
中国株 | -2倍 | 実質 1.074%程度 |
T&Dアセットマネジメント |
T&Dダブルブル・ベア・シリーズ8 (インド・ダブルベア8) |
インド株 | -2倍 | 実質 1.074%程度 |
T&Dアセットマネジメント |
コード | 銘柄名 | 対象指数 | レバレッジ | 信託報酬 (年率・税込み) |
運用会社 |
---|---|---|---|---|---|
1571 | NEXT FUNDS 日経平均インバース・ インデックス連動型上場投信 |
日経平均株価 | -1倍 | 0.88% | 野村アセットマネジメント |
1459 | 楽天ETF- 日経ダブルインバース 指数連動型 |
日経平均株価 | -2倍 | 0.385% | 楽天投信投資顧問 |
1569 | TOPIXベア上場投信 | TOPIX | -1倍 | 0.825% | シンプレクス・ アセット・マネジメント |
1368 | ダイワ上場投信- TOPIXダブルインバース (-2倍)指数 |
TOPIX | -2倍 | 0.825% | 大和アセットマネジメント |
1465 | ダイワ上場投信- JPX日経400 インバース・インデックス |
JPX日経 インデックス400 |
-1倍 | 0.825% | 大和アセットマネジメント |
1469 | JPX日経400ベア2倍 上場投信(ダブルインバース) |
JPX日経 インデックス400 |
-2倍 | 0.825% | シンプレクス・ アセット・マネジメント |
2842 | iFreeETF NASDAQ100インバース |
ナスダック 100指数 |
-1倍 | 0.825% | 大和アセットマネジメント |
1573 | 中国H株ベア上場投信 | ハンセン 中国企業指数 |
-1倍 | 0.935% | シンプレクス・ アセット・マネジメント |
ベア型ファンドはこんなときに役に立つ
ベア型ファンドは「相場が下がると基準価額が上がる」という性質を持っています。株式市場は長期的には成長を続けると考えられているため、ベア型ファンドはその特性上、資産運用の主役にはなりえません。ただし、次のような特定の条件下ではベア型ファンドが役立つといえるでしょう。
不景気になり、株価がしばらく下がることが予想される場合
明確に不景気に突入し、株価が一方的に下落を続けるような場面では、通常の株式投資で利益を上げることが困難です。下げ相場においては大半の株が値下がりしており、その中から値上がりする株を見つけ出すのは困難だからです。
このような場合にも、ベア型ファンドであれば利益を狙って運用できます。下げ相場で利益を出すには、従来であれば信用取引で空売りするなどのテクニックが必要でした。しかし、信用取引には証拠金や決済期限など独特のルールもあり、一般の投資家が気軽に手を出せるものではありません。
ベア型ファンドは信用取引と関係なく、通常の株式や投資信託の口座で誰でも売買できます。「下げ相場でも攻めの運用がしたいが、信用取引はちょっと…」という投資家には、ベア型のファンドがおすすめです。
保有している個別株などの損失を抑えたい場合
ベア型ファンドは、すでに個別株や投資信託を保有している投資家にとって、相場が下落を始めた時の保険に役立ちます。
相場全体が値下がりを始めると、個別株などの資産や、株式を組み込んでいる投資信託は連動して価値が下がっていきます。そんな中でベア型ファンドは全く逆の値動きをするため、さらに相場が下がったとしても、個別株などの含み損をベア型ファンドの値上がりでカバーできるのです。
下げ相場になっても手放せない銘柄があるような場合は、あらかじめベア型ファンドの存在を念頭に置いておき、下げ相場が始まったと思った時点でベア型ファンドを仕込む戦略もありでしょう。
ベア型ファンドは相場が回復したらすぐに手放す
ベア型ファンドは下げ相場で利益が出るように設計されているため、当然のことながら上げ相場やボックス相場(上限と加減がある程度決まっており、市場にトレンドが特にない状態)には弱い傾向があります。
ブル型(レバレッジ型)・ベア型ファンドは先物やオプションを使った複雑な仕組みのファンドで、手数料もその分高いのが特徴です。ベア型ファンドを上手く使いこなすには、下げ相場が終わったと感じたところで早めに手放すのがポイントになります。いつまでも持っていると、高い手数料や相場と逆行する値動きによって、投資のパフォーマンスが落ちる原因になるので注意しましょう。