政府は「貯蓄から投資へ」と言いますが、「投資って難しそう……」というイメージを抱く方も多いかもしれません。そんな投資未経験者でも投資しやすいのが、インデックスファンドと呼ばれる投資信託です。まだ投資したことがない方は、ぜひ本記事を参考にして、インデックスファンドで投資デビューを果たしてください。
- インデックスファンドとアクティブファンドの違い、ETFとの違いは?
- インデックスファンドに向いているのは、将来のために資産形成をしたい人など
- インデックスファンドを選ぶ最大のポイントは信託報酬。純資産総額にも注目
「アクティブ運用」と「インデックス運用」
投資信託とは、「投資家から集めたお金をひとつの大きな資金としてまとめ、運用の専門家が株式や債券などに投資・運用する商品」のことです(投資信託協会ホームページより)。この「投資・運用」の方法は、「アクティブ運用」と「インデックス運用」の2種類に大きく分けられます。
市場平均を上回る成果を目指すアクティブファンド
アクティブ運用を行う投資信託を「アクティブファンド」といいます。アクティブファンドは、運用の専門家が株式などの銘柄を選別し、市場平均(TOPIXなど)を上回る運用成果を目指します。「値上がりを重視」「安定した配当収入を重視」など、ファンドごとに成果についての考え方や運用方針が異なるのも特徴です。
したがって、たとえば好景気で日経平均株価が上がっている状況であっても、日本株に投資するアクティブファンドならすべて値上がりするとは限りません。逆に、日経平均株価が下がっているときでも価格が上がるアクティブファンドもありえます。
市場平均と同じ値動きを目指すインデックスファンド
TOPIXや日経平均株価のような、市場平均を表す指数(英語でインデックスといいます)と同じ値動きになるように運用する手法を「インデックス運用」と呼び、インデックス運用を行う投資信託を「インデックスファンド」といいます。
インデックスファンドは株価指数などとほぼ同じ値動きとなるので、ファンドごとの違いがほとんどなく、指数を見ればファンドの値動きもわかるのはメリットです。
商品ごとの当たり外れがないのがインデックスファンド
インデックスファンドの大きな特徴は、信託報酬などのコストが比較的低いことです。たとえ年間0.5%程度の違いでも、長年運用を続ければ、信託報酬の差が大きなリターンの差になります。
アクティブファンドが必ず市場平均を上回るとは限らず、むしろ市場平均に負けるファンドの方が多いともいわれます。商品ごとの当たり外れが大きいのがアクティブファンドです。一方のインデックスファンドは、たとえば米国株式市場のS&P500指数への連動を目指すファンドなら、どの商品を選んでもほとんど同じ値動きになります。商品ごとの違いは信託報酬ぐらいなので、商品選びで悩まずにすみます。
商品ごとの当たり外れがほとんどないという点で、インデックスファンドは投資未経験者や投資初心者にやさしい商品といえます。
インデックスファンド | アクティブファンド | |
---|---|---|
運用の特徴 | 市場平均と同じ値動きを目指す | 市場平均を上回る成果を目指す |
運用コスト | 低い | 高い |
運用成績 | 市場平均(株価指数など)とほぼ同じ | 市場平均を上回ることもあるが、下回ることも多い |
商品ごとの違い | 同じ指数への連動を目指す商品の場合、違いはほぼ信託報酬のみ | 商品ごとに特徴や運用成績が大きく異なり、選ぶのが難しい |
インデックスファンドとETFの違い
インデックスファンド(投資信託)と似た金融商品に「ETF」があります。ETFとはExchange Traded Fundsの略語で、日本語では上場投資信託と訳されます。
ETFもそのほとんどはインデックスファンドと同じく、日経平均株価のような市場平均と価格が連動するように設計されています。
インデックスファンドとETFの違いは、ETFは株式の個別銘柄と同じく株式市場で売買するので、取り扱う金融機関が証券会社に限られることです。ただし、株式と同じようにリアルタイムで値動きを見ながら売買できるのは大きな利点です。
信託報酬も一般にはETFの方がインデックスファンドより低く設定されていますが、ノーロード(購入時手数料無料)が多いインデックスファンドとは対照的に、ETFでは必ず売買手数料が発生するのはデメリットといえます。
一方、ETFと比較したときのインデックスファンドのメリットとしては、つみたてNISAの対象商品が多く、少額で積立投資をやりやすい点が挙げられます。
インデックスファンド | ETF | |
---|---|---|
取り扱う金融機関 | 証券会社、銀行など幅広い | 証券会社のみ |
取引価格 | 購入・売却時点ではわからない | 値動きを見ながら、指値注文で売買できる |
信託報酬 | ETFより少し高い | 低い |
売買手数料 | 購入時手数料ゼロ(ノーロード)の商品が多い | 売買時に必ず発生する |
積立投資 | やりやすい。つみたてNISA対象商品なら利益が非課税 | 証券会社によっては累積投資が可能 |
インデックスファンドに向いている人の特徴
以上のような特徴から、インデックスファンドは投資未経験者の「入り口」に適した金融商品ということができます。
投資未経験者以外で、インデックスファンドがどんな人に向いているのかを考えてみると、
- 将来に向けた資産形成のために、積立投資を行いたい人
- 大きなリスクを取りたくない人・コツコツ投資を志向する人
- 銘柄選択や売買のタイミングを考えたくない・できるだけ放置しておきたい人
の3点が挙げられます。
インデックスファンドは投資信託なので、投資する人が銘柄選択をする必要がありません。また、株価指数などに連動した値動きになるので、株式の個別銘柄と比べて値動きは安定する傾向があります。
さらには、信託報酬などのコストがアクティブファンドより安いというメリットもあるため、長期での積立投資に向いていると考えられます。
インデックスファンドはつみたてNISAの対象商品も多く、年間40万円までの投資であれば利益が20年間非課税となるので、つみたてNISAを活用した資産形成にもぴったりです。
インデックスファンド、どうやって選べばいい?
インデックスファンドといっても実にさまざまな種類があります。最近では、アメリカのS&P500という株価指数への連動を目指すインデックスファンドが人気を集めていますが、すべての人が米国株のインデックスファンドに適しているとは限りません。適切なファンドを選ぶためには、まず「どの資産に投資しているか」を確認することが大切です。
株式なら国内株式(日本株)や米国株式、さらには世界株式全体や新興国株式全体を対象にしたインデックスファンドがあります。日本株でもTOPIXのような旧東証1部の銘柄を対象にする指数や、時価総額が比較的小さい銘柄を対象とする「JPX日経中小型株指数」などがあり、それぞれのインデックスファンドで値動きの傾向は異なります。
インデックスファンドの投資対象は株式だけではありません。債券やREITの市場平均への連動を目指すインデックスファンドもあります。
アメリカの企業に将来性を感じるのであれば、S&P500指数やナスダック100指数のインデックスファンドを選ぶことになりますし、大きな値動きを避けながら運用したい場合には、先進国債券のインデックスファンドが候補に挙がるでしょう。為替の影響を抑えたいときは、「為替ヘッジあり」のインデックスファンドを選ぶのも手です。
そして、同じ指数を対象とするインデックスファンドからどの商品を選ぶべきかは、やはり信託報酬が高いか安いかが重要な基準になります。当然、信託報酬が安いファンドの方が利益を出しやすくなります。
信託報酬以外では、純資産総額もぜひ見ておきたいポイントです。純資産総額が少ないインデックスファンドは、早期に償還されてしまう可能性があります。資産形成のために買ったファンドが途中で換金されてしまえば、運用効率は落ちてしまいます。長期投資には純資産総額が多い、人気があるインデックスファンドを選ぶのが確実だといえるでしょう。