「預金なら安心」って本当なの? 「元本保証」って、実際に何を保障してくれるの? 実は、現金にもリスクが潜んでいるのです。本連載ではそんな「現金のリスク」を切り口に、お金のほんとうの価値を守るための資産運用について考えていきます。今回は、つみたてNISAについて「非課税で投資できる」以上に大切なことが何かを考えます。

  • つみたてNISAは非課税で投資できるが、20年後の利益は約束されていない
  • 「長きに渡る経済成長」が大切な積立投資では、日本より新興国に期待
  • インドの経済成長力と、税制が優遇される積立投資制度「SIP」に注目

タイトルはある国(?)の国葬での追悼演説と、その視聴者の呟きを模したものです(笑)。20年後、こんな会話がなされないと良いですね。

強烈な円安は、多くの人に日本円に対する不安を駆り立てました。当連載で最初に述べた通りの展開でしょうか? そして、その不安に対する解消として、おそらく、多くの人が選択肢に挙げるのが、iDeCOやつみたてNISAでしょう。
しかし、これらの選択肢は不安解消という結果を得ることができるのでしょうか?

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ポイントは「為替」。特定の国のお金に偏らない投資

本稿では、まず、つみたてNISAについて考えてみたいと思います。

NISAについて、正しくご理解いただいていますか?

NISAについて「正しくご理解いただいていますか?」と申し上げておきながら、NISAの説明は他の記事に譲ろうと思います。と言いますのも、筆者は、NISAもつみたてNISAも行っていませんから。理由は、どちらも損益通算の機会を失うからです。

課税や非課税というのは譲渡所得(=課税所得)における計算での話に過ぎません。投資家が欲しているのは投資元本に対して、プラスのリターンとなる純粋な利益です。課税所得と(純粋な)利益とは異なることもあります。例え、利益が生じていたとしても、課税計算上、損失となり、損益通算の機会を得ることもあります。詳しくは、当連載57回をご覧ください。

NISAを利用しなくても非課税となる投資の例

さて、そもそもNISAやつみたてNISAは、課税所得上の利益に対して非課税な制度に過ぎません。しかし、NISAが始まって数年が経った頃でも、若いFPが「NISAって、必ず儲かるんですよね」などという話を聞いて驚愕した記憶があります。NISAが非課税の制度だとしても、将来の利益が約束されたものではありません。

トラリピインタビュー

ましてや、つみたてNISAに至っては、金融庁が「お墨付き」を与えた商品が列挙されていますが、それらとて将来の、(非課税期間が終わる)20年後の利益が約束されたものではありません。

投資をするうえで、まず優先すべきは税金の心配なのでしょうか? もっと優先して考えることがあるでしょうに。

長期積み立て投資こそ、実は投資先選びが大切です

よく長期積み立て投資の特徴として、「一度、始めたら、放っておいて良い」などという説明がなされます。放っておいて良いのは、投資先が放っておいても長きに渡る成長が見込まれる場合に限られるのでしょうか?

そうです。この「放っておいて良い」投資先には、日本が含まれないことは自明の理でしょう。積み立て投資で著名な方がTVで「積み立て投資には、日本はやめましょう」的な話をしていましたし、事実、この方が推薦する積み立て投資の商品には、投資先に日本は含まれていないようです。

長きに渡る経済成長が見込まれる国といえば、思いつくのが新興国であり、新興国株式ファンドへの投資を検討することになります。新興国株式ファンドも、つみたてNISAのお墨付きを得ているものもありますね。しかし、新興国株式ファンドの代表格ともいうべき中国は一人っ子政策の影響で、今後、高齢化が進むと考えられます。日本と同じリスクを抱えることになりそうですね。

同じ新興国でも、話は変わりますが、最近、ニュースなどで耳にする機会が増えたのがインドではないでしょうか? 来年には中国を抜いて、インドが世界一の人口を誇る国になりそうです。高齢化率も日本の3分の1以下です。

インドの風景
インドの人口は近い将来、中国を抜いて世界一になる見込み

つみたてNISAよりも「SIP」

Systematic Investment Plan(SIP)とは、インドにおける少額で投資信託を定期的に積み立てて購入することができ、税制上の優遇措置もある制度のことです。何だか、どこぞの国にも似たような制度がありますが、まさか私たちがインドのSIPを利用しましょうという話ではありません。

SIPの伸びに便乗しましょうというお話です。つまり、インドでSIPの利用者、つまり資金の流入が続くのでしたら、インド株式の成長が見込まれます。インドという国そのもの成長に期待できますし。

私たちが投資の対象として検討すべきは「インド株式ファンド」の類ですが、おそらくはつみたてNISAの対象にはなっていないでしょう。

積立投資の税制優遇制度の口座数
日本(つみたてNISA) インド(SIP)
約587口座
(2022年3月)
約5549万口座
(2022年6月)
インドの中間層の人口
2020年 2030年(予測)
約7.1億人 約10.5億人
高齢化率
日本 インド
約28%(2018年) 約7%(2018年)

まとめに代えて

日本のお金が心配、日本の年金制度が心配と言っているのに、日本の投資非課税制度(NISAやつみたてNISA)に頼ろうというのは、笑い話のようにも思えてなりません。だったら、まず、国民が納めた年金保険料を、つみたてNISA「お墨付き」商品に投資するべきなのでないでしょうか? とにかく「非課税」と聞いて、飛びつくのは……。

インドは「人口ボーナスの国」とも言われており、今後、長きに渡って成長が見込まれる国の一つと考えても差し支えないと思われます。長期積み立て投資を行うのでしたら、投資先は、このように選ぶべきではないでしょうか?

タイトルに挙げた某国(ちなみにアニメ上の国ですが)の国葬の追悼演説を模して、まとめてみたいと思います。

「国民よ! 投資先をNISAからSIPに代えて! 考えよ国民!」

そういえば、我が国でも国葬の予定がありましたっけ? 追悼演説はともかく、被葬者の行った政策の検証はキチンと行うべきでしょうね。

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