現役証券アナリストの佐々木達也さんが、株式市場で注目度が高い銘柄の強みや業績、将来性を解説する本連載。第36回は、「地方創生」をキーワードに事業を拡大するバルニバービ(3418)を取り上げます。

  • 東証グロース市場上場のバルニバービは、飲食店の企画・運営を手がける
  • 地方自治体などと協力し、「食」をベースとした地方エリアの活性化を推進
  • 今期は4期ぶりの黒字転換見込み。SBIHDとの資本業務提携効果に期待

バルニバービ(3418)はどんな会社?

バルニバービは飲食店の企画・運営を手がけており、東証グロース市場に上場しています。

同社は1995年に創業者の佐藤裕久会長によって設立されました。パリのカフェ文化に影響を受けた佐藤氏は、当時は人通りのほとんどなかった大阪・南船場に1号店となる「アマーク・ド・パラディ」を開業しました。南船場は材木問屋のまちとして栄えてきましたが、1998年には倉庫跡を改装した「カフェ ガーブ」をオープンし、街のブランドイメージを変え、ランドマークとして脚光を浴びました。

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同社はその後もバッドロケーション戦略と呼ぶ、一般的に飲食店舗を運営するには最適とは言えない立地に出店しています。店舗家賃等が低水準であるメリットを活かしつつ、水辺や公園などの周辺環境を利活用し、他の飲食店舗との競合を避けながら店舗網を拡大し、2023年1月末現在で92店舗を経営しています。

バルニバービの各プロジェクトの事例はこちら

バルニバービ(3418)の強みは?

同社は「地方創生」をキーワードに事業を拡大しています。そのひとつがエステートビルドアップ事業です。バルニバービはビジョンとして「食から始まる日本創再生」を掲げています。地方自治体などと協力し、集客力のあるレストランや宿泊施設を出店し、「食」をベースとした地方エリアの活性化を進めています。

同事業の1号プロジェクトは兵庫県淡路島の「Frogs FARM」プロジェクトで、2019年から進めています。2020年には人材派遣大手のパソナグループが本社機能の一部移転を発表し、社員の移住を進めたこともあり、相乗効果で地域経済は活性化しています。

また、レストラン事業ではSBIホールディングス、島根銀行と提携して、島根県出雲市で今年4月のレストラン、宿泊施設の開業を目指しています。

飲食店舗の運営では、テナントビルの一角を賃借する形態が一般的ですが、同社は早くから土地購入から内装デザインなどを自前で手がけています。こうした経験により、エリアを見抜く力、人材育成、仕入れ先の開発など飲食やその周辺ビジネスに必要なノウハウを活かして、事業の拡大を続けています。

また、有休施設などのリノベーションも推進しています。淡路島のプロジェクトでは廃校となった小学校をコワーキングスペース、カフェレストラン、こども図書館、ロボットプログラミング教室などの地域コミュニティの場として再生し、運営しています。

バルニバービ(3418)の業績や株価は?

バルニバービの今期2023年7月期は売上高が前期比15%増の114億円、営業利益は2億6800万円の4期ぶりの黒字転換(前期は4億円の赤字)を見込んでいます。コロナ禍からの経済回復による業績の急回復が期待されます。

エステートビルドアップ事業では、淡路島、出雲市での新規出店を予定しているほか、レストラン事業では原材料や水道光熱費の上昇も業績見通しに織り込んでいます。

2月10日の終値は991円で投資単位は100株単位となり最低投資金額は約10万円です。

バルニバービ(3418)の株価(2022年1月~、月足)
バルニバービ(3418)の株価チャート

株価は2022年9月に1091円の高値を一瞬つけたのちすぐに戻り売りに押されましたが、その後は少しずつ下値を切り上げています。高値をつけた2022年9月には、地銀連携を進めるSBIホールディングスと資本業務提携し、出資を受け入れると発表したことが注目されました。

エステートビルドアップ事業などの地方創生の取り組みは全国の自治体から注目されており、地銀や地方企業とパイプの太いSBIホールディングスとの資本業務提携は、今後バルニバービの事業拡大に大きなプラス効果が期待され、株価も見直しの余地がありそうです。

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