米国の政策金利が高止まりしていることにより、米ドル建ての「MMF」も比較的好利回りで推移しています。外貨建てMMFは、為替変動リスクはありますが、外貨ベースでは価格変動リスクを抑えた運用が期待できる金融商品です。
この記事では、外貨建てMMFの仕組みやメリット・デメリットと、外貨預金との違いについて説明しています。インカム収入(分配金・利子など)重視で、値上がりや値下がり(価格変動)を抑えた運用を検討している方は、ご一読ください。

  • 外貨建てMMFのメリットは流動性の高さ、現地通貨での価格変動リスクの低さなど
  • 外貨建てMMFのデメリットは為替差損のリスクと、NISAを利用できないこと
  • 「資産の保護」と「税金」の面で外貨建てMMFと外貨預金は扱いが異なる

外貨建てMMFとは

外貨建てMMF(マネー・マーケット・ファンド)は、主に海外の優良企業が発行するCP(コマーシャルペーバー)や格付けの高い公社債を投資対象にした投資信託です。

CPは、企業が短期資金の調達のために発行する割引形式の約束手形のことです。

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外貨建てMMFは、主に格付けの高い債券やCPなどの短期(1年未満)の金融商品で運用するので、外貨ベースでは価格変動リスクを抑えた運用が期待できる金融商品です。
また、分配金は毎日計算され、月末にまとめて再投資(税引後)するので、複利の効果を生かした運用ができます。

2024年5月時点では、米ドル建てMMFの年率換算利回りは4.6~4.8%程度、南アフリカランド建てMMFは7.1%程度となっています。

外貨建てMMFのメリット

外貨建てMMFのメリットとしては、以下の3つが挙げられます。

  • 流動性の高さ
  • 少額から投資が可能
  • 価格変動リスクが低い(外貨ベースで)

1つめの「流動性の高さ」とは、換金までの期間のことです。外貨建てMMFは、通常、購入日の翌営業日から換金することができます。

2つ目の「少額から投資が可能」については、金融機関にもよりますが、1,000円程度からの投資をすることができます。

3つ目の「価格変動リスクが低い」点については、外貨建てMMFの投資対象がCPや格付けの高い公社債になるため、株式に比べて価格変動リスクを抑えた運用が期待できます。

外貨建てMMFのデメリット

外貨建てMMFのデメリットとしては、以下の3つが挙げられます。

  • 元本保証ではない
  • 為替差損のリスクがある
  • NISA制度が利用できない

1つ目の「元本保証ではない」とは、外貨建てMMFはCPや公社債で運用する投資信託なので、発行体(CPや債券の発行元)の財務状況や金利の動向により、元本を割り込む可能性を指します。

2つ目の「為替差損のリスクがある」は、購入時点の為替レートと換金時の為替レートの違いにより発生するリスクです。
例えば、1ドル150円の時に購入し、1ドル140円で換金しますと、1ドルあたり10円の損失が発生します。逆に、1ドル160円の時に換金すると1ドルあたり10円の利益が得られます(為替手数料等考慮せず)。

3つ目は、外貨建てMMFが「株式投資信託」ではなく「公社債投資信託」になるため、新NISAの投資対象商品ではない点です。

次に外貨預金について説明します。

外貨預金とは

外貨預金は、日本円を米ドルやユーロなど外貨に換えて預ける預金です。預金方法は「定期預金」「普通預金」があります。また、銀行によっては「通知預金」を扱っているところもあります。

外貨預金は、円預金と同様に元本保証がされています。ただし、外貨ベースです。

定期預金の預入期間は、1カ月、3カ月、6カ月、1年などから選択することができ、中途換金は原則できません。

また、金利は普通預金と定期預金でかなり幅があります。流動性より収益性を重視するのであれば、「定期預金」を選択肢するほうがいいでしょう。
一例として、2024年5月2日現在の三井住友銀行の外貨預金(米ドル)では普通預金の金利が0.1%に対して、定期預金1カ月が1.0%、3ヵ月3.7%、6ヵ月5.0%、1年4.5%になっていました。

金利は、金融機関によりばらつきがありますので、事前に比較するようにしましょう。

外貨建てMMFと外貨定期預金の違いについて

ここでは、外貨建てMMFと外貨定期預金の主な違いについて下表にまとめています。

外貨建てMMF 外貨定期預金
元本保証 元本保証なし 外貨ベース元本保証あり
資産の保護 分別管理 預金保険の対象外
換金性 購入日の翌営業日から換金可 原則、中途換金不可
保有中のコスト 監理報酬等がかかる なし
主なリスク 為替変動リスク
信用リスク
価格変動リスク
為替変動リスク
信用リスク
税金 分配金:源泉徴収
為替差益:申告分離課税
利子:源泉徴収
為替差益:雑所得(総合課税)

表内の項目で注意いただきたい点は、「資産の保護」と「税金」の部分です。

資産の保護については、外貨建てMMFは投資家ごとに分別管理されるので、利用した金融機関が破綻した場合でも、時価ベースで外貨建てMMFは保護されます。外貨定期預金は、預金保険の対象外になるため預けた銀行が破綻した場合には保護されません。

税金面では、為替差益の部分で外貨建てMMFは「申告分離課税」、外貨定期預金は雑所得(総合課税)になり、原則、確定申告が必要になります。
損益通算については、外貨建てMMFの為替差損益は、株式や投資信託などの損益と通算ができます。外貨定期預金は、雑所得の中で相殺することができます。

まとめ

今回は、外貨ベースで価格変動リスクが低く、流動性(換金の自由度)が高い外貨建てMMFについて説明しました。為替変動リスクはありますが、安定した海外への投資を考えている人は、投資対象の1つとして検討してみてはいかがでしょうか。

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