現役証券アナリストの佐々木達也さんが、株式市場で注目度が高い銘柄の強みや業績、将来性を解説する本連載。第85回は、祖業のエレクトロニクスやAV機器だけでなく金融やエンターテインメントなども手がけ、最近はアニメや音楽、ゲーム事業が好調で業績拡大中のソニーグループ(6758)を、2021年に引き続きご紹介します。

  • ソニーグループの強みは映画やゲーム、音楽などIPを活用した事業展開
  • ゲーム&ネットワークサービス事業や音楽事業の好調で業績見通しを上方修正
  • 業績拡大を受けて株価は上昇基調に。PERは20倍程度で割安感も

ソニーグループ(6758)はどんな会社?

ソニーグループは、かつてのウォークマンなどエレクトロニクスを軸とした電機メーカーから映画、ゲームなどのコンテンツを軸としたグローバル企業に生まれ変わっています。
21年にも一度ご紹介しましたが、当時よりさらに収益力も強まり、事業ポートフォリオも変わりつつあるので再度ご紹介したいと思います。

多角化戦略で成長する「ソニーグループ」

同社は「クリエイティビティとテクノロジーの力で、世界を感動で満たす」をスローガンに、M&Aや構造改革を進めながら競争力を高めています。
成長事業領域として、ゲーム&ネットワークサービス、音楽、半導体(イメージング&センシングソリューション)の3つを定義しています。その他にも映画、AV機器やデジタルカメラ、ソニー生命などの金融分野の、大きく6つの事業セグメントに分かれています。

IPの価値を最大化できる事業ポートフォリオが強み

ソニーの強みはIP(知的財産)を活用した事業展開です。IPとは人の精神的な創造行動から生まれた創作物や、営業上の信用を表した標識など、経済的な価値を有したモノの総称です。

最近ではエンターテインメント業界やライセンスビジネス、キャラクターの商品化などで注目度が高まっています。ソニーグループの映画やゲーム、音楽などのエンターテインメント事業の売上高の比率は、2012年度の約30%から近年60%に成長しています。

プレイステーション5
ソニーグループのゲーム事業はユーザー1人当たり売上高が上昇中
Skrypnykov Dmytro / Shutterstock.com

今後についても例えば音楽事業では「鬼滅の刃」、「Creepy Nuts」、「YOASOBI」など日本のアニメやアーティストのグローバル展開を進め、IPを多面的に発信・展開できる事業展開に取り組みます。
21年には米国の動画配信サービスの「クランチロール」を買収しました。有料会員数は24年7月時点で1500万人を突破しており、日本のコンテンツのファン獲得や市場拡大に寄与しています。

ソニーグループ(6758)の業績や株価は?

ソニーグループの今期2025年3月期決算は売上高が前期比1%増の13兆208億円、営業利益が10%増の1兆3350億円を見込んでいます。
2月13日の24年4~12月期決算と同時に、今期の業績見通しを上方修正しました。ゲーム&ネットワークサービス事業や音楽事業の好調が背景となりました。

トラリピインタビュー

プレイステーション(PS)全体の月間アクティブユーザー数は24年12月時点で過去最高となる1億2900万アカウントとなり、総プレイ時間も2%増と伸びました。有料ネットワークサービスのPSプラスでは上位サービスへのシフトや値上げにより、ユーザー1人あたりの売上高の上昇が続いています。音楽事業では、ストリーミング配信からの売り上げが着実に増えています。

2月21日の終値は3813円で投資単位は100株単位となり、最低投資金額は約38万円、予想配当利回りは0.52%です。株主優待は、ソニーストアなどでAV商品やパソコンの「VAIO」を購入する際に利用できる割引クーポンを進呈しています。

【図表】ソニーグループの株価(2021年7月2日~2025年2月21日、週足)
ソニーグループの株価(2021年7月2日~2025年2月21日、週足)

株価は中長期での上昇基調に回帰しています。24年は2000円台後半でのボックス相場が続いていましたが、足元の業績拡大を受け、上っ放れの値動きとなり22年の高値3145円を抜ける強い動きとなりました。
26年度までの現行の中期経営計画では、ゲーム分野では自社スタジオによる利益率の高いファーストパーティ・ソフトウェアのタイトル充実や、PSだけでなくパソコン向けなどにも展開を進め、事業の拡大を目指しています。音楽分野ではラテンアメリカ、アフリカ、インドなど新興国市場への取り組みも強化します。

足元の予想株価収益率(PER)は20倍程度と、成長期待や業績の堅調さからすると未だ割安な水準にあるといえます。トランプ米大統領の関税政策などの影響が少ないIPコンテンツ関連株としても、さらに評価の余地があると思われます。