資産運用に興味があっても、初心者にとって株式投資のハードルは高いもの。本連載では、現役の証券アナリストが株式投資の魅力や付き合い方をやさしく伝えます。
- 2020年の日経平均株価は年初2万3204円、年末2万7444円。年間4000円弱の上昇
- 2020年前半はアフターコロナ銘柄が強く、後半は製造業や景気敏感株も堅調に推移
- 空運、陸運、小売、芸能・イベント関連は低迷が続き、好不調の二極化が鮮明に
NYダウ、ナスダックは史上最高値を更新
2020年の日本株相場は波乱の展開となりました。日経平均株価は、年初2万3204円で取引を開始しました。相場の波乱要因となったのは、言うまでもなく新型コロナウイルスです。
当初、新型コロナは中国で感染が進んでいましたが、2月に大型クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」号で集団感染が明らかになり、危機感が高まりました。その後、小中学校や高校などの休校が決定し、日本株の相場に対しても売りが優勢となりました。3月に入ってもコロナを警戒した売りが続き、3月19日に2020年の安値1万6552円を付けました。このあたりから売られすぎと見た投資家によって買い優勢に転じました。
さらに株式相場の大きな下支えとなったのは、世界各国の中央銀行による金融緩和でした。日本銀行やFRB(米連邦準備制度理事会)、ECB(欧州中央銀行)をはじめとする各国の中央銀行が景気悪化を防ぐための資金供給の強化を行いました。加えて、各国政府による給付金や減税などの大掛かりな財政政策の効果もあり、世界的な株安の流れは底打ちとなりました。
その後、中国ではいちはやく新型コロナの感染が落ち着きを見せ、政府当局による景気刺激策も奏功して景気回復に向かいました。自動車、半導体などの製造業の回復が株式相場を支え、右肩上がりの展開が続きました。
米国や欧州など多くの国・地域では現在も感染拡大が続いていますが、ワクチンの開発期待もあり、米国の株価指数であるNYダウ工業株30種平均やナスダック総合株価指数などは史上最高値を更新するなど期待感や金融緩和による投資マネーによる買いが続きました。この結果、2020年末の日経平均株価は2万7444円となり、年間では4000円弱、18%の上昇となりました。
2020年前半は巣ごもり消費やオンライン関連が強かった
個別銘柄に対する物色もコロナ前とコロナ後で大きく変わりました。年前半に強さを見せたのは、巣ごもり消費やオンライン関連などのアフターコロナ銘柄でした。
医療従事者向け情報サイトで製薬会社の情報提供を支援するエムスリーや、オンライン医療関連とされるメドレー、オンライン会議システムのブイキューブなどさまざまなアフターコロナ銘柄が買われました。
巣ごもり消費の広がりで買いだめ需要のあったディスカウントストアの神戸物産やドラッグストア関連株も物色されました。非接触へのニーズでネットショッピング(EC)も好調で物流にも好影響を及ぼし、ヤマトホールディングス(ヤマト運輸などを傘下に持つヤマトグループの持株会社)やSGホールディングス(佐川急便グループの純粋持株会社)などの業績を下支えしました。
2020年後半は製造業や景気敏感株も堅調に
年後半には、ワクチン開発への期待や米中などの景気回復が追い風となり、年前半に苦戦の続いた製造業などの株価上昇が目立つようになりました。
トヨタ自動車などの自動車メーカーは、コロナによる生産停止が続いた影響による在庫の減少、非接触のニーズによる自動車の見直しで買われたほか、鉄鋼や海運、造船などの景気敏感株が株価の割安感もあり、堅調となりました。
また、半導体やクラウド、電子部品などのテクノロジー関連株は年間を通じて強さを見せました。半導体製造装置メーカーの東京エレクトロンとSCREENホールディングス、半導体の材料となるシリコンウエハーを手掛ける信越化学工業やSUMCOなどの強さも際立ちました。
投資テーマとして、次世代高速通信の5Gや電気自動車(EV)に関連する銘柄も買われました。年末にかけては菅政権による脱炭素宣言や米国で再生エネルギーシフトを打ち出したバイデン新政権の誕生期待で環境関連株も物色されました。
空運、陸運、小売、芸能・イベント関連は低迷したまま
一方、新型コロナウイルスによる感染拡大は続いており、株価が低迷したままの業種もあります。日本航空(JAL)やANAホールディングスなどの空運株、東日本旅客鉄道(JR東日本)や東海旅客鉄道(JR東海)、私鉄各社などの陸運株、百貨店や居酒屋などの小売株、芸能・イベント関連は株価の戻りが鈍く、物色の二極化の鮮明な状況となっています。
これらの株が再び買われるには新型コロナワクチンなどによる経済活動の正常化が欠かせず、今後の焦点となりそうです。