本連載では、税理士に寄せられた相談者からの質問をもとに、主に「おひとりさま」の相続に関するさまざまな疑問に答えていきます。第18回は、将来ご自身が亡くなるときに備えて、生前の手続きを一括でできないかというおひとりさまの質問に対して、現時点での解決策をお伝えします。

おひとりさまの「終活」、やるべきことは多い

Q.
この連載を読んで自分でも調べてみましたが、おひとりさまが誰にも迷惑をかけず、手間も世話もなるべく少なくして死ぬというのは大変な準備が必要だとわかりました。
法律のことは弁護士、死後事務委託は行政書士やその専門業者、葬儀のことは葬儀社、遺品の片づけ、電話やカードの契約解除はそれぞれの業者と契約をしなければならないし、認知症になった時、歩けなくなった時など、リスクを考えれば何を備えても足りないような気がして不安です。全部まとめて面倒を見てくれるところはありませんか?

A.
葬儀、遺品整理、死後事務委託などを一括で依頼できる便利なサービスがあります。
具体的な選択肢として、信託銀行のおひとりさま向けの商品や、老後のおひとりさま問題に取り組む法人のサービスが挙げられます。

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確かに、死後の手続きだけでなく病気、認知症などいろいろな可能性を考えると、いくら用意してもご心配になるお気持ちはわかります。やらなければいけないことが多すぎて気が滅入り、結局すべて手付かずのまま。なんていう状況も目に浮かびます。
特に現役世代から老後のそういった手配をするまとまった時間はとれませんよね。

しかし、そんな方にも便利なサービスがあります。

1. 信託銀行を利用する

例えば三井住友信託銀行では文字通り「おひとりさま信託」という商品があり、葬儀の用意から死後事務委託、遺品整理、残ったペットのお世話まで一括で契約することができます。

おひとりさま信託(三井住友信託銀行)

① 現在まとまった現金預金がある場合 → 金銭信託タイプ

最低預入額300万円から始められる信託契約により、契約者の相続時の各種手続きをサポートしてもらえます。顧客が自ら望む相続時、その後の理想をエンディングノートに記載し、その記録に基づき信託金額の中から死後事務委託費用を差し引いて残金を精算します。

エンディングノートについては生前何回でも書き換え可能です。その他、SNSによる生前の安否確認のサービスもあり、メールの頻度は週1回から年1回まで選べるようになっています。

② まとまった現預金がない場合 → 生命保険タイプ

300万円という資金を一括で信託する余裕がない方には、生命保険を活用して比較的少ない資金で死後の事務委託などの手続きを委託契約できる商品もあります。

金銭信託タイプと違う点は、生命保険に加入する際の年齢制限や健康状態の審査があり加入できないこともある点と、金銭信託の場合は元本保証ですが、為替相場などの影響により利回りの変動もあり、生命保険の場合には元本は保証されない点です。

信託銀行で相談
相続の相談といえば信託銀行。「おひとりさまの老後」に特化した商品やサービスに力を入れる信託銀行は今後も増えそう

2. 老後のおひとりさま問題を一括してサービスする法人と契約する

信託銀行のサービスは死ぬまでの心配事には対応していませんが、最近はおひとりさまに限らず、誰にも迷惑をかけずに老後の生活を送りたいという方や、亡くなった後もできるだけ自分の理想をかなえたいというお考えの方が増えています。そんな方のために、下記のような生前から死後まで医療、介護、身元保証人、法律、葬儀、お墓、整理などの諸問題をワンストップで叶えることをサポートしてくれる法人が現れました。
公式心託(一般社団法人終活協議会 想いコーポレーショングループ)

行政書士事務所のサービスとして生前の生活サポート、痴呆になった場合の任意成年後見契約を行っている事務所も昨今見かけられるようになりました。
また、消費者庁においても老後の身元保証や日常生活支援、死後事務委託についてサポートする窓口があり、それぞれに対応する業者の案内をしています。

「身元保証」や「お亡くなりになられた後」を支援するサービスの契約をお考えのみなさまへ(消費者庁)PDF

親族がいてもその手を煩わせたくないとお考えの方が増えると思われる今後は、このような老後、死後にまつわる高齢者のサービス事業の幅が広がることは間違いありません。

自分の生活状況と合うサポートサービスを探してみてください。安心を得られることと思います。

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