資産形成の近道は小型株にあり──。「小型株集中投資」を実践する気鋭の投資家・遠藤洋さんに、今からでも始められる小型株投資の極意を教えていただく連載。第20回も前回に引き続き、2020年2月に株価が暴落した「コロナショック」を振り返りながら、コロナ後に注目したい業界について考えます。
- コロナ直後はマスクを生産する会社や物流などが上昇。スノーピークの上昇も目立つ
- 物流業もコロナで伸びた業種のひとつ。日本郵船の株価は今も高値圏
- 今後はインバウンド銘柄に期待。政府の対応を確認してから投資しても遅くない
あらためて振り返る、コロナ禍で大きく動いた銘柄
前回は新型コロナウイルスの影響で株価が大きく下がったときに、「VIX指数」を一種の保険として使ったお話をしました。2020年2月に株価は大きく下がり始めたのですが、実際にはすべての業界が低迷したわけではなく、中にはコロナを追い風にした業界や銘柄もありました。
飲食や旅行のような「人の動き」に依存する業界がコロナで苦しんだ中で、非常にわかりやすく上がった銘柄のひとつが川本産業(3604)でした。マスクなどの医療用品や衛生材料を作る会社で、コロナが流行し始めた2020年1月には医療用のマスクが足りなかったこともあって、1カ月足らずで株価が7倍以上に上がりました。
「上がる株を見つけるには世の中の動きを見る」というのは以前から言い続けていたことで、「マスク不足」という世の中の動きをうまくとらえれば川本産業の株で利益を手にできたのかもしれませんが、僕はマスクの品薄はすぐに解消されるだろうと思って、投資しませんでした。実際に2月には株価が下がり始めて、マスクが普通にお店に並び始める頃には株価は落ち着いてしまいました。
コロナで上がった銘柄は「巣ごもり需要」と呼ばれるデリバリーサービスや、Netflixのような動画配信サービスのほか、以前にも紹介した医療情報サイトを運営するメドピア(6095)がありました。未知の感染症が広まったために、最新の医療情報が集まるサービスへの期待が高まったという要因もあったのかもしれないですね。
こちらの記事ではスノーピーク(7816)についても触れました。実は2021年にスノーピークの株価が上がり始めた頃は、「キャンプの需要は一時的なもの」だと思ってあまり深く考えなかったのですが、株価が大きく上がったあとで調べてみたら、ただのキャンプ用品メーカーではない、高い経営センスを持った会社だと知りました。グッズだけでなくキャンプの「体験」を売ることで、コロナの中でも成長を遂げました。スノーピークには注目はしていたのですが、分析が不十分で、すぐに実力を見抜けなかったのは反省点です。
今後注目したい業界は「物流」「インバウンド」
コロナで伸びた業界のひとつに物流も挙げられます。巣ごもり需要で通販が増えれば運送会社や倉庫が伸びるのは想像できるところですが、意外なところで日本郵船(9101)が、コロナ後の底値から一時は10倍を超える株価を付けました。特筆すべきは、コロナが収束しつつある今も高い株価を維持しているところです。
今はウクライナ情勢の影響もありますし、物流の運賃の上昇はもうしばらく続きそうな気配なので、物流業界は注目してもいいと思っています。
コロナが収束すれば、人の動きも戻ります。そうすると、今まで低迷していたJALやANAの復活もありえますが、僕はコロナ前の水準に戻ることは考えにくいと思っています。オンライン会議が普及したことで、ビジネスのための長距離移動は今後も控える流れになると思います。
一方で、同じ長距離移動でも旅行は大きく伸びると考えています。特に、海外から日本に来るインバウンドに可能性を感じます。ただ、海外旅行の大きな壁になっているのが、今となっては世界一厳しいとも思える入国制限です。政府が制限を緩和しなければ何も始まりません。国の方針が固まってから、インバウンドの恩恵で利益を増やしそうな銘柄に投資しても、タイミングとしては遅くないと思います。
今はアメリカの株価が大きく下がって、日本株も全体的に下がっています。実力以上に割安な状態で放置されている銘柄も増えていると思われます。仮にこの先、日本でも利上げという話になれば、さらなる株安もありえます。もし投資の時間軸を長く取れるのであれば、日本の金融政策がどうなるか、しばらく様子を見たあとで投資先を決めてもいいかもしれませんね。