本連載は、日興アセットマネジメントの研修機関「日興AMファンドアカデミー」による、銀行や証券会社などで働く投資信託の販売担当者に向けたセミナー講義の内容を採録したものです。
〈記事提供:日興アセットマネジメント

産業は投資家が選び、銘柄選択は運用会社に任せる

もうひとつは「成長産業しばり」。さっきの「丸ごと」の逆で、自分で「長期ならなおさら、成長しない産業は避けたいし、成長する産業の企業に投資したい」という考え方です。ちょっと上級編ですね。だって成長する産業とか衰退する産業について考えなければならないんですから。

今日しつこく言っている「覚悟」と同じなんですが、この「これは長期投資に値する成長産業だな」と決めるのはお客様自身である必要があります。もちろん、金融機関の担当者にいろいろ教えてもらってもいいんですが、最後は自分で決めなくてはなりません。まぁ「丸ごと買い=全産業でいいや」という決断だってお客様自身ですべき、という意味では一緒ですけどね。

さて、その「しばり」をする産業を決めた後は、その中でどの企業に投資するかしないかは、当社のような運用会社の判断に委ねるタイプが一般的です。例えばここ数年、インターネット、AI、ロボット技術など、情報技術や先端技術関連の企業の成長が著しいですよね。お客様自身が「例えば鉄鋼から造船から銀行にも投資する『丸ごと買い』ではなく、この分野は成長するだろうから、『株式の柱』にはこの分野しばりで行こうじゃないか」と決めたとしたら、その中でどの企業の株式をいくらで買っていくらで売るか、あるいは他の銘柄に入れ替えるかなどについては、その投信のファンドマネージャーに任せるということです。

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たとえばロボット産業のように、投資先を成長産業に絞るという方法

成長するまで保有を続けられるかどうか

「成長産業しばり」のメリットは、自分の納得感が高くなり愛着が持てること。これ、意外と大事です。しばろうとしばるまいと、株式市場全体が下落する時って、乱暴に言えばどの株式も下がってしまいます。その時「成長産業しばり」の投信を持っている方は強いんですよね。例えば「トランプの発言で全部下がってはいるけど、この産業は成長するんだから関係ないさ」という風に、ストレスに耐えられる場合が多いようです。

その産業の将来に惚れている方ほど、多少の値動きのストレスにめげずに保有を続け、結果的に成功しているというケースをよく見ます。そして当然ながら、成長産業にしばっている分、その産業が首尾よく成長する場合、リターンは「丸ごと」よりも相応に大きくなることが考えられます。

デメリットは当然ながら、その産業がうまく行かないこと。しばっているだけに被害は甚大です。ただ、産業がうまく行くか行かないかって、そう短期で結論の出るものではないんですよね。株式投資の視点だと、どうしても短期目線になりがちですが、当然ながらそこで戦っている企業は投資家の比ではないくらい真剣にビジネスを行なっているはずですし、その結果だってすぐに出ないことも多いわけじゃないですか。このビジネスと株式投資の時間軸の違いは常に思い出すべき大事なポイントです。私達はつい性急にリターンを求めてしまいますが、企業が成長するのには元々長い時間がかかるんですから。

「成長産業しばり」のメリット=愛着心が可能にする
長期保有と、それによる大きなリターン期待
デメリット=「ハズレ」となること

第23回 定期的な収益が期待できる「インカムの器」
第21回 株式ファンドの「丸ごと買い」って?

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