「IFA」と呼ばれる人たちがいます。金融機関とは独立した立場のアドバイザーとして、顧客の資産運用のサポートを行うのが仕事です。今回お話をうかがったファイナンシャルスタンダードの福田猛さんと鈴木頼長さんも、IFAとして活躍しています。お二人に普段の仕事や、資産運用のアドバイスについて聞きました。

iDeCoとつみたてNISAの影響で投資初心者の相談が増えた

―IFAの人たちは、普段どんなお仕事をしているのでしょうか。

福田猛さん1
福田猛さん
ファイナンシャルスタンダード 代表取締役

福田 IFAとは「インディペンデント・ファイナンシャル・アドバイザー」の略で、特定の金融機関に所属しない立場で、金融商品の仲介を行っています。具体的には、お客さまから資産運用の相談を受けて、それに基づいた運用プランをつくり、実行の支援をします。口座開設の手続きや、運用商品の購入、その後のフォローまで私たちがサポートします。お客さまが証券会社に払う手数料の一部が、私たちの収入になります。

重要なのはプランニングです。特に30代から40代の現役世代は、結婚、子育て、教育費、住宅など、お金の出入りが多いので特にそうです。しかもまだ資産が築かれていないので、いざというときに備えるリスク管理も必要です。だから運用でお金を増やすだけでなく、保険の活用も考えなければいけません。そうした複雑な事情を踏まえたうえで、適切な金融商品を案内するのが私たちの役割です。

お客さまとの関係は長期にわたります。資産運用を続ける中で、お客さま自身の環境が変わるかもしれないし、世の中の環境も変わるかもしれない。定期的にお客さまと相談しながら、資産運用をフォローするのも大切な仕事です。

―どのようなお客さまが多いのでしょうか。

福田 年代では50代から60代が多いですね。その次が40代。あとは30代、70代の方も来られます。相談に来られるのは投資経験がある方が多いのですが、ここ1~2年は経験のない方が増えています。

これは税制優遇制度の影響が大きいと思います。2017年にiDeCo(個人型確定拠出年金)の制度が拡大され、つみたてNISAが2018年に始まり、せっかくの優遇税制だから利用したいけれど、どうしたらいいかわからないという方が増えているようです。

投資経験がある方でも、資産運用について理解している方は少ないですね。なんとなく株や投資信託をやったことはあるけれど、目的がはっきりしていなくて、「運用」になっていないケースがほとんどです。

投機と投資、資産運用はフォーカスする対象が異なる

福田猛さん2

―相談に来られたお客さまには、まずどういうお話から始めるのでしょうか。

福田 最初は資産運用を定義づけするところから入ります。投資と投機、そして資産運用、これらを分けて考えることが大切です。

投機とはタイミングにお金を投じることです。株価のチャートを見て、今は買いだ、売りだといって短期的に売買するのが投機です。すぐに儲かるかもしれませんが、すぐに損するかもしれません。こうしたマーケットベースの考え方は、好きな人にとってはおもしろいものですが、資産運用とは違います。

投資は、企業の株主になって長期的に企業の株式を保有して、利益成長や配当の積み増しに期待することです。アマゾンのような企業の株を10年以上持っていたらかなり儲かりますが、株を買った先の会社の業績が悪くなれば、株価が下がって含み損を抱えることになります。個別銘柄への投資は企業にフォーカスすることで、これもリスクが大きく、資産運用に向いているとはいえません。

マーケットや企業ではなく、自分自身にフォーカスするのが資産運用です。今、手元にどれくらいの資金があるかを把握したうえで、将来入ってくるお金、出ていくお金をシミュレーションし、そのお金をどうやって管理していくのか、これが資産運用の考え方です。ただお金を増やすだけではなくて、将来的に自分の家族がどうなるか、資産がどうなるかをシミュレーションしたうえで、最適な資産の配置を考えることが大切です。そのためには株式や債券などの証券だけでなく、保険のことも、不動産のことも知らなければいけません。相続の知識も必要です。

ですから資産運用は難しいし、決しておもしろいものではありません。言ってみれば仕事のようなものです。日中は会社などで働いている方が、資産運用という別の「仕事」をやるのはたいへんだと思います。

自分で解決するのが難しいから、専門家に相談する

福田 ところで、専門的なことって普通は人に任せますよね。ほとんどの人は何か法的なトラブルに巻き込まれたとき、自分で法律を勉強するのはめんどくさいから、弁護士に相談します。病気になったら、自分で治そうとせずに病院へ行きます。自分で解決するのが難しい問題は、お金を払ってでも専門家に相談しに行くものです。

もし直面する問題が自分にとって楽しいことならば、人に任せず、自分で勉強して自力で解決を目指せばいいと思います。投機や投資もそうです。そもそも生活のための必須事項ではないので、やるのもやらないのも自由です。一方、資産運用はほとんどの人にとって、生きるために必要なことです。でも、難しいしおもしろくないから、自分ひとりでやるのは気が進まない。そんなときに、専門的なアドバイザーとして頼っていただけることが、私たちが提供している付加価値だと考えています。


病気にかかったとき、自分で医学を勉強して自力で病気を治すのは現実的ではなく、医師に相談するのが普通。資産運用においても、同じことがいえるのかもしれない

―確かに、弁護士や医師に頼るのと同じ感覚で、お金のことはお金の専門家に頼ればいいというのは理にかなっている気がしました。

福田 私たちアドバイザーの専門性は、資産運用のプランニングだけではありません。「ビヘイビアルコーチング」と呼ばれる、行動のコーチングを行うことも重要な役割です。

投資家は、時として非合理的な行動を取るものです。本来、マーケットの短期的な動向は資産運用には一切関係ありません。大切なのはお客さま自身にとってのゴールであり、ゴールに向けた長期的なプランニングです。そのことが頭ではわかっていても、たとえば米中貿易問題が起きて株価が急落したら、10年先、20年先のプランが急に見えなくなって、これ以上株価が下がると困るから1回売っておこうという、長い目で見れば誤った判断を下してしまうことがあります。そんなときに、状況をていねいに説明してお客さまの目線を遠くに戻し、資産運用の継続を勧めることもアドバイザーの重要な仕事です。

ダイエットのパーソナルトレーナーになぜ付加価値があるのか。どうすればやせられるか、理屈は誰でも知っているのに、それをひとりで行動に移すのは難しいものです。だから専門家にコーチングをお願いするのです。資産運用も同じで、自分ひとりで実行し、継続することが難しいから、お金を払ってでもアドバイザーを雇うニーズが生まれるわけです。

日本株への偏りを避け、分散投資を心がける

―日本はアメリカと違って、資産運用や投資に前向きでない方が多いのが現実です。日本とアメリカはどういった違いがあるのでしょうか。

福田 いちばん大きな違いは、成功体験があるかないかだと思います。米国の場合、成功を意図してそのとおり成功した体験というより、無意識に成功した体験を持つ人が多いのです。

多くの米国人は、「401k」と呼ばれる個人年金の税制優遇制度に基づいて、給料の一部が天引きされて、そのお金で積立投資を行っています。投資対象は米国株や世界株のファンドです。本人も知らないところで積立投資をこつこつと続けて、たまに明細書を見てみると、いつの間にか資産がものすごく増えている。たくさんの米国人がそういう経験をしているから、資産運用などしない方がいいだなんて誰も言いません。

日本が米国のようになるには長い時間がかかるでしょうね。私たちは「桃栗三年柿八年、積立投資は丸10年」なんて言ったりもしますが、10年の間に上げ相場や下げ相場を経験しながらも淡々と積立投資を続けて、気づいたらお金がこんなに増えていた、という体験が必要だと思います。

―実際に運用商品を選ぶときに、気をつけるべきことは何でしょうか。


鈴木頼長さん
ファイナンシャルスタンダード
ポートフォリオマネージャー

鈴木 お客さまに多いのが、投資対象の大部分を日本株で保有しているケースです。ホームバイアスと呼ぶのですが、これは合理的とはいえません。

日本株が世界全体の株式市場の時価総額に占める割合は10%以下にすぎません。だから運用資産に占める日本株の割合も10%程度で十分なのですが、日本人にとって身近だから、株価が上がっているからといって、日本株に多く投資してしまう。これでは長期的に見ると、大きな利益を逃すことになりかねません。

実際に、日経平均株価は1989年末に3万9000円まで上がったのが、いまだに2万円台前半のまま。米国株は同じ期間で10倍近くに値上がりしています。もちろん今後も日本株が低迷し、米国株が上がるとは限らないのですが、投資対象を日本株に集中させることが合理的でないことはわかるかと思います。ホームバイアスを避け、投資対象を米国や欧州など世界に分散させることが大切です。

自己投資でキャリアアップを図ることも大切

―これから資産運用を始めようという方に、アドバイスをお願いします。

鈴木 資産運用に関する本を読むことをおすすめします。やはり知識がある方は、ない方と比べると圧倒的に有利です。たとえば積立投資をする場合でも、積立の仕組みや投資対象のことをよく知っていれば、自分が投資しているものに対して信頼が生まれ、たとえマーケットがどんな動きをしても、自信を持って運用を続けられます。

以前に米国の資産運用業界を視察したとき、米国の個人投資家は「自分がやっていることが正しいかどうか」という不安を抱えている人が多いと聞きました。疑問点を解消するには、我々のようなアドバイザーに相談するのもいいのですが、若い方にとっては、費用の負担を考えるとあまり現実的ではありません。本を何冊か読むだけで、資産運用に関するひととおりの知識は得られるはずです。

福田 資産運用という視点からは少し外れるかもしれませんが、特に若い方は資産を増やす手段として、金融商品への投資だけでなく、「自己投資」も考えてみるといいかと思います。

今の職場で今の仕事を続ければ、生涯年収はどれくらいになるのか。もしこういうスキルを身に付ければどうなるか……。これも資産を増やすために重要な考え方だと思います。特に20代のうちは、仕事をいっしょうけんめいがんばってスキルを身に付けたり、いろいろな人と会って世界を広げたりすることが、生涯年収を増やすことにつながると思います。

お金について勉強して、若いうちから積立投資を始める一方で、仕事の方ではキャリアアップにつながる自己投資に力を入れる。その両方ができると理想的ですね。


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