短時間で調理できる手軽さが国民的人気の理由
レトルト食品がこれほどの国民的な人気を博し、日常生活に溶け込んでいった理由は、レトルトならではの特徴がいくつか備わっているためです。
(1)安全で簡便な食品であること。レトルトパウチ(食材が入っている袋)は化粧箱に入っていることが多く、そのまま店頭に飾ることができ、保存料を使用せずとも日もちがして衛生的であること。
(2)食材は真空下で調理されているため、ビタミンなどの栄養成分の消失が少なくて済むこと。
(3)長期間の保存(1年から2年)が可能。常温で流通させることができ、運搬のコストを抑えられる。
(4)短時間で調理して食卓に並べることができる。(電子レンジまたは湯加熱で3~5分くらい)。軽量なので携帯用として持ち運びができ、開封も容易であるため、非常用の保存食にも適している。
消費者アンケートを採ると、レトルト食品を食べるシーンとしては、「料理をするのがめんどうな時」が最も多く、次いで「ひとりで食事をする時」、「すぐに食べたいとき」、「調理する時間がないとき」などがそのあとに続きます。レトルト食品はその手軽さが消費者に受けていることになるようです。
購入場所も、以前のようにスーパーの売り場だけでなく、コンビニエンスストア、ドラッグストア、ホームセンターなどにどんどん広がっています。種類も年々増えて、専門店のシェフが作ったようなホットな食事を、自宅で手軽に食べることができます。それがここまでレトルト食品が広がった理由とも考えられます。
日本のレトルト食品のおいしさ、性能のよさがコロナ抑制に貢献?
新型コロナウイルスの猛威はまだ完全には収まっていません。感染第2波のおそれもありますが、感染者数、死亡者数を合わせても、日本は世界の中でも被害がかなり少なく済んでいます。医療関係者の方々をはじめ関係各方面の懸命の努力の賜物と思われますが、ストレスのたまる外出自粛政策がうまく行っている理由のひとつに、ひょっとしたら自宅待機に耐えうる日本のレトルト食品のおいしさ、性能のよさがあるのかもしれません。
インド発祥のカレーは、日本で独自の進化を遂げてカレーライスという国民食になりました。同じように欧米で生まれたレトルト食品が、カレーと結びついて日本独自の製品として日常生活に当たり前のように溶け込んでいます。あまりに身近にありすぎて気が付きにくいのですが、日本独自の発展形という点でレトルト食品のほかにも私たちの周囲に目を凝らしてみたいものです。
レトルトカレーのハウス食品G本社(2810)、丸大食品(2288)、味の素(2802)、レトルトパウチ用素材のクレハ(4023)、旭化成(3407)、昭和電工(4004)に注目しています。
旭化成(3407)月足、2008年~