宮崎県延岡市で保険業や資産運用のアドバイスに携わる小田初光さんが、地方で暮らす生活者のリアルな視点で、お金に関するさまざまな疑問に答えます。今回は、50代男性・公務員のiDeCoのポートフォリオ(資産配分)について考えていきます。

  • 50代のiDeCoは、増やすことより減らさないことと節税効果を重視
  • 運用期間7年、掛金が月1.2万円では運用利回りによる差は出にくい
  • 50代サラリーマンは、公務員よりさらに堅実なポートフォリオで運用

iDeCoでは税制優遇の効果を重視

【質問】
私も50を超える年になり、子どもも全員巣立っていきました。さあ、これからは自分の人生。楽しみながら家内と生きていこうと思っています。これからの人生をもっと楽しめるよう、iDeCoで資産を増やせればと考えています。iDeCoの心構えと、できれば運用を楽しむ秘訣など教えてくれませんか?

前回に引き続き、iDeCo(個人型確定拠出年金)の心構えと商品の組み合わせについての質問にお答えしていきます。

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今回は社会人歴30年目の53歳ということで、私の年代でもあり、現在のところ最長でも60歳までしかiDeCoで積立をすることができない年代でもあります。
50代の方は、「長くても10年間の掛金で結果を出さなければいけない」というプレッシャーを感じるかもしれません。逆に言うと、50歳で老後などの生活プランなどを考えるのは遅すぎるかもしれません。

iDeCoは長く積み立てるほどメリットが大きいことを、前回までの20・30代編、40代編で話してきました。
50歳からiDeCoを始めた場合の積立期間は最高10年間で、掛金1.2万円、年1.5%の複利運用とすると、144万円の掛金に対して約11万円増える計算になります。それが20歳だと最高で40年間iDeCoを使えることになり、同じ掛金と運用利回りの場合、576万円の掛金で213万円も増えることになります。これが長く積み立てる効果です。
それでも、何もしないよりは、50代からでもiDeCoなどを始めた方がいいのは間違いありません。

20代・30代のiDeCoは株式の比率を高くする

40代は人生の分岐点。iDeCoの資産配分は?

50代の絶対条件は、積み立てた資産を減らさないこと。iDeCoの目的は、将来の生活の足しにする年金であることを忘れてはいけません。
増やしたいのはやまやまですが、必要以上にリスクを負う必要はありません。昨年からの新型コロナウイルスによる経済のダメージを考えると、この先もいつ、どこでお金がとっさに必要な事態が起きるか、誰にも予測できないのです。
「人生100年」と言われる時代、50歳は折り返し地点。お金のことでギスギスしたくはありません。楽しまなければ、今まで生き抜いてきたかいもありませんから。

世界と日本の景気を考えると、今の段階では、短期のポートフォリオはリスク増大の可能性が高いかな?と言わざるをえません。今の生活資金が十分に準備ができていなければ堅実なポートフォリオで挑み、お金に余裕があるのであれば、資産配分のメンテナンスをする条件付きで、利益を狙ったポートフォリオで挑むのもいいでしょう。

どちらかと言えば、iDeCoで税制優遇(掛金全額の所得控除・運用益の非課税・年金受取時の各種控除)を受けながら、自身の趣味や旅行などを楽しむためにNISAを活用するのがいいのかもしれません。
現状では、経済と金利の状況を見ながら、「堅実案」と「チャレンジ案」の2つのポートフォリオを作って提示して、iDeCoでの運用が終わる61歳以降のことも考えながら、リスク許容範囲を決めていくこととします。

走る人
50代は人生の「折り返し」。まだまだ先は長い

iDeCoでは税制優遇の効果を重視

あらためて、今回の相談者について詳しく見ていきましょう。
市の職員として勤めている男性の公務員さんで、年齢53歳、配偶者あり、年収約600万円の方になります。預金は約700万円、住宅ローン残高1000万円ということでした。

私でしたら、毎月iDeCoに1.2万円(公務員の掛金の上限)と、余裕資金を使ってNISAで投資信託などを買い、残りを普通積立預金にします。60歳までiDeCoで積立し、何かあったら途中下車(売却)もできるNISA、そして簡単に下車できる普通積立預金をそれぞれ使い分けるイメージです。

今回提示するiDeCoのポートフォリオはこちらです。

①堅実ポートフォリオ(運用期待値=年1.5%)
元本確保型商品40%、国内株式商品15%、外国株式商品10%、バランス型商品(債券多く含む)35%

②チャレンジポートフォリオ(運用期待値=年4%)
元本確保型商品10%、国内株式商品40%、外国株式商品30%、バランス型商品(債券多く含む)20%

①堅実ポートフォリオは、リスクを小さくしながらも一定の利回りを目指し、資産全体の大きな価格変動を避ける短中期的な運用となります。相談者は現在53歳なので、上限の1.2万円を毎月積み立てると、7年で元本は約100万円となります。運用期待値1.5%の場合、節税効果も合わせると、7年後には約126万円になる計算です。

次に、比較的お金に余裕がある方のための②チャレンジポートフォリオ。7年後には節税分と合わせて約136万円になる計算です。
こちらはリスクの大きい株式の比率が高めなので、大きな価格の変動は避けられません。本来は長期運用のためのポートフォリオになりますので、大きな値下がりを防ぐために、定期的なメンテナンスが必須条件になります。

ここで①と②を見比べてみてください。②は大きなリスクを負ったにもかかわらず、7年後の運用結果の差は10万円くらいしかありません。驚きです。
リスクを考えると、通常は①堅実ポートフォリオで十分かと思います。積立期間が短い方は、iDeCoでは積極的に増やすというより、節税効果を利用する感覚が良いかもしれません。

ところで、今回の相談者は公務員なので、定年時にもらえる退職金をある程度確実なものとして計算でき、老後資金を設計しやすい職種といえます。一方、民間企業のサラリーマンは、退職金をあてにしすぎるわけにはいきません。公務員よりさらに堅実なポートフォリオを勧めたいと思います。

50代のサラリーマンの方は、iDeCoの株式比率を合計10~20%にして運用期待値が1%前後になるように、安定を目指して大きな価格変動を避けるポートフォリオで挑んでいき、所得控除で節税しましょう。

(次回は3月19日を予定しています)

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