テレビ、ラジオ、動画配信も含めて様々なコンテンツの台本や脚本を執筆する放送作家&脚本家が700人以上所属する日本放送作家協会がお送りする豪華リレーエッセイ。ヒット番組を担当する売れっ子作家から放送業界の裏を知り尽くす重鎮作家、目覚ましい活躍をみせる若手作家まで顔ぶれも多彩。この受難の時代に力強く生き抜く放送作家&脚本家たちのユニークかつリアルな処世術はきっと皆様の参考になるはず! 
連載第16回は、放送作家の堀江利幸さん。

日本放送作家協会リレーエッセイ一覧はこちらから

『ゴチになります』と『マネーの虎』、企画の構造は一緒

堀江利幸さんの写真堀江利幸
放送作家、日本放送作家協会会員

2000年、日本テレビの深夜枠の企画募集で提出し、編成・土屋敏男氏(当時)が通してくれたのが『マネーの虎』。企画のヒントになったのはある漫画の1シーン。独立を考える若い中華料理人に、中国の華僑の成功者たちが集まり、その腕前を見て投資するか否かを決めるというもの。ボクはこのくだりが大好きで、“志願者がビジネスプランと希望額を掲げて、それを5人の社長が投資をジャッジする”番組を思いついた。

そんなTV史上初“現金投資バラエティ”は深夜で話題を呼び、ゴールデンに進出。そして英国BBCをはじめ海外35カ国以上でフォーマット販売に成功。米国ABCが莫大な製作費をかけた『シャークタンク』(米国では社長のことをサメと呼ぶ)はバラエティ最高の栄誉、エミー賞を4年連続受賞。次々と快挙を成し遂げ、いつしかボクは“企画の虎”と呼ばれるようになったのである(嘘です)。

そんな自慢話はさておき、この『マネーの虎』、実は『ゴチになります』と構造は一緒で「設定金額に向かってプレーヤーが出来るか出来ないか」にテンションをかけた見せ物。企画を考える上で、視聴者を引き付ける要素の一つはこのシンプルな構造だと気づいた。

荒野をさまよう虎
堀江氏が企画した『マネーの虎』はTV史上初の“現金投資バラエティ”として話題を呼び、英国BBCをはじめ海外35カ国以上でフォーマット販売されるまでに

ボクが子供の頃大好きだったのが『目方でドン』という番組。巨大な天秤の片側に自分の奥さんを座らせ、その体重○キロ分の家電をいくつか運んできて、天秤のもう片方に載せ、釣りあったらその家電が全部もらえる……という、まさに“設定されたバーに向かって挑む”教科書のような番組。明かしてしまえば、それを“高級料理の値段予想”にしたのがゴチなのです。

放送作家が考えた企画にも著作権を

中学3年の時に『ビートたけしのオールナイトニッポン』で高田文夫さんの存在を知り、放送作家という職業に憧れを抱いた。そして青島幸男さんの自伝的小説『蒼天に翔る』を何度も読み、痛快なサクセスストーリーだけどどこか可笑しくて哀しい職業、放送作家に強く惹かれた。

MonJa読者アンケート

『マネーの虎』が海外フォーマットで売れたことで「さぞかしお金が入ってきたでしょ?」とよく聞かれるが、そこに著作権や対価はなく、“テレビ局が考えた企画”として扱われているのがなんとも寂しく、やはり放送作家というのは哀しい職業

あ、決してお金が欲しいわけではありません。企画した者が“企画者”として認められる健全なルールがあったらいいのに……と望んでいるだけです。アイデアというのは曖昧な世界なので明確な線引きは難しいですが、近い将来ルールが作られることを日本放送作家協会をはじめ、各関係各所に期待したいです。

放送作家になって約30年、最近「何のためにこの仕事を続けているのか」よく考えるが、シンプルに「人に企画を褒められたい」だけかもしれない。もっともっと褒められて、チヤホヤされたい。もし生まれ変われるのであれば、放送作家もいいけどジャスティン・ビーバーみたいなチヤホヤ人生がいいな。

次回は小説家の花輪如一さんへ、バトンタッチ!

是非見て、読んでください!

4月からスタートした新番組『オトラクション』(TBS系火曜夜7時)と、
オオカミ少年』(TBS系金曜夜7時)をよろしくお願いします!

『蒼天に翔る』の表紙
青島幸男さんの自伝的小説『蒼天に翔る』。高校時代から読み込んでてボロボロだけど今でも仕事でくじけそうな時にこれを読んで初心に帰る
青島幸男氏のサイン画像
『ゴチになります』のゲストで青島幸男さんにご出演いただいた時に直接この本にサインをして頂きました。宝物
一般社団法人 日本放送作家協会
放送作家の地位向上を目指し、昭和34年(1959)に創立された文化団体。初代会長は久保田万太郎、初代理事長は内村直也。毎年NHKと共催で新人コンクール「創作テレビドラマ大賞」「創作ラジオドラマ大賞」で未来を担う若手を発掘。作家養成スクール「市川森一・藤本義一記念 東京作家大学」、宮崎県美郷町主催の「西の正倉院 みさと文学賞」、国際会議「アジアドラマカンファレンス」、脚本の保存「日本脚本アーカイズ」などさまざまな事業の運営を担う。