宮崎県延岡市で保険業や資産運用のアドバイスに携わる小田初光さんが、地方で暮らす生活者のリアルな視点で、お金に関するさまざまな疑問に答えます。今回は、つみたてNISAを始めたい投資初心者に対して、どんな投資信託を選ぶといいかをアドバイスします。
- つみたてNISAは投資初心者に向いているが、対象商品が多く選ぶのが難しい
- 数種類の商品を組み合わせるのは難しいので、最初は「バランス型」を1本選ぶ
- 自身のライフプランをもとに、バランス型商品の株式比率を決める
投資初心者に使いやすいつみたてNISA
【質問】
まったく投資経験のない素人の自分が「つみたてNISA」を始める際には、どのような商品を購入したら儲かりますか? 性格的には気が短い方かと思いますが、やめたほうがいいのでしょうか?
今回は「つみたてNISA」の運用商品選びと、商品の組み合わせ(ポートフォリオ)を軸に考えていきます。
前回も説明したように、資産運用のための「積み立て」の大本命とも言えるのが「つみたてNISA」です。まずは現時点で購入できる、金融庁が指定した金融商品(投資信託)について、おさらいをしておきましょう。
つみたてNISAの商品は指定インデックス投資信託(パッシブ型)168本、指定インデックス投資信託以外の投資信託(アクティブ型)19本、ETF(上場株式投資信託)7本に限られています(2021年6月18日現在)。さらにその中には、国内・海外の債券、リート(不動産投資信託)を含む複数の資産を組み合わせたバランス型の投資信託もあります。
株価指数に連動しないアクティブ型の商品が19本と少ないのは、プロのファンドマネージャーが銘柄を選ぶ運用なので、実績や販売手数料の差が商品によって大きく、実績が良いものだけ厳選されていることが理由です。
つみたてNISAでは「長期、積立、分散投資」に適した商品を対象にしています。具体的な基準が、①信託期間が20年以上~無制限、②分配金は基本毎月ではない、③販売手数料は無料、④信託報酬は割安という、長期運用に持って来いの商品なので、今回の質問者のような投資初心者にも好都合なのです。
とは言え、つみたてNISAの対象商品だけでも194本もあるわけですから、初めて投資をする人にはハードルが高く、難しいと思います(金融機関によって取り扱い商品が異なり、実際に買える商品はもっと少ないのですが)。
投資初心者の相談者が、投資信託などの運用商品でポートフォリオを組む時、よく言われるのは、「年代ごとのライフプランや目的に沿った商品の組み合わせで」ということです。しかしながら、まったくのド素人である場合、自分だけでそこまでの知識や考えを持ちながら運用を進めていくことには無理があります。
「年代ごとのライフプランや目的」とは、たとえば
- 20、30歳代
①老後のお金を準備したい
②子供の教育資金やマイホーム購入資金を準備したい
③キャリアアップのためにお金を貯めたい
④投資の元手がほしい - 40、50歳代
⑤楽しめる老後生活を送りたい
など、さまざまでしょう。
しかし、年代によらず「お金を増やしたい」という思いに変わりはありません。
ここでは、一歩踏み込んだ初心者向けポートフォリオの組み方について考えていきます。
つみたてNISAの最初の一歩は「バランス型」
さて、相談者の質問の最後に、自身の「性格」について「気が短い方」と言及しています。
確かに、投資において性格は1つの行動には関係するかもしれません。
短期の株式投資や投資用不動産の購入などは「決断力」が重要で、この決断力があるかないかが、後の結果に影響が出ることもあります。
ただし、「つみたてNISA」に限定して言うと、性格はあまり影響がないと見ています。
むしろ、比較的多い「面倒くさがり屋さん」などはつみたてNISAにはうってつけで、積立投資で大切な「ほったらかし運用」ができやすいのかな?と思っています。ちなみに私の投資は「短期」です(笑)。
つみたてNISAのポートフォリオを組むのに、金融商品のバランスを重視するために数種類の商品での構成を勧める考えもありますが、それはあくまでも投資中級者以上が主であり、初心者には当てはまらないと思います。最初の一歩は“お試し感覚”で、1商品で充分ではないでしょうか。その商品は、ずばり「バランス型」に絞られるでしょう。
バランス型といってもインデックス投資信託で83本、アクティブ型投資信託で9本あり、その中には国内のみの株式や債券、リートに特化した商品もあります。これだけ多いと選別に苦労するかもしれませんが、国内だけでなく、米国など海外も含んだ資産に投資している商品を選ぶのをお勧めします。地域を分散することにより、リスク低減(値動きと成長性(グロース)が期待できます。
投資手法としては割安(バリュー)な資産を重視する方法もあります。ただし、割安な資産への投資は、日本の成長が続いていけばいいのですが、今回のコロナ禍のような未曾有の事態になると、少子高齢化が進む日本では、他国と比較して価格の戻りが遅い傾向は否定できません。米国などの経済成長はまだまだこれからだと思いますので、米国の資産はぜひ組み入れていきましょう。
ライフプランをもとに株式比率を決める
バランス型は商品によって、株式、債券などの資産配分が違います。その配分は、たとえば以下のように、今の自身の環境(上記のライフプラン)に当てはめるのが基本です。
【図表】ライフプランとバランス型商品の株式比率の例
20、30歳代 | ①老後のお金を準備したい | 株式比率80%~ |
②子供の教育資金やマイホーム購入資金を準備したい | 株式比率60%~ | |
③キャリアアップのためにお金を貯めたい | ||
④投資の元手がほしい | ||
40、50歳代 | ⑤楽しめる老後生活を送りたい | 株式比率40%~ |
同じバランス型商品でも、株式比率が高ければ値動きは大きくなり、高いリターンも期待できる反面、リスクも高くなります。とはいえ、バランス型ならばどの商品も株式だけでなく数種類の資産に投資しているので、リスクはある程度抑えることができます。
どうです? 少しずつ商品が絞り込まれてきたのではないでしょうか。
「つみたてNISA」の原点が長期運用であることを頭に入れて、自身の年齢も加味しながら、つみたてNISAのポートフォリオを決めていきましょう。
私が1商品で運用するならば、バランス型商品の中から米国株式が含まれているもので株式の比率を決めて、アクティブ型でチャレンジすることになるでしょう。