ユミルリンクへ転職。苦境の中、自ら手を上げ経営の刷新に乗り出す

確かに1999年から2000年代の初頭には、IT系企業がインターネットという新しい世界、新しい地平から、一気に社会を変えていく湧き上がってくる活気があったと思います。ただ、一方で古いもの、これまでのやり方を守ろうとする力も働いていたと思いますし、混沌もあったと思います。結局、ユミルリンクに移られ、そして社長として組織を率いていく過程を教えてください。

清水 東京でも同じようにメール配信系の会社にお世話になりました。i-modeが大きな話題をさらい、ますますインターネットやメールが人々の生活を変えようとしていました。私は引き続きメールを使った新しいマーケティングの可能性について、そのニーズを持つ一流企業を中心にシステム開発の営業をかけていたのですが、新しく金融系の会社からその会社に入ってきた取締役が「飛び込みによるローラー営業」を指示してきたのです。私は困惑しました。その営業スタイルはこのサービスに相応しい営業ではないと感じたからです。

その頃は、群雄割拠といいますか、多くの、現在では名前を馳せているIT企業が生まれ、それぞれが新しい魅力的な企業に出資をし、相互に刺激しあうような日々でしたので、そうした交流の中で人脈も生まれていました。ありがたいことに、困惑し、悩む私に、やはりメール配信系のサービスも手掛けていたユミルリンクを紹介してくれた人がいたのです。ユミルリンク、素敵な社名でした。2002年でしたね。

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そこで私は引き続きメール配信にかかるシステム開発の営業担当になりました。そこからメッセージソリューション事業全体を統括する立場になっていきました。

ユミルリンクのサービス
メール配信など、メッセージソリューション事業を得意とするユミルリンク

転機が来たのは2008年でした。
その頃のユミルリンクは、親会社や株主に恵まれていたこともあったのですが、新しいアイディアや新しい商材への情熱が勝っていて戦線が拡大していました。また戦線の拡大に組織が追いついておらず、掲げた中期経営計画の数字をなかなか達成できない状態でした。どうしても皺寄せが個々のメンバーに寄せられ、開発のトップが退職するなど人材の流出も多く、難しい局面に陥っていました。

親会社や株主から経営の刷新が議論される中、私は私自身が手を挙げて火中の栗を拾うことを選択しました。メッセージソリューション事業が事業の柱になっていましたし、なによりこのままでは顧客に対する約束を果たしていくことができなくなる、と考えたのです。

その後、様々な事情から親会社も変わりました。私はずっと社長をということではなく、時限的にまず今の苦境を乗り切るまで、と考えていたのですが、引き続き社長を任せていただき、現在に至っています。

業績は非常に順調に伸びていらっしゃいます。この事業において大切にされていることは何でしょうか。

清水 メール配信については、大規模かつ高速なメール配信をリーズナブルな価格で提供する、ということです。また、あくまでそれはコミュニケーションのツール、マーケティングのツールですので、顧客サイドに立って、使いやすい、分かりやすいということもとても大切な要素だと考えています。
そのような要素については、積み重ねた技術もありますし、自信を持っています。

また、時代はソフトウェアの販売という時代から、クラウドでサービスそのものをリーズナブルに提供する、という時代に大きく変わっています。メールはもちろん大切な媒体ですが、それだけではなくSMSですとか、新しい媒体の活用も課題となっています。マーケティングですから、アンケートなどにも活用できるサービス、そうしたものも必要です。その企業の本業にいかに貢献するか、ですね。また、自治体に対して大きな地震などがあった際、人と人を繋ぐためのツールとしても活用できる。

メッセージング・プラットフォームとしてのCuenoteが人々を、B to BでもB to Cでも繋いでいく、繋いでいける、インターネットの可能性をもっともっと追求したいと考えています。

判断に悩む中で、先人の言葉が力になる

夢はまだまだ広がるというわけですね。最後に、好きな映画ですとか、好きな言葉を、お聞きしたいのですが。

清水 好きな映画については、高校生の頃に観たジャック・ニコルソンの『カッコーの巣の上で』という映画が好きです。この映画は、毎年決まった時期にとか、そんなものではないですが、時折、何年かくらいのサイクルでは観ている映画ですね。一冊の繰り返し再読する本のような感覚です。

言葉については、社長という立場に立って、日々学ぶということの大切さを感じて経営者のための交流会・勉強会のようなものにも、参加させて戴いているのですが、その勉強会では西郷隆盛も愛読していたことで有名な江戸時代の儒者、佐藤一斎の『言志四録』などの言葉に触れています。

言葉というのは、やはりとても力になるものだと感じていますね。日々、判断に悩む中で、腹にしまった言葉があるかどうか、それはとても大事だと思います。

滋賀県に生まれたのですが、滋賀には近江聖人と呼ばれた中江藤樹という儒者がいます。彼に「くやむなよありし昔は是非もなしひたすらただせ当下一念」という言葉があるのですが、この言葉も好きな言葉ですね。
過去のことを悔やんでもしかたない、ただ、ひたすらこの一瞬、今をしっかり自分の心を正すことが大事なんだ、という言葉ですね。
今を大切に生きる、サッカーでもそうでしたが、誰も追わないようなボールに最後まで食らいつく泥臭いサッカーが身上でしたので、やはりそれは素直に腹に落ちている言葉ですね。

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