「株式や債券、REIT以外の資産に投資をしてみたい」という方にぜひ検討してほしいものが、金やプラチナ、原油に代表される天然資源への投資です。資源価格に連動する投資信託やETFなどを資産に取り入れることで、資産運用のリスクが分散できます。資源に投資する際に知っておきたい基礎知識をまとめました。
- 資源価格は工業製品の需給だけでなく、資源国の生産調整や政治情勢で変動する
- 投資信託やETFで資源に投資できる。ETFではプラチナや銀などにも投資が可能
- コロナ禍で原油先物価格が一時マイナスに。資源は急激な価格変動もありうる
必ずしも株価と連動しない資源価格
個人投資家の多くは株式を中心に投資をしていると思われますが、天然資源は価格変動が株式と連動しないことがあるため、株式投資のリスクヘッジとしての活用が可能です。
個人投資家の投資対象としてメジャーな資源といえば、金やプラチナなどの貴金属と原油でしょう。特に金は投資の対象として最古ともいえる長い歴史があり、美しさ、希少性、保存や加工のしやすさという点で、他の金属より優れています。
金は「有事の金」ともいわれ、経済の混乱やインフレに強い資産として投資家から大きな信頼を寄せられる対象です。世界中どこでも換金できて、かつお金とほぼ同じ価値がある点は、金だけが持つ特性といっても過言ではありません。
これに対して、プラチナや原油の価格は工業製品の需給と密接に関わり合っています。工業製品と関わりが深いということは、基本的には株価と連動しやすい性質を持つということです。
しかしその一方で、資源国の生産調整や政治情勢も価格変動の要因となります。結果として、金だけでなくプラチナも原油も必ずしも株式市場の動きとは連動しないことから、株式との分散投資の対象として有効といえるでしょう。
投資信託やETFで資源に投資できる
「資源に投資する」といっても、いまいちピンとこない人も多いかもしれません。実際は現物の金塊やプラチナを購入するわけではなく、資源価格に連動した投資信託やETFを購入することが現実的な方法です。
天然資源を投資対象とする投資信託やETFは多数設定されているため、個人投資家でも気軽に投資を始められます。ここでは主要な商品をいくつか紹介しましょう。
資源を投資対象とする投資信託
金に投資するなら『ピクテ・ゴールド(為替ヘッジあり)』『三菱UFJ 純金ファンド』といった投資信託が便利です。2020年にはコロナ禍で市場への不安が高まり、金人気が高まったことで、現時点において金関連ファンドの運用成績も好調といえます。
この他にも、貴金属や原油など幅広い天然資源に分散投資するタイプの投資信託もあります。分散投資タイプの投資信託で代表的なものには『お金のデザイン・グローバル・リアルアセット・ファンド(世界の実物資産中心)』『eMAXISプラス コモディティインデックス』などが挙げられます。特定の資源に偏らないようにしたい方は、分散投資タイプを選ぶとよいでしょう。
ファンド名 | 運用会社 | 投資対象 | 純資産総額 | 信託報酬 |
---|---|---|---|---|
ピクテ・ゴールド (為替ヘッジあり) |
ピクテ投信投資顧問 | 金 | 727億円 | 0.539% |
三菱UFJ 純金ファンド | 三菱UFJ国際投信 | 金 | 625億円 | 0.55% |
お金のデザイン・グローバル・ リアルアセット・ファンド (世界の実物資産中心) |
お金のデザイン | 貴金属、エネルギー、 農業関連銘柄、 REITほか |
264億円 | 1.65% |
eMAXISプラス コモディティインデックス |
三菱UFJ国際投信 | エネルギー、金属、 農産物ほか |
58億円 | 0.44% |
信託報酬は年率、税込み。データは2021年10月19日時点
資源を投資対象とするETF
投資対象としてイメージしやすい金や原油のほかに、プラチナ、銀、パラジウムなども投資しやすい天然資源として挙げられます。金以外の貴金属のみを投資対象にした投資信託はありませんが、ETFであれば、これらの資源に直接的な投資が可能です。
日本取引所グループのウェブサイトから一覧を確認できるので、興味がある人はチェックしてみてください。
急激な価格変動に注意
普遍的な価値を持つといわれる金やプラチナは、一般的に株式の個別銘柄と比べれば値動きがそれほど激しくありません。しかし原油は産油国の政治情勢や需要に価格が左右されやすく、急騰や急落も決して珍しいことではありません。コロナ禍で一時的に原油先物価格がマイナスになったことを覚えている人もいるのではないでしょうか。
天然資源の価格は必ずしも株価と連動して動かないうえに、資源には独自の値動きのロジックがあります。資源国の政治情勢など、さまざまな理由で短期的な値下がりが発生する可能性があることを認識しておく必要があるでしょう。
資源の値動きの性質を理解してポートフォリオに取り入れれば、有事に強い資産をつくることが可能になります。株式や債券だけの運用から、ステップアップに挑戦してはいかがでしょうか。