現役証券アナリストの佐々木達也さんが、株式市場で注目度が高い銘柄の強みや業績、将来性を解説する本連載。第9回は、プラチナグループメタル(PGM)と呼ばれる工業用に不可欠な貴金属を手掛けるフルヤ金属(7826)を取り上げます。
- プラチナグループメタル(PGM)と呼ばれる工業用に不可欠な貴金属を手掛ける
- 希少性が高く、加工や回収が困難なイリジウムとルテニウムの製造・加工に強み
- データセンター、5Gなど最先端のデジタル技術を縁の下で支える隠れた優良企業
フルヤ金属はどんな会社?
フルヤ金属はプラチナグループメタル(PGM)と呼ばれる工業用に不可欠な貴金属を手掛けるメーカーです。
PGMとは白金族元素に属するプラチナやイリジウム、ルテニウム、パラジウムなどの希少価値があり腐食に強い金属を指しており、HDDやスマホ、半導体、有機EL、自動車の排ガスの浄化媒体など産業のあらゆる分野で使われています。電子・薄膜・センサー・ケミカルの4つの分野で最先端の技術を支える事業を展開しており、経済産業省が選出する「グローバルニッチトップ企業100選」にも選出されました。
フルヤ金属は1951年に古屋商店として設立され、その後1968年に株式会社フルヤ金属となり、長きにわたって工業用の貴金属メーカーとして事業を続けています。PGMはそのほとんどが南アフリカの鉱山で産出されることから、現地の大手の鉱山から安定した量や質での調達ルートを確保しています。同時に調達リスクを緩和するためにリサイクル設備の自動化などを進め原材料の安定確保に向けた取り組みを進めています。
フルヤ金属の強みは?
フルヤ金属はPGMの中でもより希少性が高く加工や回収が困難なイリジウムとルテニウムの製造・加工に強みを持っています。
イリジウムはプラチナの製錬時に副産物として得られる非常に希少な金属です。酸やアルカリとほとんど反応せず耐熱性も非常に高いことから物質としても安定しており、人工のサファイアなどの硬い物質の単結晶を精製するためのルツボの原料として使われています。イリジウムルツボを使用して作られるタンタル酸リチウムはスマートフォンのノイズを取り除く電波フィルターなどに用いられています。足元で高速通信規格の5Gスマートフォンの普及が加速しており、同社のルツボの需要が非常に伸びています。
もう一つの強みであるルテニウムも同様にプラチナの副産物として生成されます。ルテニウムは主にハードディスクドライブの表面に塗布する基礎材料として用いられています。その他次世代のデータ記憶用のメモリー向けとしての利用も期待されており、量産に向けた設備投資を加速しています。
フルヤ金属はこれらの希少なイリジウムとルテニウムの製造・加工だけでなく、使用済みの製品を加工して再度精製し、新たな製品の原料として使用するリサイクル技術にも優れており独自のビジネスモデルを確立しています。鉱山で産出されたイリジウムのパウダーを溶解・加工し製品化する技術とリサイクル技術の両方を持っているのは世界でも2〜3社に限られており、国内で唯一のメーカーとなります。
フルヤ金属の業績や株価は?
フルヤ金属の2022年6月期は、売上高が前期比25%増の423億円、営業利益が13%増の118億円と増収増益を見込んでいます。世界的なデータセンター投資の広がりでサーバー用のハードディスク向けのルテニウム材料の需要が拡大しているほか、5Gスマホの需要増や医療用途向けでイリジウムのルツボの拡販が見込まれます。またセンサー部門では半導体製造装置向けに温度センサーの受注が非常に好調です。
12月10日の終値は10700円で投資単位は100株単位となり、最低投資金額は約101万円です。日本株の上値が重い中でも8月以降は上昇トレンドが崩れていません。データセンター、5Gなど最先端のデジタル技術の広がりを縁の下で支える隠れた優良企業として投資家からも注目が集まりつつあり一段高の展開を見込んでいます。