2021年12月の米国連邦公開市場委員会(FOMC)で、米国債と住宅ローン担保証券(MBS)の月間購入額の減額を従来の150億ドルから300億ドルに拡大することが決定されました。テーパリング(金融緩和の縮小)の加速により、2022年後半には米国で利上げが開始されるとの予想が出てきています。それに伴い、金融相場から業績相場へ変化していくと市場関係者の間では考えられ始めています。今回は、金融相場と業績相場の概要と2つの相場の違いについてみてきます。また、年初ということで、カーボンニュートラルへの取り組みの今後について予想してみました。(この記事は、2021年12月29日に執筆しました)
- 米国がテーパリングを加速し、証券市場は金融相場から業績相場へ
- 金融相場から業績相場への移行時は、ファンドの投資対象により注目
- 欧州では風力発電量が不足。カーボンニュートラルの政策修正が迫られる
証券市場にも潤沢に資金が流入する「金融相場」
中央銀行による利下げや量的金融緩和政策などにより世の中に出回るお金の量が増え、証券市場にも潤沢に資金が流入している状態のことを金融相場と呼びます。
金融相場の時は、世の中の金利も通常よりも低いため資金調達が容易になり、現在利益を出していない企業でも今後成長が期待できる企業であれば、買いが集まり、株価が上昇しやすい状況が発生する特徴があります。
また、景気が上向き経済が正常化に向かう状態になると中央銀行がテーパリングや利上げを行いインフレの抑制やバブルの発生を防ぐような政策を打っていきます。それにより世の中に出回るお金の量が減っていき、金融相場から業績相場へと徐々に移行していきます。
利益増加が見込める企業へ資金シフトが起こる「業績相場」
業績相場では、中央銀行のテーパリングや利上げにより金融相場に比べ投資資金の調達コストが上がります。投資家はそれをカバーするために高い利益率を求め、足元の利益と今後も継続的に利益を伸ばしていける企業かどうかを慎重に判断して投資先を決めていくようになります。その時点で、成長性への期待で買われていた企業から今後も着実に利益増加が見込める企業へ資金シフトが起こり、成長への期待で買われていた企業の株価は調整されることが考えられます。
その後、景気悪化が懸念される状況になると中央銀行により利下げや量的金融緩和が実施され、逆に業績相場から金融相場へ移行していきます。このように景気の動向に伴う中央銀行の金融政策の変更などに影響され金融相場から業績相場へ、業績相場から金融相場へと循環していきます。
金融相場から業績相場へ移行するとどうなる?
インデックスファンドへの影響
金融相場から業績相場へ移行した場合のインデックスファンドへの影響は、どの指数に連動した運用を目指しているかにより影響の度合いが異なります。
今は赤字でも今後の成長が期待できる企業(金融相場で注目される企業)が多く採用されているインデックスファンドと、今後も継続的に利益を伸ばせる企業(業績相場で注目される企業)の採用が多いインデックスファンドでは、前者の方が基準価額の調整が大きくなる可能性が高いと考えられます。
アクティブファンドへの影響
アクティブファンドは、成長が期待できる分野へ集中して投資するテーマ型ファンド、個々の企業の業績を分析して複数の分野に分散投資をするファンド、配当に注目して投資先を選択するファンドなど、それぞれの運用方針は様々です。
その中でも、金融相場から業績相場へと相場環境が変化した時は、安定的な利益成長を背景とする配当に着目したファンドが堅調に推移する可能性が高いと思われます。
カーボンニュートラルへの取り組みがより現実的にものに
最後に、カーボンニュートラルへの取り組みがより現実的なものになる点についてみていきます。カーボンニュートラルは、風力や太陽光など再生可能エネルギーに移行すれば上手くいくと考えられていました。しかし昨年、欧州で思っていたより風が吹かず、風力発電では消費電力を賄いきれない状況が発生したことで、LNG火力での発電を増やす事態になりました。
気候変動が問題になっている中、再生可能エネルギーを作るのに必要な風や太陽光などの自然環境だけ今後も変化しないということは考えづらく、今後はより現実的な方向でカーボンニュートラルの政策修正が各国で行われていくことでしょう。
それ伴い、昨年まで成長分野と考えられていた企業への投資見直しが起こるかもしれません。年始めに「頭の体操」を兼ねて今後の相場環境について考えてみてはいかがでしょうか。