宮崎県延岡市で保険業や資産運用のアドバイスに携わる小田初光さんが、地方で暮らす生活者のリアルな視点で、お金に関するさまざまな疑問に答えます。今回も、初めて投資信託を検討する投資初心者のために、実際の投資信託を比較してみます。今回は「下げ相場からの戻り」に着目してみました。

  • 投資信託のレーティングは、運用成績などをもとに5段階で評価したもの
  • 下げ相場のあとの上げ相場でどれだけ価格を戻すかは、投資信託によってまちまち
  • ESGファンドは好調で、日経平均より戻りが大きいアクティブ型投信もあった

投資信託のレーティングって何? リスクメジャーとは?

【質問】
初めて投資信託を買おうと思います。ところが? 証券会社の種類をみて呆然となり、商品も日本株がメインの投資信託だけでも多くありすぎて、まいっちゃってます。
商品のレーティングを比べても同じ評価が多いし、実際のところどうなんでしょうか?

前回に引き続き、投資信託を購入するにあたって、パフォーマンスを比較しながら選び方を考えていきます。

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何かと誤解されやすい、投資信託の基準価額のこと

相談にあるように、商品を選ぶにあたって評価する基準に「レーティング」とありますが、レーティングとは一般的に投資信託の評価(運用成績など)を、低いほうから順に☆1~☆5まで5段階で表示するものです。投資信託の評価機関ごとに独自の基準があり、短期、長期など運用期間別でも評価しているので、同一の投資信託であっても評価機関によっては運用期間で☆の数が異なることもあります。代表的なレーティングには「モーニングスターレーティング」などがありますので、ご参考にしてください。

ここで確認しておきますが、基準価額の変動リスクを示す「標準偏差」がどのくらいにあるかを、レーティングと同じように1(低)~5(高)までで示すものもありますので、ごっちゃにならないようにして下さい。これは「リスクメジャー」といって、投資信託のリスク度、つまり値動きの大きさを測るうえでの指標です。とはいえ、レーティングもリスクメジャーも同じ投資信託も多くあります。

商品を選ぶ
何を買うか選ぶときには、何らかの基準が必要

「戻り」が大きかったのはどの投資信託?

投資信託を選ぶにはレーティングもいいのですが、「上昇相場でどれだけ基準価額が上がり、下げ相場で下げ幅が低いか」に焦点を当てるのも1つかと思います。そこで今回から、日本株式に投資する5種類の投資信託を比較しながら、それぞれのリスク(値動き)はどうなのかを具体的に考えていきます。なお、5つの商品の選別に際しては、私自身で投資をしているものや、これから運用を考えているものを選んでいます。決して推奨しているものではありませんのでご了承ください。

それでは最初に、前回も取り上げた投資信託5本でわかりやすくパフォーマンスを比べられるように、日経平均株価が昨年来安値を更新した1月27日の下落相場と、翌28日の上昇相場で違いを見ていきます。
パッシブ運用のインデックス型(日経平均株価連動)1商品と、ファンドマネージャーが運用するアクティブ運用型を3商品、そしてバランス運用型1商品で個別の特徴をつかんでいきます。この5商品の特徴を頭に入れておけば、他商品を購入する際も目安となるでしょう。

まずは27日の▼下落相場、日経平均株価26,170円30銭(前日比-841円03銭)と、28日の△上昇相場、日経平均株価26,717円34銭(前日比+547円04銭)の比較をしていきます。
今回は日経平均株価が下げた翌日に上げたということで、運用会社の解約や新規買い付けへの影響が小さいと考えられるので、基準価額の変動だけ見れば、それぞれの投資信託のパフォーマンスを測ることができます。

投資信託名 基準価額と前日比(円) 戻り率 種別 設定日 運用会社
1/26 ▼1/27 △1/28
たわらノーロード
日経225
15,157 14,685
(-472)
14,990
(+305)
98.90% インデックス型 2015/12/7 アセット
マネジメントOne
ひふみ投信 54,960 53,330
(-1,630)
54,064
(+734)
98.37% アクティブ型 2008/9/30 レオス・
キャピタルワークス
さわかみファンド 29,996 29,198
(-798)
29,797
(+599)
99.34% アクティブ型 1999/8/24 さわかみ投信
損保ジャパン・
グリーン・オープン
「愛称:ぶなの森」
13,760 13,474
(-286)
13,713
(+239)
99.66% アクティブ型 1999/9/30 SOMPOアセット
マネジメント
MHAMスリーウェイ
オープン
10,249 10,161
(-88)
10,210
(+49)
99.62% バランス型 1993/11/26 アセット
マネジメントOne
(参考)
日経平均株価
27,011.33 26,170.30
(-841.03)
26717.34
(+547.04)
98.91%

どうでしょうか? 下げ相場の前日(1/26)の基準価額と、下げ相場を経た上げ相場後(1/28)の基準価額を比べて、戻りがいい順を比較すると④、⑤、③、①、②となります。日経平均株価の戻りを含めると④、⑤、③、日経平均、①、②です。
一概に、戻りの良さが投資信託のパフォーマンスと必ずしも直結するものではありませんが、参考にすることはできるでしょう。

債券にも投資するバランス型の⑤はもともと価格変動が少ないですが、他商品では、日経平均株価の戻りと比較すると特筆すべき差が出ていることが確認できます。
①たわらノーロード日経225はインデックス型なので日経平均株価とほぼ同じで、この①と②ひふみ投信以外は、日経平均より戻りがよかったことになります。ただし、アクティブ運用の代表格といえる②ひふみ投信と③さわかみファンドは海外株式を含んでいることも踏まえなければなりません。

また、唯一のインデックス型の①より、④損保ジャパン・グリーン・オープン「ぶなの森」の方が戻りがいいのを見ると、ESG投資(環境、社会、企業統治に配慮している企業を重視・選別して行う投資)に理があるのでは?と思っちゃいますね(第10回参照)。
この5本の日本株式型の投資信託から選ぶなら、安定重視順でいけば値動きの大きさも考えて⑤、④、①、成長重視順であれば戻りのよさで③、②になるのでしょうか。

テーマ型の投資信託ってどんげね?

次回も、5つの商品特徴を考えていきます。

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