宮崎県延岡市で保険業や資産運用のアドバイスに携わる小田初光さんが、地方で暮らす生活者のリアルな視点で、お金に関するさまざまな疑問に答えます。今回のテーマは、初めて投資信託を検討する投資初心者が誤解しがちな「基準価額」の仕組みを確認しつつ、基準価額をもとに実際の投資信託を比較してみます。

  • 基準価額は「投資信託を買える最低限の金額」ではなく、どの商品も1万円で買える
  • 投資信託ごとの基準価額に大きな差が生じる要因に「設定日」がある
  • どの投資信託が良いかは基準価額ではなく、これからのパフォーマンスで決まる

基準価額は「投資信託を買える最低限の金額」ではない

【質問】
初めて投資信託を買おうと思います。ところが? 証券会社の種類をみて呆然となり、商品も日本株がメインの投資信託だけでも多くありすぎて、まいっちゃってます。
投資信託の基準価額も安いのから高いものまであり、できれば安いものを多く買いたいです。「日経平均株価に連動する商品が安く買えていいよ」と聞きましたが、実際のところどうなんでしょうか?

これらの質問は、投資を始められる方が増えているのとあいまって、多くなっています。
私も以前から、本連載では投資信託の選び方のヒントをお話ししていて、相談時にも毎回話をしているのですが、投資信託は約6000もの商品があります。相談者にこだわりがあり、商品名が出れば説明もしやすいですが、投資を始めたばかりの方が、上手くリスクと向き合い、自分に合った商品を選ぶことができるのか? なかなか難しいものです。

投資初心者の方が投資信託を購入するにあたって、「一万口あたりの基準価額が高いか、安いか」という差があることが、障害の1つになっています。

基準価額の高さは、初心者ほど気にしてしまう最初のハードルになってるようです。たとえば基準価額が6万円の商品であれば、一万口買うには6万円が必要になります。「これは買えないわ! まず一万口1万円以下で買える商品を探さなきゃ。割安の投資信託がほしい」と考えてしまうのです。

なるほどね! この発想は私にはすぐに理解できませんでした。
基準価額を、「その投資信託を買うための最低限の金額」だと思ってしまったんですね。

実際には基準価額が6万円の投資信託も、商品を扱うほぼすべての金融機関で1万円から買えます。1000円で買える証券会社もあります。
基準価額と関係なく、決められた金額で購入できるのを当たり前だと思っていました。特に積立で買っている方はそれを理解しているのかと思えば、実際そうではありませんでした。

基準価額と商品特性で5本の投資信託を比較

基準価額にまつわる誤解を解いたところで、特性の違う国内株式中心の5種類の投資信託を比較しながら、「商品ごとのリスクはどうなのか?」を具体的に考えていきます。

なお、5つの商品の選別に際しては、自身で投資をしているものや、これから運用を考えているものを選んでいます。決して購入を推奨しているものではありませんのでご了承ください。

最初に、5つの商品を紹介します。大まかにインデックス運用型(日経平均株価に連動)1商品と、アクティブ運用型(ファンドマネージャーが銘柄選択)3商品、バランス運用型(株式だけでなく債券などにも投資)1商品で、個別の特徴をつかんでいきます。
この5商品の特徴を頭に入れておけば、ほかの商品を検討するときにも目安となるでしょう。

  投資信託名 種別 基準価額 設定日 運用会社
たわらノーロード
日経225
インデックス型 16,143円 2015/12/7 アセット
マネジメントOne
ひふみ投信 アクティブ型 60,433円 2008/9/30 レオス・
キャピタルワークス
さわかみファンド アクティブ型 32,289円 1999/8/24 さわかみ投信
損保ジャパン・
グリーン・オープン
「愛称:ぶなの森」
アクティブ型 14,537円 1999/9/30 SOMPOアセット
マネジメント
MHAMスリーウェイ
オープン
バランス型 10,437円 1993/11/26 アセット
マネジメントOne

※基準価額はすべて2022年1月12日付

今回は基準価額だけを見ながら考えていきます。どうでしょうか?
高値は②ひふみ投信の60,433円から、安値は⑤MHAMスリーウェイオープンの10,437円までと、大きな差があります。

そもそも投資信託の基準価額は、設定日(運用が始まる日)の前営業日を10,000円として商品の価値を指数化したもので、投資した株式などの利益や損失、分配金の支払いなどによって基準価額が動きます。
全商品10,000円から始まるのに、なぜこんなに大きな差が生まれるのでしょうか?
もちろん商品ごとのパフォーマンスに差があり、投資信託の値動きの大きさを評価会社が算出する「リスク度レーティング」もそれぞれ違いますが、設定日に注目すればなお、理解ができます。

たとえば、カリスマファンドマネージャーによるアクティブ運用で有名な②ひふみ投信と③さわかみファンド。設定日は、②が2008年9月30日で、③は1999年8月24日です。
お気づきかもしれませんが、②は2008年9月のリーマン・ショックの直後に設定されています。逆に③はITバブル崩壊、エンロン破綻、サブプライムローン問題、リーマン・ショックと世界経済の荒波を通っています。基準価額の差はここにあると思っています。
設定日からの期間が長ければ長いほど、投資信託の基準価額とパフォーマンスがどのくらいなのかを見ていくことが、長期運用では必要な要素となります。

②は、アベノミクス相場に乗った短期間でのパフォーマンスにも特徴を感じます。①たわらノーロードは、日経平均に連動するインデックス型なので、基準価額は考えなくていいでしょう。④損保ジャパン・グリーン・オープンは設定日が古く、環境問題への取り組みなど長期的なESG投資の評価に定評がある、大型株中心の運用です。基準価額は②や③より低いですが、パフォーマンスは安定しています。

最後に⑤MHAMスリーウェイオープンです。投資対象が株式約15%、債券約60%、短期金融資産約25%のバランス型で、この中では一番古い商品になりますが、基準価額が示す通り、値動きが小さい安全重視の商品となっています。

大切なのはこれからのパフォーマンス

今回の相談者は、基準価額をそのまま見て、投資信託を高い、安いなどと比較していましたが、結論としては、基準価額の数字はあまり関係ありません。どの投資信託が良いかは、あくまでもこれからのパフォーマンスで決まるのです。「安く多く買いたい」ということは忘れましょう。

ただ、②③④とも1万円で設定された基準価額を上昇させたことには「あっぱれ」です。それぞれの商品の特徴を、自分の運用プランと照らし合わせて検討してください。

次回は、この5つの投資信託について、上げ・下げ相場でのそれぞれのパフォーマンスを考えます。

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