豊かな人生とは何をもって言うか、その指標はお金だけでしょうか? ビジネスを成功させた人に聞くと「人に恵まれた」エピソードが必ず語られます。コロナ禍を体験し、先が見えない世の中だからこそ「人と繋がる」ことの大切さが身に沁みます。“人”という字が支え合っているように、人と出会って何を学んでいくかは、人生において大切な自己投資になります。この連載では、専門知識に秀でたスペシャリストや様々な経験を重ねたその道の達人に、豊かな生き方の極意を語ってもらいます。第12回のテーマは、「チャリティ」。そこで、社会活動を中心に八面六臂な活躍をしている北岡知子さんにお話を伺いました。(聞き手=さらだたまこ)

北岡知子さんの写真
北岡知子(きたおか ともこ)さん
一男一女を育てる主婦業の傍ら、30歳でパソコン関係の会社を起業。独自開発したパソコン講座をもとに上梓した著書『頑張れおやじ!パソコン地獄の特訓48時間』がテレビや雑誌で話題に。現在もミドルシニア向けのZoom講座を主宰し、高齢者のDX促進のイノベーターを目指す。一方、日常の時間を駆使して、ライオンズクラブの会員として奉仕活動に情熱を注ぐ。〈ノブレス・オブリージュ〉を自ら表現する手段として、社会活動仲間と2022年2月にチャリティーディナーコンサートを企画している。

日常の隙間を社会活動で埋め尽くす専業主婦

北岡知子さんとは、3年ほど前、鳥取県を視察するあるツアーに参加した折りに出会いました。
参加者は、学者や士業の方、あるいは企業の第一線で活躍されたキャリアを活かして地域再生事業になにかしら携わる方々だったのですが、その中で異彩を放つ存在感だったのが、北岡さんでした。

何せ好奇心旺盛で、どこに行っても的を射た質問を積極的にするので、ベテランのジャーナリストか、はたまたやり手の女性経営者に見えたのですが「ほぼ専業主婦です」と挨拶されたのでびっくり。

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しかし、話を聞いてみると、音楽や美術、映画などの芸術に造詣が深く、筆者と同年代なのにIT系に強く、また豊富な人脈が見え隠れする。そして、鳥取の山村に滞在中の海外からのツーリストたちに出会った際も、率先して流暢な英語で会話を始める……。えええっ? この人一体何者!? という衝撃を受けたのです。

さらに鳥取視察ツアーの成果として「東京に戻っても、今回のツアーで芽生えた鳥取愛をカタチにする活動をしません?」と北岡さんの提案で、定期的に集まって交流を続けていくことになりました。
その会の名は北岡さんの命名で『小さなすなっく、大きなお世話』
鳥取といえば砂丘! それにひっかけてすなっくと洒落るセンスは、放送作家もびっくりものでした。

筆者もノリはいい方と自認していますが、忙しさにかまけて、仕事以外の活動はどうも後手に回しがちになります。
しかし、北岡さんは会を開催するたびに「次回はいつにしましょう?」とスケジューリングするので、鳥取ツアーで出会った私たちが集う会合は持続でき、様々な人たちとの出会いに繋がっていきました。

まさに継続は力なりですが、「そのバイタリティは何ですか?」と北岡さんに聞いたところ、「予定はきちんと立てておかないと何もできないじゃないですか?」
という答えが返ってきました。
北岡さんの手帖は、毎日予定でぎっしり。『小さなすなっく』活動もわずかに空いた時間を埋めるようにスケジューリングされていました。
筆者も基本はフリーランスのライターであちこちの仕事に首を突っ込んできたので、時間から時間へと渡り歩く生活をしてきたのですが、専業主婦と言いながら、この真っ黒に埋め尽くされた北岡さんの日常生活は何なのだ! とますます謎が深まるばかり!

「これほとんど、ビジネスではなくて、社会活動なのよ!」と北岡さん。
そこで、初めて北岡さんは、奉仕活動に情熱を捧げる社会活動家であることを知りました。

北岡さんはライオンズクラブの会員として、奉仕活動を続けています。
「様々な募金活動やバザー、駅前や神社仏閣などの清掃や献血の呼びかけなどは、ライオンズクラブの活動をご存知の方も多いと思いますが、環境整備のアクティビティとして森林伐採、公園の植物の植栽のお手伝い、チャリティコンサート、薬物乱用防止教室などの開催、それから海外からの交換留学生の受け入れなど幅広い活動をしているんですよ」と、北岡さん。
この説明を聞いて、熱心に活動をすれば、なるほど、スケジュールもすぐに埋まってくるなと納得できました。

植林のイメージ
北岡さんはライオンズクラブを通じて様々な奉仕活動をおこなっているという

北岡さんは、故郷の熊本県が2016年に地震で被災したこと、また台風の被害にも遭う地域なので、被災地の支援にも余念がありません。
ライオンズクラブのアラート委員会にも名を連ね、「IT等を駆使し、すみやかに情報を集めて、全国の各支部が連携して適切な支援ができるように活動していきたい」と意欲を示す感性も持ち合わせていて、それも驚きでした。

世間一般にライオンズクラブなどの組織は、「いわゆるひとかどの年配者のソサエティ」というイメージがありますが、北岡さんのようなアクティブな女性が年齢を感じさせない「今」の時代に即し、変化にスピーディに柔軟に対応して様々な活動に身を投じる姿を見て、既成概念が吹き飛びました。

しかし、ITを駆使しようとする北岡さんの感性と積極性は、この2年間のコロナ禍で、「ひとかどの年配者」の意識にもパラダイムシフトをもたらしたと言えます。

ステイホームで見出したDX的イノベーション

順調な『小さなすなっく』活動も、やがて2年になろうとするコロナ禍のもとではリアル開催が難しくなり、開店休業状態に。
しかし、北岡さんから2020年の初秋に「みなさんZoomで集いましょう。手始めに私のオリジナルメソッドでZoom講座を開催しますので、是非ご参加を! もちろん当たりまえだけど無料よ!」と呼びかけがありました。

そのころはもう、在宅ワークに必携のZoomは世に浸透し、筆者も一通りの使い方はわかっていたので、ただのZoom飲みで良いのになあと思ったのですが、北岡さんの「オリジナルメソッド」という言葉に興味が湧きました。

そして受講してみたら、目からウロコがぽろぽろ落ちることばかり。
Zoomは画面越しに会話ができれば良いと思ってしまいますが、筆者はウェビナーで講演の講師や、シンポジウムのパネリスト、あるいは、モデレーター(進行役)を担うことも多く、大勢のオーディエンスの前に出る場合、背景や自分の顔の映りが気になっていました。
しかし、北岡メソッドによって、バージョンアップされたZoom機能を駆使して問題を解決することができ、その方法を、Zoom活用する人たちに伝えることもでき、とても助かっています。

Zoom画面のイメージ
北岡メソッドによるバージョンアップされたZoom活用で仕事がはかどる!

「パソコンやインターネットというツールを使うとき、便利な機能はたくさん搭載され、また日々進化しているのですが、多くの人はそれを見逃して使わないのでもったいないのです。それも、一度覚えてしまったら簡単。機械が苦手という高齢世代だって使いこなせるのだから、使いこなさない手はないのです」と北岡さんはいいます。

そして、ライオンズクラブでも北岡メソッドのZoom講座で、高齢の会員の方々がどんどんリモート会議に参加して、コロナ禍でもアクティビティは留まることがなかったようです。

実は北岡さんは、『パソコン地獄の特訓』というシリーズでパソコンの入門書を何冊も手掛けた著者でもあるのです。
「Windows95時代の話です。私自身も、ワープロに成り代わり、未知なるパソコンとは苦戦してまして、でも、それで時代に置いて行かれるのは悔しいでしょう? だから苦手克服を逆手にとって、会社を起業し、やがて、自分のための入門書を書いてしまおうと! で、面白がって『頑張れおやじ!』なんてタイトルを付けたので、NHKの教育テレビのパソコン講座や、民放ではニュースショーなどに取りあげてもらって出演もしました」と、北岡さんは当時を懐かしみます。

昨今のZoom講座も、昔取った杵柄を活かした形です。
是非、人生100年時代を生きる高齢者が、在宅でも世界に向かって情報を発信したり、国を越えて人と人が繋がるように、北岡メソッドをさらに進捗させてほしいと願うばかりです。

しかし、北岡さんの2022年の目標は、それだけにとどまりません!

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