豊かな人生とは何をもって言うか、その指標はお金だけでしょうか? ビジネスを成功させた人に聞くと「人に恵まれた」エピソードが必ず語られます。コロナ禍を体験し、先が見えない世の中だからこそ「人と繋がる」ことの大切さが身に沁みます。“人”という字が支え合っているように、人と出会って何を学んでいくかは、人生において大切な自己投資になります。この連載では、専門知識に秀でたスペシャリストや様々な経験を重ねたその道の達人に、豊かな生き方の極意を語ってもらいます。
第14回のテーマは「幸せなM&A」。自らの経験をもとにファミリービジネスと女性事業家のためのファシリテーターとして活躍する丸山祥子さんにお話を伺いました。(聞き手=さらだたまこ)

丸山祥子さんの写真
丸山祥子(まるやま さちこ)さん
株式会社フェリタスジャパン 代表取締役
愛知県生まれ。90年続く家業の建設会社(株)丸山組を承継し、2年後に同業者に譲渡。同族企業の経営と承継の経験から、ファミリービジネスと女性事業家のためのファシリテーターとして独立。早稲田大学大学院理工学研究科修了。グロービス経営大学院修了(MBA)。FBAAファミリービジネスアドバイザー資格認定保持者/国家資格キャリアコンサルタント/ABD®(アクティブ・ブック・ダイアローグ)認定ファシリテーター(No.051)

ファミリービジネス専門のファシリテーターとして!

日本の企業は、その97%が同族企業、つまり、ほぼファミリービジネスなのだといいます。

代々受け継がれてきた事業を、次世代が承継していくのが、ファミリービジネスの形ですが、後継者がいなくて、いずれ消えていく同族企業はここ10年ほどの間に120万社ほどあるともいわれていて、事業承継の問題は、日本経済の行く末に大きな影響を及ぼすものなのです。

そんな中で、ファミリービジネス専門のファシリテーターとして活動している女性がいます。丸山祥子さん。自らファシリテーターの会社を起業し、さらにFBAA(日本ファミリービジネスアドバイザー協会)の執行役員として、丸山さんのようなアドバイザーやファシリテーターの養成にも尽力しています。

会議や、あるいは講座の進行役としてファシリテーターという言葉を耳にするようになりましたが、単なる進行役ではなく、ミーティングに参加したメンバーの相互理解を促しながら合意を形成して、問題解決を促進する役目があります。

ファミリービジネスに特化したファシリテーターである丸山祥子さんは、「特にこの分野では感情に寄り添い、建設的な対話を促す第三者であることを心がけている」といいます。

ビジネスのアドバイザーは、いわゆる経営コンサルタントや、法律の専門家の活躍の場でもありますが、ファミリービジネスという分野では、血の繋がった家族の人間模様やそれに伴う感情が複雑に絡み合い、それを無視して問題解決はできないという状況にあります。

ESG特集

「例えば、家族で経営していると、家族のメンバーで会議をしようということが、案外成立しないんです。『そんなこと家に帰って夕食の時に話せばいい』……くらいに思ってしまって。『いやいや、家族でも会議はちゃんと会社でしましょう』というアポ取りから、ファシリテーターは始めます」と、ファミリービジネスの調整は普通の会社にはないことが、たくさんのネックになっているようです。

「あと、当然のように、社長である家長のお父さんの権限が大きすぎて、家族であっても……いや、家族ゆえに誰も逆らえないとう状況も。そんなときに、『この問題は、一人一票の多数決で』といえるのがファシリテーターの役目なんです」

そんなきめの細かいところにまで目が届く丸山祥子さんに、ファミリービジネス専門のファシリテーターとしてニーズがあるのも、実は、丸山さん自身が渦中を生きた経験者だったからです。

ファシリテーターのイメージ
自ら事業承継の経験をもとに丸山さんは、ファミリービジネス専門のファシリテーターに! ※写真はイメージです

「同族経営の方々は、いつも不安と隣り合わせにいます。でも、誰にも相談できなくて、家族にすら悩みを打ち明けられず、一人で背負ってしまうのです。私も経営者だったころ、誰も、相談に乗ってくれる人はいないし、『あなた、それで大丈夫よ』って背中を押してくれる人もいなかった。だから、その役を今度は私ができれば」というのが、現在の仕事を始めたきっかけでした。

『今、全部やろうとしなくてもいいから。今するべきことはこれですよ』っていうだけでも、肩の荷が下りるはず」と丸山さんはいいます。

プラス、ファミリービジネスの場合、感情に寄り添って、家族一人一人の気持ちを汲み取っていく……これは経験者である丸山さんだからこそできることなのでしょうね。

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