「先物取引は怖い」というイメージを漠然と持っている人は多いかもしれません。本記事では、そもそも先物取引とはどのような取引なのか、そして先物取引のリスクとメリットについて解説します。またリスクを抑えた運用方法や、中上級者向けといわれる理由などについてもお伝えします。

  • 先物取引とは、取引時点で決めた価格によって将来売買することを約束する取引
  • 先物取引には元本を超える損失が発生するリスクがあり、取引期間が決まっている
  • リスクを抑えた運用も可能だが、メリットを生かすにはある程度の投資経験が必要

先物取引は主に「商品先物」と「金融先物」の2種類

先物取引とは、価格変動がある商品や有価証券などの資産(「原資産」といいます)を、取引時点で決めた価格によって将来売買することを約束する取引です。あらかじめ売買の数量や価格を約束しておき、その後の約束の期日になった時点で売買(最終決済)を行う仕組みです。

例えば、現時点で10kgの小麦が3,000円で売られているとしましょう。そして「来年は不作になって価格が上昇するだろう」と予想し、1年後の決められた日に10kgの小麦を3,000円で買う約束をします。

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その後、翌年に本当に小麦が不作となり10kgの価格が4,000円に価格が上がった場合でも、約束通り10kgの小麦を3,000円で買えることが先物取引のメリットです。この場合、実際の価格で小麦を買う(現物取引)より、同じ小麦を1,000円安く買えるわけです。

逆に、予想に反して豊作となり10kgの小麦の価格が2,000円になった場合でも、約束した3,000円で取引しなければいけません。現物取引なら2,000円で買える小麦に3,000円払うこととなり、1,000円損してしまうことになります。

農産物の先物取引における損得
不作→現物価格が上昇→先物取引の方が安く買える=
豊作→現物価格が下落→現物取引の方が安く買える=

先物取引の投資対象は大きく分けて「商品先物」と「金融先物」という2つの種類があります。商品先物の種類には、先ほど例に挙げた米や小麦などの農産物、豚肉などの畜産物のほか、金や銀などの貴金属、天然ガスや原油などのエネルギーなどがあり、これらをまとめて「コモディティ」と呼ぶこともあります。

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先物取引は、取引期間中にも「反対売買」による決済ができます。個人投資家は、実際に農産物や原油などを買うわけではないので、期間中に「先物を買い、値上がりしたら売る」「先物を売り、値下がりしたら買う」という取引をして利益を狙います。商品先物は、先物取引業者や一部の証券会社で取り扱っています。

小麦畑
「商品先物」の原資産は、小麦などの農産物のほか、畜産物、貴金属、エネルギーなどがある

金融先物の種類には、国債先物取引や株価指数先物取引のほか、金利先物取引、外国為替先物取引などがあります。例えば個人向けの代表的な先物取引の商品として、日経平均株価を原資産とした「日経225mini」があります。金融先物は先物取引業者のほか、多くの証券会社で取り扱っています。

現物取引にはない2つのリスク

株式投資や投資信託、FXなどと比べて敷居が高いイメージのある先物取引。現物取引にはない、先物取引ならではのリスクの存在が、「先物取引は怖い」というイメージにつながっているのでしょう。リスクを正しく理解して、うまく使いこなせば、現物取引では得られない収益のチャンスが広がります。

先物取引を行う前に知っておきたい2つのリスクについて解説します。

1. 元本を超える損失が発生するリスク

先物取引では、あらかじめ差し入れた証拠金(担保として預けたお金)に対して、レバレッジ(てこの作用)をかけて取引を行うことができます。そのため、少額の資金を元手に何十倍もの金額にレバレッジを利かせて取引が可能です。

例えば日経225miniの場合、最低限必要な証拠金は、2022年11月18日時点で1取引単位あたり135,000円です。日経225miniの1取引単位は日経平均株価の100倍なので、現時点では約280万円となります。つまり、日経平均株価を対象とした現物取引(インデックスファンド・ETF)と比較して、先物取引なら20倍以上の金額で取引ができるというわけです。

レバレッジによって大きな利益を狙えるメリットがありますが、一方で、差し入れた証拠金以上に損失が大きく膨らんでしまう可能性もあります。日経平均株価が1%変動した場合、インデックスファンドなどの現物取引なら1%の利益や損失となりますが、日経225miniを最大のレバレッジで取引する場合は、元本に対して20%を超える利益や損失が発生することになります。

レバレッジのイメージ
「テコの作用」を意味するレバレッジ(leverage)。少額の資金で大きな投資を行うことができる

現物取引では最悪の場合でも元本がゼロになるだけですが、先物取引では元本を超える損失が発生するリスクがあります。レバレッジ20倍で取引しているときに、仮に原資産が6%下落すれば、先物は120%の下落になり、損失額が元本を超えてしまいます。その場合には「追証(おいしょう)」といって、証拠金を追加で支払わなければいけません。

高レバレッジで取引をしているときは特に、原資産の急な値動きには注意が必要です。

2. 取引期間が決まっているため、自動的に損失が確定するリスク

先物取引は、決められた期日に取引が終了します。一般的な株式投資では保有期間に期限はなく、自分が好きなタイミングで売買できるため、長期保有できます。しかし、先物取引は期日まで保有すると決済が自動的に行われるため、長期的には保有できません。期日の時点で含み損を抱えていたら、そのまま損失が確定してしまいます。

リスクを抑えた運用も可能だが中上級者向け

先物取引のメリットは、少額の元手で大きな取引ができることです。レバレッジをかけて元手資金以上の取引ができるため、少ない資金で大きな利益を得られる可能性があります。一方で、大きな損失が発生するリスクもあり、これが「先物取引は怖い」と言われる理由です。

先物取引のもうひとつの大きなメリットが、売りから始める「空売り」ができることです。FXと同じように「高い時に売り、安くなったら買う」という取引ができます。そのため、原資産の価格が上がる時だけでなく、価格が下がる時でも利益を狙えます。

先物取引の中で、個人投資家にとって取引しやすいのが「日経225mini」や「ミニTOPIX先物」、「JPX日経インデックス400先物」です。必要な証拠金が比較的少なくてすむうえ、原資産が国内の株価指数で値動きの傾向がわかりやすいので、先物取引の入門に適した商品といえるでしょう。

先物取引は、仕組みやリスクを正しく理解すればリスクを抑えた運用も可能ですが、メリットを生かすにはある程度の投資経験が必要でしょう。投資初心者の方は、株式やETFの現物取引に慣れてからチャレンジするほうがよいでしょう。

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