「預金なら安心」って本当なの? 「元本保証」って、実際に何を保障してくれるの? 実は、現金にもリスクが潜んでいるのです。本連載ではそんな「現金のリスク」を切り口に、お金のほんとうの価値を守るための資産運用について考えていきます。今回は、前回に引き続いて積立投資をテーマに、つみたてNISAの特徴について詳しく見ていきます。

  • NISAは配当金や売却益などが非課税になり、代わりに損益通算ができない制度
  • つみたてNISAの商品は、長期の積立投資に適した投資信託などに限られる
  • つみたてNISAの投資信託は販売手数料がゼロで、信託報酬が安いことが特徴

前回の稿では、複数の積立投資についてご紹介いたしました。本稿では、つみたてNISAについて、主にコスト(販売手数料と信託報酬)に絞って述べてまいります。

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そもそもNISAとは?

もともと、NISAは株式や投資信託を保有している間に受け取れる配当金や、普通分配金(配当所得)と売却益(譲渡所得)が非課税になり、代わりに損益通算ができない制度です。そして、投資方法が「積立投資」に限定され、年間の投資額が40万円、非課税の期間が20年間などの制約があるのが、つみたてNISAです。(なお、年間投資額や非課税期間は2024年以後、改正される可能性があります)。

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NISAにしても、つみたてNISAにしても、配当所得や譲渡所得が非課税になるだけで、利益が約束されたものではありません。しかし、政府が非課税というお墨付き(?)を与え、話題になると、期待がふくらんでいる方も少なくないようです。

つみたてNISAの要件

つみたてNISAには、もう一つ制約があります。投資の対象が、長期の積立・分散投資に適した一定の投資信託・ETFとされ、金融庁に届け出たものに限られています。では「適した」とは、どういうことなのか? つみたてNISAの対象になる投資信託の要件についてみてみましょう。

  • 販売手数料はゼロ(ノーロード)
  • 信託報酬は一定水準以下(例:国内株のインデックス投信の場合0.5%以下)に限定
  • 顧客一人ひとりに対して、その顧客が過去1年間に負担した信託報酬の概算金額を通知すること
  • 信託契約期間が無期限または20年以上であること
  • 分配頻度が毎月でないこと
  • ヘッジ目的の場合等を除き、デリバティブ取引による運用を行っていないこと

つみたてNISAのコスト

つみたてNISAで評価したいのはコスト(販売手数料と信託報酬)です。

何と申しましても、販売手数料がゼロは大きいです。販売手数料は率(%)で表示され、投資信託によって異なり、また同じ投資信託でも販売する証券会社や銀行などによっても異なります。3.3%という商品もあります。つまり、お客様の立場に立てば、販売手数料分、マイナススタートということになります。例えば、積立投資の額が10,000円ですと、手数料額は330円です。
ちなみに販売手数料は、投資信託を販売した会社が受け取ります。

信託報酬はゼロにはなりませんが、かなり低く抑えられています。

信託報酬について

ここで、信託報酬について簡単に触れてみたいと思います。

信託報酬は投資信託を保有している間、ずっと掛かってくるコストです。信託報酬もやはり率(%)で表示されますが、この率は年率です。そして、この年率に基づいて計算した信託報酬の額は日割り計算され、毎営業日「投資信託財産から控除」されることになっています。そして、投資信託の株価に相当する基準価額は「信託報酬の額を控除した後」の数字です。なので、お客様が現実に「いくらの信託報酬を負担したのか?」というのは、ぱっと見、分かりません。

ですので、先述の「つみたてNISAの対象になる投資信託の要件」の中に、「顧客一人ひとりに対して、その顧客が過去1年間に負担した信託報酬の概算金額を通知すること」があるのは、ある意味、画期的と言えるでしょう。

信託報酬の額は投資信託によって異なりますが、販売会社による違いはありません。なお、投資信託の中にはコースが設けられているものもありますが、同じ投資信託でもコースによって異なることもあるようです。かつて、筆者が購入した投資信託の中には信託報酬の率が2%を超えるものもありました。

つみたてNISAはローコスト

ここで、仮に信託報酬の率が2.2%としましょう。先述の販売手数料が3.3%だとすると、合わせて年間で5.3%ものコストを負担することになります。つまり、年間で「5.3%のマイナススタート」になるのです。

【図表】つみたてNISA対象商品の信託報酬率の分布(2017年10月時点→2022年12月時点)
つみたてNISA対象商品の信託報酬率の分布(2017年10月時点→2022年12月時点)
出所:金融庁

それがつみたてNISAの対象の投資信託では、販売手数料がゼロ、信託報酬が平均で0.255%や0.31%ですから、コストという視点に絞ってみると、非常に有利な投資商品であることが分かります。

以上、つみたてNISAについて、コストに絞って述べてみました。
しかし、非課税にして、いかにローコストでも、つみたてNISAは投資です。そして投資とは「未知の未来への投資」であることには変わりありません。

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