テレビ、ラジオ、動画配信も含めて様々なコンテンツの台本や脚本を執筆する放送作家&脚本家が700人以上所属する日本放送作家協会(放作協)がお送りする豪華リレーエッセイ。ヒット番組を担当する売れっ子作家から放送業界の裏を知り尽くす重鎮作家、目覚ましい活躍をみせる若手作家まで顔ぶれも多彩。この受難の時代に力強く生き抜く放送作家&脚本家たちのユニークかつリアルな処世術はきっと皆様の参考になるはず!
連載第147回は、月間40本のコラムを執筆するコラムニストであり、放送作家の山田美保子さん。
片付けられない放送作家の“断捨離”は難しい
12月に入り、やたらと増えるのが“大掃除”関連の商材のテレビCMだ。新聞にも、水回りの“お掃除パック”とか、“片づけ業者”のチラシが毎日のように入ってくる。早く着手しなくちゃ……と思いながら、ちっとも進んでいない。
放送作家という職種は、“片づけられない男女”の集まりだと私は思っている。会議ではペーパーレス化が進んで久しいものの、資料を紙で貰うことはまだ多いし、台本も昔のようにキチンと製本されるケースは少なくなったが、何十枚もの紙をホチキスで留めたものが配られる。
私はコメンテーターとして出演をすることも多いのだが、その際にも台本とは別に、スタジオのモニターに出される文言やフリップの内容などがすべてA4サイズにまとめられ、ドッサリというカンジで手渡されるのだ。
番組終了後、それをどうするか? 局内には台本や資料を入れる大きなゴミ箱があるというのに私はそこには捨てずに全て持ち帰ってしまう。この資料をネタにエッセイが1~2本、書けるかもしれない。裏が白ければメモに使えるかもしれない。いわゆる“裏紙”としてコピー機に利用できるかもしれないなどと思うからだ。
紙袋やポリ袋の類も同様に溜めこんでしまうし、雑誌や単行本、映画や舞台のパンフレットなども“年代物”というべきものが書棚にズラリと並ぶ。もしかしたら使う日が来るかもしれないと思うと、やはり捨てられないのだ。
「ときめかない」ものが、どれだけあるか?
そんな日は来ない? いやいや、これがちゃんと来るのである。先日も『M-1グランプリ』について書こうと思い、(確か、あるハズ)と本棚を探していたら、ちゃんとチュートリアルが表紙の『マンスリーよしもと』(吉本興業が発行していた月刊誌)が出てきた。彼らが『M-1~』で優勝したのは2006年で、記念号は翌年に出版されたので16年前。まさに年代ものだ。
女性誌に至っては、もっと古いものが並んでいる。たとえば『CanCam』は、エビちゃん、もえちゃんが表紙。今年休刊になった『週刊朝日』は恐らく一生捨てられないと思うし、レコードやCDなども大切な資料だと思うとやっぱり捨てられない。
さらに、バッグやアクセサリー、洋服なども、どんどん溜まっていく。
ものを捨てる際の極意は、「ときめくか、ときめかないか」だと言われている。私が溜め込んでいるものをそれでジャッジした場合、「ときめかない」という結論に達するものがどれだけあるというのだろう。
よくトークバラエティで、タレントさんが断捨離について語ってくれることがある。断捨離の才能に優れている人は、本当にどんどん捨ててしまうようで、その最たる例は島崎和歌子さん。「捨てすぎて、部屋の中が寒い」とのことだが、「リビングにソファーがない」と言っていたのには驚いた。
また高橋英樹さんは72歳のとき、自宅のものを33トン断捨離して話題になった。中尾彬さんはトレードマークの“ねじねじ”をずいぶん処分したそうだ。
年齢的に高橋さんや中尾さんに近い私に断捨離はできるのだろうか。果たして!?
次回も山田美保子さん、「ときめきの!? 断捨離(後編)」へ続く!
放送作家の地位向上を目指し、昭和34年(1959)に創立された文化団体。初代会長は久保田万太郎、初代理事長は内村直也。毎年NHKと共催で新人コンクール「創作テレビドラマ大賞」「創作ラジオドラマ大賞」で未来を担う若手を発掘。作家養成スクール「市川森一・藤本義一記念 東京作家大学」、宮崎県美郷町主催の「西の正倉院 みさと文学賞」、国際会議「アジアドラマカンファレンス」、脚本の保存「日本脚本アーカイブズ」などさまざまな事業の運営を担う。