宮崎県延岡市で保険業や資産運用のアドバイスに携わる小田初光さんが、地方で暮らす生活者のリアルな視点で、お金に関するさまざまな疑問に答えます。今回も前回に引き続き、米国株式の個別銘柄への投資を考えている方に向けて、米国株式ならではの為替リスクと、株を買うタイミングを考える際にヒントとなる「株価トレンド」について解説します。
- 米国株を買う場合は為替リスクに注意。円高で米ドルを買えば円安時に利益が出る
- 米国株は日本株と比較して安い価格で買える傾向がある
- 株を買うタイミングを検討する際は、テクニカル分析で株価トレンドを確認したい
米国株を買う場合は為替リスクに注意
【質問】
NISAを使ってネット証券で積立投資を始めて3年で、お金が少し増えてます。これだったら、残りのNISA枠で米国などの株を買えば、まだまだ増えていくのかと思うのですが、この考え方間違っていますか?
今回も前回に引き続き、米国株について考察していきます。
前回は、「株価が変動するのはなぜか?」にスポットを当て、株式市場は毎日動いているということを話しました。
今回は、米国株を買うにあたって考慮しなければならない注意点と、前回は説明しなかったもう1つの変動の要因を説明します。
米国株と日本株の大きな違いは、日本株を買う時は当然のことですが日本円での決算ですので、何も考えずに買うことができますが、米国株を買う場合は日本円ではなく、米ドルで買わなければいけないことです。日本円を米ドルに替え、そして米国株を買わなければなりません。
要は、米国株を買う場合は、円をドルに替える際に為替手数料がかかってくるということです。証券会社の取引手数料だけでなく、為替手数料も加味しなければなりません。取引手数料も為替手数料も各社で違っていますので、事前に確認した方が良いでしょう。
ちなみに、ネット証券では為替手数料無料のサービスも出てきています。
私は円安の流れは当分続いていくと考えていますので、為替差益を考えると、円高の時に円を米ドルに変換することに意味があると思います。単に米国株が今割安になっているから、米国株を買うために円を米ドルに替えるのではなく、常に為替レートも考えながら、円高になったら米国株とは関係なく円を米ドルに替えておくのも重要ということになります。
為替差益は、米ドルを買った時より為替が円高になれば損になり、円安になれば儲けとなります。米国株は、証券会社によっては円から直接買う(注文成立と同時に円を米ドルに替える)こともできますが、先に述べた理由から、あらかじめ米ドルに替えておいた方が賢明です。円高進行時に円を米ドルに替えて口座に置いておけば、円安時に利益が出やすくなります。
ただし、長期投資を前提として米国株で運用を行うのならば、為替リスクはあまり考えないでもいいと思います。なぜなら、長期投資では株価の上昇や配当金の再投資による利益を期待できるため、為替リスクはそれほど気にならなくなるからです。
米国株は比較的安い価格で買えるのも魅力
また、米国株の利点は比較的少ないお金で買えることです。時価総額が数百兆円の銘柄でも、最低1株から投資できます。
日本株であれば100株単位での売買がほとんどです。例を挙げると、半導体銘柄のルネサスエレクトロニクスは時価総額約6兆円で、100株が約32万円(2024年7月17日時点。以下同じ)。
一方、米国市場ではAI・半導体関連銘柄の代表格であるエヌビディアは、100株では約200万円ですが、1株の株価である約20,000円で購入できます。時価総額は何と約2.9兆ドル、450兆円近くとなり、目覚ましい成長がいまだに続いている。このようなビッグな銘柄も1株から買えるのが、米国株投資の醍醐味の一つです。
ただし勘違いしてはいけないのは、安いのは購入単位という意味で、株価が割安ではないということです。
株価の先行きを予測するには「株価トレンド」も重要
前回は株価変動の2つの要因として「ファンダメンタルズ」と「需給バランス」について見てきましたが、変動の要因で重要になることが、実はもう一つあります。
それは、テクニカル分析における代表的な「株価のトレンド」と言われるものです。
テクニカル分析は「チャート分析」とも言います。チャートは過去の株価の動きを可視化したグラフのことで、そのグラフの種類にもいろいろあります。
株価トレンドとは、簡単に言えば「株価が今どの方向に動いているか」ということです。要は相場の方向性を示唆するものになりますが、株価トレンドには3つの種類しかありません。「上昇トレンド」「横ばいトレンド」「下降トレンド」のいずれかです。
株を買った途端に下がった、売った途端に上がったなどは株式投資ではあり得ることです。株を買うタイミングを読み間違えないためには、株価トレンドについての知識も必要だということです。
株価トレンドは一度生じると、案外長く続く傾向にあります。一度確立したトレンドが転換するためには、企業の売上などの業績が目に見えて悪化、または改善するなど、大きな修正材料によるエネルギーが必要になります。
したがって、株を買う場合は下降トレンドのものは避けて、上昇トレンド、あるいは横ばいトレンドのものを選ぶと、タイミングで失敗する可能性は減っていきます。
私も4年前から米国株を複数買っていますが、私の銘柄にも下降トレンドのものを選んでしまった結果、2年以上も下落に陥っているものが複数あります。
株式投資の初心者によくある失敗が、「1か月前5000円だった株価が今は4000円になっている。割安だから買おう」です。同じ商品が20%も安くなれば、今買った方が有利と考えるのは、一般の商品なら自然の流れです。株式投資でもこれと同じ考えをしてしまうと、失敗してしまうのです。中には成功する場合もありますが、株式投資では「安くなったから買おう」は失敗が大半だと思ってください。
例えば下落が先週の数日間だけの、一過性のものであったのなら良いのですが、1か月前からの下落で価格がすぐに戻っていないとなると、その株は下降トレンドに突入した可能性が高いと考えられます。
テクニカル分析の「トレンドライン」
株式投資では、上昇トレンドにある株だけを買えれば儲かる可能性が高いのですが、今の株価トレンドを見極めることが難しいといわれています。そのトレンドを見極めるのがテクニカル分析で、代表的な方法に「トレンドライン」があります。これは、株価チャート内の隣り合う2か所以上の高値または安値を直線でつないだものです。
一般的に高値ラインと安値ラインの2本を引いて、株価の現状を把握します。株価がどちらかのラインを超えたら、相場が転換したとするサインになります。
テクニカル分析は自分自身でできる
私が考える株式投資は、積立投資と同じく、基本的には長期投資に徹するべきだと思います。ただ、スポットで株を買うタイミングは、なるべくなら上昇トレンドで買えればそれに越したことはありません。
テクニカル分析は株価トレンドを見極めて、売買のタイミングを考えるための方法。そしてファンダメンタルズ分析は、現在の株価が割安か、割高かを判断するものとなります。
ファンダメンタルズ分析では、個人投資家はアナリストが公表したレポートを参考に判断するものが大半です。一方のテクニカル分析はチャートがあれば自分自身で行えるものなので、覚えて損はないと思います。
今回、株式投資にチャレンジするにあたって大まかな注意点を話してきましたが、「こりゃあ面倒だ」と思った方は、米国株を含む投資信託を利用するのがいいでしょう。何事も知識が必要だということです。
次回もテクニカル分析を中心に見ていきます。