現役証券アナリストの佐々木達也さんが、株式市場で注目度が高い銘柄の強みや業績、将来性を解説する本連載。第87回は、多くのクリエイターが情報発信やオンラインサロンなどに活用しているプラットフォーム「note」を運営する、note(5243)をご紹介します。
- noteは文章や画像、動画などを投稿できるプラットフォーム「note」を運営
- オンラインテキストコンテンツ市場の伸びしろは大きい。法人向けサービスも伸びる
- 1月に米グーグルとの資本業務提携を発表し株価は一時急騰。再度の上昇回帰に期待
note(5243)はどんな会社?
noteは「だれもが創作をはじめ、続けられるようにする」をミッションとし、クリエイターが文章や画像、動画などを自由に投稿できるデジタルプラットフォーム「note」を運営しています。
主な事業として、個人向けの「note」、法人向けSaaS(ソフトウェア・アズ・ア・サービス)の「note pro」や、AI(人工知能)領域のサービスなどを手がけています。
noteは創業者で代表取締役CEOの加藤貞顕氏によって、2011年に前身のピースオブケイクとして設立されました。当時はインターネットによって既存メディアの収益力が低下する一方で、ネットメディアではPV稼ぎ目的の炎上や、広告収入を中心とした収益モデルが中心でした。アスキーやダイヤモンド社で編集者として働いた経験のある加藤氏は、クリエイターが満足のいくような創作活動を取り組める場を創りたいと考えたのが創業のきっかけだと語っています。
個人向けのほか、法人向けの「note pro」が伸びる
noteは加藤氏のメディア企業との強固なつながりや、すぐれたデザインによるユーザーインターフェース、優秀な多数の技術者によるテクノロジーにより、ユーザーからの支援が続いています。
個人向けの「note」はユーザー層の拡大が続いており、約890万人のクリエイターが利用しています。サービスの認知が広まる中、前期2024年11月期時点での年間流通総額は170億円、上位クリエイター1000人の年間平均売上高が1282万円と、ユーザー、クリエイターともに利便性が向上しています。
オンラインテキストコンテンツの市場は2022年時点で約1.9兆円あると言われており、同社の獲得可能な年間流通総額のシェアは0.9%に過ぎず、伸びしろは大きいといえます。
さらに法人向けの「note pro」が業績の伸びをけん引しています。同サービスは法人のオウンドメディアの運用、ホームページ構築といった情報発信を簡単にできるメディアSaaSです。サーバー不要で直感的に操作できるユーザーインターフェース、AIとスタッフによるコンテンツ制作支援などが受け、法人の利用が拡大しています。
note(5243)の業績や株価は?
noteの今期2025年11月期決算は売上高が前期比21%増の40億円、営業利益が13%増の6000万円と、ともに過去最高を見込んでいます。 既存、新規事業でともに増収を見込む一方で、営業利益ベースでの黒字化もあり、noteやnote proにおける⽣成AI技術の活用を含めた新機能の開発など、成長戦略も続けるとしています。

3月21日の終値は1547円で、投資単位は100株単位となり、最低投資金額は約16万円、配当、株主優待は現状では実施しておらず、株価成長による株主への利益還元をもくろんでいます。
同社は1月に米グーグルとの資本業務提携を発表し、投資家の注目を集めました。グーグルへの新株発行で約5億円の現金を調達し、AIなどの成長投資に充てる予定です。 GoogleのAIモデルGeminiを活用した新機能を開発し、クリエイターの創作支援と、企業向けでは炎上防止ツール、リコメンド機能などを強化しユーザーの満足度向上につなげようとしています。
株価はグーグルとの資本業務提携を機に上昇相場となり、2月12日に上場来高値2909円まで急騰しました。しかしその後は利益確定売りもあり、直近では1500円前後での値固めの動きとなっています。
同社はnoteのエコシステムを拡張し、新規事業を立ち上げ、25年度以降の売上高成長率は年率平均で20~30%を目指すとしています。奇しくも紙媒体のメディアの廃止、縮小が相次ぐ中、クリエイターのデジタルのコンテンツ発信の場としての同社の需要は引き続き伸びるとみています。株価についても、業績の順調な進捗で再度の上昇トレンド回帰に期待したいところです。