宮崎県延岡市で保険業や資産運用のアドバイスに携わる小田初光さんが、地方で暮らす生活者のリアルな視点で、お金に関するさまざまな疑問に答えます。前回までは財務諸表の「資産」と「負債」、「収入」と「支出」を見てきました。今回は、資産と収入を増やすためのキャッシュフローのあり方を考えます。

  • 持ち家は負債のかたまり。家や自家用車は「価値がないもの」と思うべき
  • 「今のお金をどう維持するか」を基準に、借金や収入増などの計画を立てる
  • 貸借対照表の「資産」から損益計算書の「収入」を生むキャッシュフローを作る

ローンで購入した自宅は「負債のかたまり」

【質問】
家庭の大黒柱として、とうとう家を手に入れました。これで私も一人前の父親です。長期の借金はしましたが、これからは仕事をバリバリして頑張ります。親戚からも「すごいね! その年齢で、たいしたもんだ」と褒められましたが、これから頑張っていくうえで、仕事に対するアドバイスを下さい。

「そうですか~、家族みんなが集う住み家を手に入れたんですね。年齢的に30年くらいの住宅ローンだと思いますが、大きな買い物をしたんですね。頑張ったのですね。後は、お子さまもいらっしゃいますので、教育資金を準備しなきゃいけないですね。もう一踏ん張りしてください。」
と言わせていただきました。

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どう話していけばいいのか迷ったのですが、家の購入についての考え方は、別の視点からも見ていく必要性があります。
前回、相談者のお小遣いの使い道を測るために、財務諸表から「資産と負債」、そして「収入と支出」を見ていきました。家計全体の大きなバランスを見るために、貸借対照表(BS)があることを知ったと思います。

今使えるお金=「純資産」を決める収入と支出


貸借対照表(BS)は、現時点でどのくらいのお金を持っているのかと、どのくらい借金があるのかを知るための指標です。相談者の場合、資産(家)から、負債(住宅ローン)を差し引くことで純資産が測れます。

純資産は、あなたの負債(ローン、請求書など)を支払いした後に残った資産のことです。しかしながら、自宅は多くの場合、借金に覆われた「負債のかたまり」であることに気づかなくてはなりません。購入した自宅はそれ自体がお金を生まないどころか、お金を借りるための担保にしかならないのです。価値がある家ならば、リバースモーゲージによって自宅に住みながら融資を受けるなどの方法でお金を工面できますが、それでも最後は家を差し出して終了です。そして、売れない持ち家であれば、価値のない資産として考えないといけません。

基本、自分の家と自家用車は、価値がないものだと思ってください。両者とも、売却して初めて価値が発生します。相談者が「家を手に入れて、これで私も一人前だ」と語ったように、人は成功するために働いてお金を稼ぎ、成功するために家を買いたくなるものです。しかし、家を買うことが、場合によっては自ら墓穴を掘ることにもなりかねない事態にもなりますので、慎重に検討したいものです。

トラリピインタビュー

使えるお金を増やすために、資産と負債の関係を学ぶ

貸借対照表の「負債」が大きくなるとお金が減るだけ

収入として入ってくるお金と、支出として出ていくお金の流れは極めて大事です。これを「キャッシュフロー」と言うのですが、キャッシュフローは良くも悪くも、貸借対照表と損益計算書に関連してきます。

「キャッシュフロー表」から考えるお金の優先順位

入ってくる収入を、そのまま借金の返済だけに充てるようなキャッシュフローを作れば、お金は減るだけになります。大半の方はどうやってお金を増やすか四苦八苦していますが、そんな現状を把握していないまま、「友人が家を建てたから私も……」ということで、家や車など大きな買い物をするのは本末転倒です。大きな買い物をする前に、「今のお金をどうしたら維持できるか?」から考えなければいけません。

そのためには支出を抑え、無駄遣いを避けるのが鉄則です。これしかありません。使えるお金がどれだけあるかを考えずに、先に家や車を買ってしまえば、ただ借金して負債を増やし続けていくだけになります。
私は、持ち家の相談の際には、できれば頭金をある程度準備して中古住宅の購入を勧め、特に子どもさんもいる家庭では夫婦共働きで収入増を目指すことをお勧めしています。少しでも預金をして蓄えておくことが基本です。

「資産」から不労所得を生み出し、「収入」を増やす

お金を増やす手立ては、キャッシュフローを貸借対照表の「資産」から、損益計算書の「収入」にいかに持ってこられるかに鍵があります。貸借対照表の「負債」のキャッシュフローは損益計算書の「支出」となり、お金が出ていってしまいます。
お金を増やしている人は「資産」を増やしています。でも大半の方は、「資産」だと思っている家などを買い、実際には大きな「負債」を手にしている。サラリーマンのキャッシュフローは、大半が仕事で収入を得て、そのまま税金、衣食住、娯楽のために払うのが一般的で、支出の見直しもできていません。そして、これからお金を増やしていくための「資産」を所有していません。

お金を増やすことができた人は、有価証券や貸せる不動産などを所有して、そこから得られるお金を収入にプラスすることで、「資産」から不労所得を生み出しています。負債があるとすれば、貸せる不動産などを手に入れるための借金ですが、借入金利は経費として処理するなど、税金対策もできます。そうした積み重ねがさらに「資産」を増やすことになり、「資産」がさらなる「収入」を生み出します。
要するに、「理解して行動できている人はどんどんお金が増えて、理解もできずに行動もできない人はどんどん苦しくなる」となります。

子どもの進学をきっかけに始める現物不動産投資

このように、家計における貸借対照表(資産と負債)と損益計算書(収入と支出)を見ながら、「資産」を増やして「収入」に移行するキャッシュフローを作れるかどうかで、将来の経済的自由を得られるかどうかが決まってくると思います。

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