2024年7月3日の日本経済新聞朝刊に、新発10年物国債の「表面利率」が1.1%と、2011年12月以来の高水準になったという記事が載っていました。
この記事では、「新窓販国債」と「個人向け国債」のそれぞれの特徴や違いについて説明します。株式に比べて安定した運用が期待できる国債への投資に興味ある方は、ご一読ください。
- 新窓販国債は5万円単位で購入でき、いつでも時価で売却できる
- 個人向け国債は変動金利型もある。発行後1年は原則として換金できない
- 選ぶポイントは利率、元本割れリスク、換金性の3つ。固定金利・変動金利も要検討
債券の「表面利率」とは
個人向け国債や新窓販国債、あるいは証券会社で販売している社債などの債券(利付債)には、「表面利率」が設定されています。
表面利率は、利子を計算する時に使う利率です。
利子の計算式は、「表面利率×額面金額=利子」です。
たとえば、国債の額面金額が5万円、表面利率1.1%の場合、年間の利子(税引前)は550円(5万円×1.1%)です。固定金利の10年物国債は、表面利率が10年間一定なので、満期まで保有すると5,500円(税引前)の利子と、額面金額5万円が受け取れます。
新窓販国債の概要
個人向けの国債には、「個人向け国債」と「新窓販国債」の2種類があります。いずれも銀行や証券会社、信用金庫など幅広い金融機関で取り扱っています。
新窓販国債は、「新型窓口販売方式」で販売される国債です。種類は「10年固定利付国債」「5年固定利付国債」「2年固定利付国債」の3つです。年数は、それぞれの満期までの期間になります。
購入単位は、最低5万円から5万円単位で、1申込上限は3億円です。個人以外でも、法人やマンション管理組合などの団体も購入することができます。
新窓販国債の販売価格や利率は、発行ごとに財務省が決め、発行は毎月行われます。
また、満期を待たずに中途換金も可能ですが、市場での売却になるため、その時の時価での売却になります。そのため、時価が購入時の価格を上回れば売却益が発生し、下回れば売却損が発生します。
個人向け国債の概要
個人向け国債は、名称が示すように個人のみ購入可能な国債です。種類は「変動金利型10年満期」「固定金利型5年満期」「固定金利型3年満期」の3つになります。固定金利型のみの新窓販国債と違い、変動金利型がある点が個人向け国債の特徴の1つです。
また、期間についても、個人向け国債は最も短いものが3年、新窓販国債では2年という違いがあります。
購入単位は、1万円から1万円単位で購入でき、1申込の上限はありません。
個人向け国債は額面金額で発行され、中途換金でも額面金額で売却できますので、元本割れリスクはありません。ただし、発行後1年は原則、換金不可です。また中途換金した場合、直前2回分の利子(税引後)が差し引かれます。
発行時の適用利率は、固定金利3年が基準金利(下記参照)から0.03%を引いた利率になります。固定金利5年は、0.05%を引いた利率になります。変動金利10年は、基準金利に0.66を掛けた利率になり、半年ごとに、その時点の基準金利をもとに算出します。
個人向け国債の適用利率
固定金利型3年満期……基準金利-0.03% *1
固定金利型5年満期……基準金利-0.05% *2
変動金利型10年満期……基準金利×0.66 *3
また、個人向け国債は、3年、5年、10年とも最低利率が0.05%に設定されています。
※基準金利について
*1:市場実勢利回りを基に計算した期間3年の固定利付国債の想定利回り。
*2:市場実勢利回りを基に計算した期間5年の固定利付国債の想定利回り。
*3:10年固定利付国債の入札のおける平均落札価格を基に計算される複利利回り。
(参考:財務省「個人向け国債についてよくある質問」)
新窓販国債と個人向け国債、選択のポイント
ここでは、「新窓販国債」と「個人向け国債」のどちらかを選ぶ際のポイントについて見ていきます。
新窓販国債 | 個人向け国債 | |
---|---|---|
購入対象者 | 個人・法人・団体 | 個人のみ |
取扱金融機関数 | 579 | 898 |
期間 | 2年、5年、10年 | 3年、5年、10年 |
発行頻度 | 毎月 | 毎月 |
金利タイプ | 固定金利 | 固定金利(3年、5年) 変動金利(10年) |
利率 | 財務省が決定 個人向け国債に比べて高い傾向 |
3年:基準金利-0.03% 5年:基準金利-0.05% 10年:基準金利×0.66 |
販売価格 | 財務省が決定 | 額面金額 |
購入単位 | 5万円から5万円単位 | 1万円から1万円単位 |
中途換金 | いつでも可 時価で換金 |
原則、発行後1年間は不可 額面金額で換金 |
最低金利保証 | なし | 0.05% |
NISA | 対象外 | 対象外 |
主なリスク | 信用リスク、価格変動リスク (元本割れリスクあり) |
信用リスク |
固定金利型の債券を選ぶ際は、①利率、②元本割れリスク、③換金性の3つがポイントになります。また、個人向け国債の「変動金利型10年満期」のみ変動金利となっており、固定金利の国債とは仕組みが異なります。④固定金利か、変動金利かを選ぶのも重要なポイントです。
① 利率
利率に関しては、新窓販国債の方が個人向け国債に比べて高い傾向があります。
ただし、個人向け国債は、0.05%の最低金利保証があります。
② 元本割れリスク
元本割れリスクは、新窓販国債では、中途換金した場合に時価での売却になるため元本割れリスクがあります。ただし、満期まで保有すれば額面金額で受け取れるため、元本割れリスクを回避することができます。
個人向け国債は、中途換金でも元本割れリスクはありません。
③ 換金性
換金性に関しては、新窓販国債がいつでも換金可能なのに対して、個人向け国債は、発行後1年間は原則、換金できません。
④ 固定金利か、変動金利か
10年満期の国債を選ぶ場合は、固定金利(新窓販国債)と変動金利(個人向け国債)の違いがあるので、選択が難しくなります。
今後、世の中の金利が上昇すると予想される場合は、半年ごとに金利を見直す変動金利型が選択肢になります。逆に下降が予想される場合は、固定金利型が選択肢になります。
ただし、個人向け国債の「変動金利型10年満期」の利率は、基準金利×0.66で計算されるため、10年間の金利上昇が小さい場合は、固定金利型の方が受け取れる利子が大きくなる可能性もあります。
また、満期までの収益がどれだけになるかを購入時に確定させたい方は、固定金利型が選択肢になります。変動金利型は、半年ごとに受け取る利息が変わるため、満期までの収益を計算できません。
まとめ
「金利のない世界」から「金利のある世界」になり、国債の選び方も段々とむずかしくなってきています。
新窓販国債と個人向け国債の特徴や注意点を押さえて、自分の投資スタイルやリスク許容度に合った商品を選ぶようにしましょう。