宮崎県延岡市で保険業や資産運用のアドバイスに携わる小田初光さんが、地方で暮らす生活者のリアルな視点で、お金に関するさまざまな疑問に答えます。今回は、ここ数年人気を集めている「テーマ型」の投資信託について、その特徴や使い方を考えていきます。

  • ESG型の投資信託は、投資先企業の「業種別構成比率」に注目
  • 「ロボット関連」などのテーマ型投資信託は運用期間の設定が大切
  • テーマ型の投資信託は手数料が比較的高い傾向

18年前に買ったテーマ型が「当たり」

前回(第9回)は、読者の皆さんが投資信託を購入するにあたって、世間の関心が高い「分配金」にスポットを当てて、主に「毎月分配型」の特性について話をしていきました。
投資信託の分配金が支払われる回数は、商品によってさまざまです。投資信託決算日は年1回なのか2回なのか、それとも毎月なのか? 分配金の支払われ方で、投資期間を長く取るのか短く取るのか、運用方法も変わってきます。

毎月分配型の投資信託に限らず、投資するときは商品の特性を理解してから購入しなければ、後悔することになります
さて、今回は毎月分配型と並んで関心が高まっている「テーマ型」の投資信託に切り込んでいきましょう。

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【質問】
ロボット関連に特化した投資信託を勧められています。先のことを考えて、未来に期待できる投資もいいかなって思い購入しようと考えていますが、少子高齢化による人口減少を考えると、介護関連の投資にも興味があります。投資信託は、テーマを決めて買っても大丈夫なものなのでしょうか?

テーマ型の投資信託は、私自身も18年保有しています。
きっかけは、ネーミングでした。商品の愛称が気に入ったのと、パンフレットがかわいかったので購入しただけのことでした。今思えば、まんまとひっかかったのです(笑)。

後にわかったのですが、私が購入した投資信託は、環境問題に積極的に取り組む日本の上場企業に投資する「エコファンド」と呼ばれる商品だったのです。途中で売ったりせず長期投資を続けた結果、しっかりと利益を得ています(年率換算すると6%近い利益です)。
ただ、私の場合は結果としてたまたま投資対象がよかっただけだと思っています。

風力発電
環境問題は重要な投資テーマとして、世界中の投資家からも注目されている

トラリピインタビュー

ESG型の投資信託は「業種別比率」にも注目

一般的に、仕事をするうえでは案件を絞って進めると結果が出やすいと言われています。いろいろな仕事にいっぺんに手を広げると、どれも中途半端になりがちです。
同じことが、特定のテーマに絞って投資するテーマ型の投資信託にもあてはまるかというと、そうではありません。テーマ型は「何に投資しているか」「どんな仕組みか」を理解することが特に大切です。投資対象を絞ったから結果が出やすいはずだ、という単純な話ではないのです。
テーマ型の投資信託を選ぶときは、中身をきっちりと吟味しましょう。

最近はたくさんの資産運用会社が、それぞれの特色を生かして、いろいろなテーマの投資信託を運用しています。
代表的なテーマに「ESG」があります。ESGの「E」は環境(温暖化対策など)、Sは社会(個人情報保護、人権尊重など)、Gは企業統治(法令遵守など)を表します。環境に問題に取り組む企業に投資するエコファンドも、ESGのひとつといえるでしょう。

ESGをテーマとする投資信託は、環境・社会・企業統治の3つの課題に積極的に取り組む企業にスポットを当てて投資をするのですが、それぞれの投資信託がどういう根拠に基づいて企業を選んでいるのか、そもそもESGに取り組む企業はそうでない企業と比べて本当に株価が上がりやすいのか、不透明なところがあるのは確かです。
最近では、ESGに取り組む企業を対象とした株価指数が開発され、それを元に投資信託の運用を行う運用会社も出てきています。ただ、現状のESG関連の株価指数は日経平均株価と比較的同じ値動きになっているようです。「ESGに取り組むのは大企業が中心だから当然」との声もあります。

私がエコファンドで良い結果を出せたのは、購入した投資信託の投資対象が日本株のみで、業種別構成比率(ポートフォリオ)のバランスが良く、長期にわたり運用できたことが理由だと思います。
ESGやエコファンドにもいろいろありますが、投資対象がどこの国の株式なのか、どのような業種の企業が多いのかなど、運用会社のホームページなどできちんと調べて、納得したうえで投資しましょう。

業種を絞ったテーマ型は運用期間に注意

テーマ型の投資信託には、「ロボット関連」や「高齢化社会」など、投資対象を詳細なテーマに絞った商品もあります。
設定されるテーマは今の時代に即したものが多く、それぞれの未来を予感しながら運用することになります。
当然ながら、投資対象になる企業も業種が集中する傾向があり、ロボット関連だと電気機器や情報・通信業の業種が中心になります。高齢化社会関連だとサービス業、情報・通信業などが投資対象として絞られます。
よって、業種バランスは片寄り、投資信託の価格は上下の変動が激しくなりやすいので、そこを踏まえたうえで投資を検討しましょう。

AIテクノロジー
AI(人工知能)も、テーマ型投資信託の人気テーマのひとつ

業種を絞ったテーマ型の投資信託には、運用期間が初めから決められているものがある点にも注意が必要かもしれません。
投資信託に「償還日」が設定されている場合、償還日時点の基準価額で運用は終了となり、利益あるなしに関わらず解約されて、投資信託は現金化されます。
ですから、償還日が設定された投資信託を保有する場合は、どこかのタイミングで解約すべきかを、償還日までに自分で確定させなければなりません。できれば「期限なし」を選んでおきたいものです。償還日は信託期間に記載されていますので、必ず確認しておきましょう。

また、投資信託の純資産総額が少ないと、償還日を迎える前に「繰上償還」が行われ、強制的に解約されてしまうかもしれません。一概には言えませんが、純資産総額が30億円を下回ると繰上償還のリスクが高まると考えられています。購入前に純資産総額も確認しておきましょう。

テーマ型の投資信託は手数料が高い傾向

テーマ型全般に言えることですが、販売手数料と運用管理費(信託報酬)が高めです。ノーロード(販売手数料がかからない)の商品が増えている現状を考えるとテーマ型は割高ですが、運用会社は銘柄選定など徹底したリサーチでポートフォリオを構築しているので、高いのは致し方無いのでしょうか。

結論ですが、テーマ型で長期投資をして結果を出したいのであれば、ESGのように投資対象の業種のバランスが取れた商品を選択するのが良いのではないでしょうか。
長期にこだわらないのであれば、個別のテーマ型を選択して、期間を決めて運用益を目指すという選択もいいのかと思います。
投資期間や目標に合った投資信託を、きちんと中身を調べたうえで選びましょう。

次回も「投資信託」の投資対象について考えていきましょう。

(次回は2月21日の更新を予定しています)

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