ビットコイン/円が史上最高値を更新し続け、2020年末には1ビットコイン=280万円を超えるなど、コロナ禍の中で上昇を続ける仮想通貨(暗号資産)。本連載では、仮想通貨の仕組みや特徴はもちろん、資産運用での活用法にいたるまで、わかりやすくお伝えします。最終回となる第5回は、仮想通貨の買い方や取引所の選び方について説明します。

Lesson 4 “値動きが激しい”ビットコインを資産運用に活用

【監修】
FXcoin 代表取締役社長 大西 知生

FXcoin 大西知生氏

慶應義塾大学経済学部卒業後、東京銀行へ入行。ドレスナー銀行、JPモルガン銀行、モルガン・スタンレー証券、ドイツ銀行グループを経て、2018年に仮想通貨取引所のFXcoinを設立。2017年まで東京外国為替市場委員会副議長、同Code of Conduct小委員会委員長に従事。『J-MONEY』誌において2008年、2011~13年、2017年にテクニカル分析ディーラー・ランキング第1位を獲得する。経済学博士。

暗号資産交換業者(取引所)で口座を開設する

ビットコインをはじめとする仮想通貨(暗号資産)を私たち一般人が買うときは、金融庁に登録された「暗号資産交換業者」を通じて取引することになります。ただし、この「暗号資産交換業者」とは法律上の呼び名で、通常は「仮想通貨取引所」、または単に「取引所」と呼ばれています。

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仮想通貨の取引を始める最初の手順は、仮想通貨取引所のホームページから口座開設の手続きを行うことです。

口座開設の手続きには、ネット証券やFX会社などと同じく本人確認書類が必要ですが、運転免許証やマイナンバーカードをスマートフォンで撮影した画像を送ることで、オンラインですべての手続きが完結する取引所も多いようです。口座開設が済み、口座に現金を入金すれば(もしくは銀行口座と連携すれば)、パソコンやスマホの取引画面で、いつでも仮想通貨を売買できます。株式やFXと違って、仮想通貨は土日でも24時間取引できるのが大きな特徴です。

ところで、インターネットで少し調べるだけでわかるように、日本にはたくさんの仮想通貨取引所があります。この中からどれか1社を選ぶのはたいへんですが、以下の基準で取引所を比べてみるといいでしょう。

暗号資産交換業者(取引所)を選ぶポイント
(1) コスト(取引手数料、スプレッドなど)
(2) 取り扱う仮想通貨の種類
(3) 取引画面やアプリの使いやすさ
(4) 会社および運営体制の信頼性

取引所ごとの「スプレッド」の差に注意

仮想通貨に限らず、金融商品を取引する際にやはり気になるのが取引コストです。仮想通貨の主なコストは「取引手数料」と「スプレッド」です。

取引手数料は、仮想通貨を売るときと買うときに取引所に支払うお金です。取引金額の0.01~0.2%程度に設定されていることが多いようです。取引手数料を無料にしている取引所もあります。

スプレッドとは、取引所が提示する買値と売値の差のことです。外貨預金やFXと同じように、仮想通貨には2つの価格があり、買値の方が売値よりやや高くなっています。この差額が取引所の利益になるというわけです。当然スプレッドが小さければ小さいほど、投資家にとってはより安く買えて、より高く売れるので有利になります。

このほかにも、仮想通貨を日本円に交換する際の手数料などがあります。手数料の詳細は、各取引所のホームページで確認できます。

取引所が増え、取引所同士の競争が促進されているものの、ビットコインのスプレッドは1ビットコイン当たり数千円から数万円と、取引所によって大きな違いがあります。スプレッドの差は取引のコストに直結するので注意が必要です。

仮想通貨の種類に加えて「通貨ペア」にも注目

取引所によって、取り扱う仮想通貨の種類は異なります。最も多く流通しているビットコインはどの取引所でも扱っていますが、それ以外の仮想通貨の取り扱いはまちまちです。イーサリアム、XRP、ビットコインキャッシュ、ライトコインは多くの取引所で扱われていますが、それ以外の仮想通貨を取引したい場合は、取引可能な取引所はかなり絞られそうです。

仮想通貨の取引に慣れた方なら、「仮想通貨で仮想通貨を買う」、たとえば「ビットコインでXRPを買う」といった取引ができるかどうかも、取引所を選ぶ基準になりえます。FXで言うところの「通貨ペア」にも注目してみましょう。

取引画面の機能や使いやすさは、取引所によって差が出るところかもしれません。操作がわかりやすいか、価格のチャートなどの情報が見やすいか……。今では多くの方がスマホのアプリを通じて取引すると思われるので、アプリの使い勝手がどうなのか、可能なら事前にデモ機能を使ってみるなどして調べておくといいでしょう。

スマホで投資
仮想通貨の売買をするときにはスマホでの操作性や、欲しい情報にストレスなくアクセスできるかどうかは重要

「金融に強い取引所」なら非常時でも安心

仮想通貨はよく「フィンテック」の一例として語られます。フィンテック(FinTech)とは、金融(Finance)とテクノロジー(Technology)を合わせた造語です。仮想通貨の話になると、どうしてもブロックチェーン技術やハッシュがどうのこうのといったテクノロジーにばかり目が行きがちですが、仮想通貨も金融商品のひとつなので、「金融」という側面から取引所を見ることも重要です。

2008年に、アメリカの大手金融機関リーマン・ブラザーズが破たんして、金融市場が大混乱したことがありました。世に言うリーマン・ショックです。世界中の投資家がいっせいに株式や通貨などを売りに走ったために、為替取引を仲介する金融機関が適切な為替レートを提示できず、金融市場の混乱がさらに進むという悪循環に陥りました。そうした状況でも、為替レートを提示して為替取引を成立させ、金融市場の正常化に道筋をつけた金融機関もありました。

今後またリーマン・ショックのようなことが起きたときに、ビットコインなどの仮想通貨の取引が一時的に止まってしまったらたいへんです。投資家はビットコインを売りたいときに売れず、想定以上の損失が発生してしまうかもしれません。取引所には、非常時でも取引を止めず、交換レートを提示し続ける力が求められます。その力はテクノロジー以上に、金融市場で培ってきた知識や経験がものを言います。取引所を運営する人が、金融業界で豊富な経験と実績を持つ人であれば、いざという場面でも安心できそうです。

ビットコインなどの仮想通貨は高騰を続けていますが、もし新型コロナウイルスのワクチンが普及して世界経済が正常化に向かえば、今までビットコインに向かっていたお金が日本円や米ドルなどの法定通貨に戻る動きが強まり、短期的に価格が大きく動くこともないとは限りません。不測の事態が起きても安心して取引できることが、もしかしたら取引コストより大切な要素になるかもしれません。

大西知生氏大西さんのひとこと
私は1992年の欧州通貨危機、2008年のリーマン・ショック、そして2015年のスイスフラン・ショックなど、為替ディーラーとして良くも悪くも貴重な経験をしました。法定通貨の世界は、これらの危機を乗り越えながら健全な市場環境が作られてきましたが、仮想通貨(暗号資産)の市場はまだまだ発展途上です。
FXcoinは「暗号資産(仮想通貨)市場の健全な発展と拡大」「日本人の金融リテラシーの向上」を企業理念としています。私のこれまでの経験を生かして、仮想通貨市場全体が皆さまに信頼されるように、これからも力を尽くしていきたいと考えています。

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