宮崎県延岡市で保険業や資産運用のアドバイスに携わる小田初光さんが、地方で暮らす生活者のリアルな視点で、お金に関するさまざまな疑問に答えます。今回は、お金を貯めたり資産運用をしたりする前に作る「キャッシュフロー表」をもとに、お金の優先順位の付け方について考えます。

  • 「キャッシュフロー表」で自分の将来を知ることから始める
  • 将来のお金の収支が漠然とわかることで危機感が生まれる
  • お金の優先順位は生命保険が先。そのあとでiDeCoやNISAなどを考える

キャッシュフロー表でお金の計画を立てる

【質問】
27歳になる社会人です。結婚も決まり、これから夢のような幸せをつかむと思いきや、子どもは? 生命保険は? 家は? 貯金は? と、結婚後はお金がかかる話ばかりで、はなはだ困っています。自分自身の人生設計はちゃんと考えといた方がいいのでしょうか?
何を優先して準備すればいいのか? アドバイスがほしいです。

前回までは「なぜお金を貯めた方がいいのか?」について、経済動向を踏まえながら、投資信託を中心にして考えてきました。現状の経済状況から、「お金を回して貯める方法」が少しでも理解できたかと思います。

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インフレや増税に備える「お金を貯める大切さ」

しかしながら、お金を貯めるための方法は、株式投資や投資信託だけではありません。今回の相談者のように、お金がかかる場所がいろいろあると、「お金の回し先」を優先順位をつけながら考えていく必要性に迫られます。私のように子育ても終わり、老後生活を考えていかなければならない世代は、投資による運用が重要視されるでしょうが、20歳代ともなると、そう簡単に済まされません。お金の使途はさまざまなので、選択をしなければなりません。投資とか運用とか言っていられない状況も出てくるでしょう。

特に結婚などは、人生の分岐点にもなり、家族を含めたお金の運用を考える必要があります。難しいかもしれませんが、未来の子供のことまで今のうちから考えていけたらベストです。

私も偉そうなことを言っていますが、実際に考え始めたのは長男の大学進学がきっかけで、40歳前半のことだったので大変でした。
ファイナンシャルプランナーなどのお金の専門家が資産運用のアドバイスに使っている「キャッシュフロー表」は、現状から未来を予測しながらお金の計画を立てられるので、たいへん便利です。

キャッシュフロー表は、出産や住宅の購入といった家族のイベントと照らし合わせながら、収入と支出の予測を立てるために作るものです。収入と支出の差から貯蓄の差益を見ることができ、将来の赤字もしくは黒字を予測できるので、使わない手はありません。
私は常に20年先までの予測(年金も加味)しながら、毎年の年末に「実際はどうなのか?」を確認して、次の年に投資できる金額の参考にしています。

トラリピインタビュー

私のように子供3人ともなればなおさら、これから使えるお金の金額を把握しておかなければ何もできませんし、「何にお金を使うか?」という優先順位どころではないのです。そして、最終的には自分の老後生活のお金を貯めることが、運用の絶対条件になることを忘れないでください。

子どもが進学する時期は赤字。数字を見れば危機感が生まれる

これからお金の運用について考えようと思っても、たくさんの金融機関や保険ショップ、ファイナンシャルプランナーなどのお金のプロが集まっている都市部と違って、地方ほど、お金について相談できる人が少ないという現実があります。どうすればいいのでしょうか?

1つの参考として、お手持ちの携帯やPCなどで「キャッシュフロー表」で検索をかけてください。ダウンロードできるものが数多くありますので、自分でもできそうなものを使って、自分仕様にすればいいだけです。自分のキャッシュフロー表を作れば間違いなく将来が見えてきます。「できない」ではなく、一度やってみてください。まずは自身を知ることから、お金の運用は始まります。
手始めに、これから1年間の行動を探って、支出と収入の記入にチャレンジしてみます。慣れてきたら、未来の長期計画表を作ってみるといいでしょう。

キャッシュフロー表を検索
たとえばグーグルで「キャッシュフロー表」の画像検索をすると、たくさんのキャッシュフロー表の事例が表示される

近年は独身でも、増税により可処分所得(使えるお金)が減る傾向や、年金を受給できるスタートが遅くなることなどで、キャッシュフロー表は必要になっています。また、すでに子どもがいる方や、これから子どもが産まれることを予定している方は、子どもが進学する時期になるとたいていは赤字となります。事前にキャッシュフロー表を作っておけば、実際に子どもが大きくなる前にお金を貯める意義がわかってきます。
教育資金は、子どもがおぎゃ~と誕生してから大学を出るまで必要なので、お金が必要になるまでいかに預金残高を増やすかが重要です。

もちろん子どもが成長する過程で、「持ち家か? 貸家がいいか?」という議論のタイミングも生まれてくるでしょう。そして、老後の生活資金まで考えると、「何歳まで働くべきか、働かないといけないのか?」というところまで、今から漠然と見えてきます。この「漠然」が大事です。漠然であっても、先のことがわかれば必然的に行動できるようになります。危機感を持つことが大切です。

お金の優先順位、まず考えたいのは生命保険

さて、今回の相談者の質問にもあったお金の「優先順位」ですが、若い世代の方は、ここから私が思う順位を参考にしていただければと思います。

相談者が結婚を機に人生設計を考えたように、独身者でも早い時期にプランを立てることは重要です。iDeCo、NISAにしても、今後の支出によってはいくら投資できるかはわかりません。ただ、生命保険は万が一の事態に備える必要がありますので、優先順位は最初に来ます。医療保険は、高額所得者は別としても一般的には必要ですし、結婚している方ともなると、死亡保険の選択肢も出てきます。死亡保険にも貯蓄型がありますので、死亡保険と、教育資金や老後資金の積み立ての一石二鳥で考えてみるなどするといいかもしれません。

貯蓄型の生命保険のパターンとして、大まかに次の3通りがあります。

  • 終身保険(有期払い)
  • 養老保険(有期型)
  • 個人年金保険

貯蓄型の多くは、将来お金が必要になったときに解約し、教育資金や家の改築などに返戻金を充てるという使い方がなされているようです。ただ、中途解約は元本割れの可能性もついて回りますので、あくまで死亡保険であるという自覚が必要です。

近年は、上記の3つの商品に加えて①変額保険(有期型)、②外貨建て終身保険、③外貨建て個人年金保険と、金融商品や為替の価格変動リスクをとりながら資産形成を目指す貯蓄型保険も販売されています。特に変額保険の有期型は特別勘定(国内や海外の株式や債券などにより運用されるファンド)により資産運用を行い、その運用実績によって満期時の保険金額が増減する保険になります。10年未満での解約は違約金が発生するなど、運用コストがかかる点も注意が必要です。

保険ではない資産運用のみの金融商品もあわせて比較してみると、

①NISA(短中期の資産運用)
②つみたてNISA(中長期の資産運用)
③iDeCo(長期の年金運用)
④変額保険(保障を備えた長期運用)

の4つが選択肢になります。
この中で唯一、④変額保険のみ投資限度額や期間が自分で決められ、死亡保険も付いています。変額保険の保険料は終身保険などと比べると割安で、保険料は自分で設定でき、必要に応じて死亡保険を厚くすることが可能となります。

変額保険は死亡や障害などの保障もあって、なおかつ長期投資もできるとなれば、若いうちに変額保険に加入しながら、キャッシュフロー表で収支に余裕がありそうだったら③iDeCo、②つみたてNISA、①NISAと順次考えればいいと思います。

このように、これからお金を貯めていくためには、キャッシュフロー表を確認しながら未来を予測し、不測の事態にも対応することが必要不可欠です。特に持ち家を購入するなど、大きな出費があれば資産運用全体の見直しを余儀なくされることにもなりますし、一時的な教育資金の拠出も考えなければなりませんので、その場合はキャッシュフロー表を作り直して、今の運用でいいかどうかを再確認してください。

若いうちから、「人生100年時代」を生き抜く知恵を磨いていってくださいね。何事も自身を知ることから始まります。

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