現役証券アナリストの佐々木達也さんが、株式市場で注目度が高い銘柄の強みや業績、将来性を解説する本連載。第10回は、コンタクトやメガネレンズ、内視鏡、半導体用の回路形成用のマスク基板などを手掛けるHOYA(7741)を取り上げます。
- 事業の多角化と技術開発を進め、現在の事業の基盤は「ガラス」から「光」に
- 半導体製造に使われるフォトマスクとマスクブランクスの拡販が進んでいる
- 2021年4〜9月期決算は大幅増収増益、好調な事業環境が続きそう
HOYAはどんな会社?
HOYAはコンタクトやメガネレンズ、内視鏡、半導体用の回路形成用のマスク基板などを手掛ける精密機器メーカーです。
1941年(昭和16年)に光学レンズメーカーとして創業し、東京都保谷市(現在は西東京市)に設立されたことが社名の由来となっています。当初はクリスタルガラス食器の製造からスタートしました。その後はメガネ用光学レンズやコンタクトレンズなどを手掛けるようになっていきます。コンタクトレンズの専門店「アイシティ」は国内でも最大級の出店規模で馴染みのある方も多いのではないでしょうか? メガネレンズは世界シェアで第2位、コンタクトレンズの小売では世界シェアトップと海外でも事業規模を広げています。
その後も事業の多角化と技術開発を進めて現在の事業の基盤は「ガラス」から「光」に移り変わっています。データを記憶するハードディスクの原材料基板や半導体の回路設計に使われるフォトマスクなどの産業用途、内視鏡や白内障向け眼内レンズなどのメディカル用途などでHOYAの技術を生かした製品が用いられています。
HOYAの強みは?
近年の業績を牽引しているのはエレクトロニクス部門です。中でも半導体製造に使われるフォトマスクとマスクブランクスの拡販が進んでいます。最近では露光装置と呼ぶ極細の紫外線などのビームにより描画する方法が主流となっています。半導体の回路は10億分の1メートルに相当するナノレベルの超精細で複雑な回路です。このフォトマスクに描かれたカイロパターンに光を当て半導体の回路を転写します。マスクブランクスはガラス基板の表面に複数の化学的に形成された膜が積層されたもので、フォトマスクの原板です。
データや画像などを演算するCPUやGPUは「微細化」と呼ばれる回路の線幅を短くして、流れる電流を小さくしより複雑な回路を形成して演算性能を向上される技術開発が進んでいます。そのためフォトマスクやマスクブランクスも旧来より精巧な製造技術が用いられており需要も急激に伸びています。
HOYAはマスクブランクスでは世界シェアトップです。これまでに様々な種類の工学ガラス製品を手がけてきた知見による原料のレシピや組み合わせなどの組成技術、ダイヤモンドや特殊研磨剤を用いて1000分の1ミリメートルのレベルまで磨き上げ平坦にする研磨技術などを生かした製品加工がシェア拡大を支えています。
HOYAの業績や株価は?
HOYAの2021年4〜9月期は売上収益が前年同期比28%増の3206億円、税引き前利益が46%増の1050億円と大幅増収増益となりました。メガネレンズやコンタクトレンズなどのライフケア部門、半導体用マスクブランクス、ハードディスク用のガラス原板などの情報通信部門などいずれも堅調に推移しました。
2022年3月期についても売上収益は前期比17%増と大幅増収を見込んでいます。税引き前利益などの利益項目は予想を開示していませんが、好調な事業環境は当面続きそうです。
12月24日の終値は17,095円で、投資単位は100株単位となり、最低投資金額は約171万円です。ここ数年来は業績拡大への期待が株価を押し上げ、最低投資金額も増えてきています。流動性確保や個人投資家の取引のしやすさのため株式分割の可能性もありそうです。半導体などの需要拡大や技術開発などに欠かせない高シェアの製品の優位性は当面続くとみられ、成長期待が継続しそうです。