「預金なら安心」って本当なの? 「元本保証」って、実際に何を保障してくれるの? 実は、現金にもリスクが潜んでいるのです。本連載ではそんな「現金のリスク」を切り口に、お金のほんとうの価値を守るための資産運用について考えていきます。今回は、このところ荒れ気味の株式市場の中で、大泉さんが「ある銘柄」に注目したお話です。
- 日米の株価が下落する中で、『福岡リート投資法人』の投資口価格も下落
- 調べてみると、自己資本比率が思いのほか高かった福岡リート
- 価格が下がったところでREITを買い増し。コロナ後のインバウンドに期待
東京の冬、毎年のことですが。どこまでもどこまでも澄み切った青色の美しさに心震わせています、寒さとともに。
ところで、順調な年明けかと思いきや、1月も半ばになるとアメリカも日本も、ともに株式市場が大荒れに荒れましたね。
アメリカでは物価の上昇をコントロールするために、いわゆる利上げが現実味を帯びたから、相場が荒れたようです。日本の株式はアメリカに引きずられた格好ですね。
ところでアメリカほどでないにせよ、日本も物価が上がっていますが、日本の利上げはないようですね。海外と日本との物価の差が開いている、つまり日本がますます「安く」なっているようです。
さて、こんな荒れ相場の時、皆さん、何を思い、どのような決断をして、行動に移しますか?
昨年の11月に書いた『福岡リート』
昨年の11月に本稿で、筆者が保有する『福岡リート投資法人』について書かせていただきました。その福岡リートが、1月20日のことですが、投資口価格(=株価)が、終値で153,400円を付けました。年明け1月4日には高値で168,900円を付けていました。年明け以来、わずか2週間ほどで、およそ9.2%、福岡リートが下落したことになります。
投資口価格の下落幅もさることながら、その時間の速さにも驚きでしたが、皆さんは、どのように思われますか?
福岡リートとは関係のない情報ではありますが
☆ヒルトン沖縄宮古島リゾート 2023年開業に向け着工
☆ダブルツリーbyヒルトン大阪城 2024年春開業
☆ヒルトン横浜 2023年秋開業
いずれも福岡リートとは全く関係のない、有名なアメリカのホテルチェーン、ヒルトンに関する情報です。この情報から皆さん、何を想像されますか?
ヒルトンが日本国内に積極的に進出するようですね。その進出先は沖縄・宮古島など、いずれも外国人に関心が高そうな場所です。つまり、コロナ禍収束後のインバウンド(=外国人の訪日観光客)を見据えてのことと推察できます。
コロナ禍で行われた東京オリンピックで注目されたのは、日本の「安さ」です。その「安さ」ゆえに、コロナ禍収束後のインバウンド需要の高さが見込まれます。
そして、福岡リートが投資の主たる対象としている福岡には、新幹線の停まる博多駅から、わずか2駅の場所に博多空港があります。福岡の地理的な優位性は昨年の11月に書かせていただいた通りです。この福岡の地理的な優位性はインバウンドにも有利だと考えました。
福岡リートも、コロナ禍収束後のインバウンドに期待できると推測しました。
意外と高かった? 自己資本比率
REITは「利益を全て分配に充てるので、自己資本比率が低いのでは」と以前に書かせていただきました。では、福岡リートの場合はいかがでしょうか?
福岡リートに限らず、REITはYahoo!ファイナンスなどに載っている情報が限られています。決算情報や、PERもPBRも載っていません。そこで、福岡リートの公式サイトから決算資料を見ることにしました。
第33期 (2021年2月末) |
第34期 (2021年8月末) |
|
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①負債合計 | 97,944 | 98,049 |
②投資主資本 (③+④) |
101,614 | 101,755 |
③出資総額 | 98,938 | 98,938 |
④剰余金合計 | 2,675 | 2,817 |
⑤負債純資産合計 (①+②) |
199,559 | 199,804 |
第34期(2021年8月末)の貸借対照表を見ると、⑤負債純資産合計が199,804百万円なのに対し、②投資主資本=純資産は101,755百万円です。純資産を負債純資産で割ると約51%です。つまり自己資本比率が51%と考えられます。意外と高い自己資本比率なのではないでしょうか?
なるほど、④剰余金の額(2,817百万円)は確かに少ないのですが、①負債の額(98,049百万円)よりも②投資主資本の額(101,755百万円)の方が、やや多いくらいです。
堅実と申しますか、無茶な金額の借り入れをしていないようですね。
分配金額を見て、買い増しを決断
最終的な決め手は分配金の額でした。決算期末で3,500円の分配予想額です。REITの決算は半年を1期としているので、年間では7,000円の分配金額になります。1月21日に、福岡リートを買うため、オンライン証券の入力を始めましたが、ここで気になったのが、指値にするか成行にするかと、1口(=1株)を買うか、2口(=2株)を買うかということでした。(ちなみにREITは1口から買えます)
確実に買うために「成行」としました。その代わりに、さらなる下落も無きにしもあらずと思い、1口のみ買い、もう1口分の予算はプールしておくことにしました。
1月21日に151,800円で買うことができました。1月28日の終値は161,400円ですから、6.3%ほど上がったことになります。
前回 | 197,700円 |
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今回 | 151,800円 |
損益分岐点 | 174,750円 |
1月28日終値 | 161,400円 |
実は、筆者が最初に福岡リートを買った時の投資口価格(=株価)は197,700円でした。今回の買い増しで、損益分岐点(=筆者が買った投資口価格の平均)は174,750円になりました。
今後、1年間で14,000円(1期3,500円の分配金×2期×2口……REITの1期は半年間)の分配金収入が期待できます。
コロナ禍の収束によるインバウンドの復活で、投資口価格が上昇するかもしれないと期待しつつ、分配金も当てにする、そんな考え方で福岡リートを買い増しした次第です。
もし、コロナ禍収束までに投資口価格が下がれば、先述の通り、もう1口(=1株)さらに買い増しをするつもりです。
「安い日本」の何に期待をするのか?
福岡リートへの投資を通じて思ったのは「安い日本の何に期待するのか?」ということです。
コロナ禍において、日本を含め、世界中で物価の上昇が加速しました。その物価をコントロールするために、アメリカでは金利を上げる(=利上げ)模様なのは、先述の通りです。そして金利を上げる国は他にもあるようですし、金融緩和を縮小する国もあるようです。しかし、日本は利上げも金融緩和も、どちらも行わないようです。
恐らくは日本の物価の上昇率がアメリカほど高くないからだと思われますが、いずれにせよコロナ禍で行われた東京オリンピックとともに注目を集めたのが、日本の物価と給料の安さです。日本の安さの何に期待ができるのか? その問いに対する答えの一つがインバウンドでしょう。コロナ禍収束後を見据えた投資を検討する時期に来たようです。あのヒルトンのように。
本稿では、福岡リートを例に挙げ、筆者の投資行動を書かせていただきました。
決して、読者の皆さまに福岡リートをお勧めしているわけではありません。どうぞ、ご自身の判断で投資を楽しんでくださいませ。