iDeCoは掛金が全額所得控除になるうえ、運用益も非課税となります。60歳まで原則引き出せないというデメリットはありますが、老後のための資産形成に適した制度といえるでしょう。そんなiDeCoで運用できる投資信託のひとつが「ターゲットイヤーファンド」です。本記事ではターゲットイヤーファンドの特徴や注意点を解説します。
- 運用方針を徐々に変えていくターゲットイヤーファンドはiDeCo向き
- アメリカの401kの多くはデフォルト商品がターゲットイヤーファンド
- ターゲットイヤーファンドはメンテナンスの必要がない分、信託報酬が高め
資産運用の「ゴール」を設定した投資信託
ターゲットイヤーファンドは、株式や債券など幅広い資産を投資対象とするバランス型の投資信託の一種です。一般的なバランス型ファンドと違って、ターゲットイヤーファンドはあらかじめ決められた時期(ターゲット)をゴールとして設定し、ゴールとなる年に向けて運用方針を変えていくという特徴があります。
ターゲットイヤーファンドには、ファンド名に「2030」や「2040」など年号を表す数字が入っています。この年号をターゲットとして運用が行われます。(例……りそなターゲット・イヤー・ファンド2030)
ターゲットイヤーファンドは、一般的に運用開始からしばらくはハイリスク・ハイリターンの株式の割合を高くして、値上がり益を重視した運用を行います。そしてゴールとなる時期が近づくにつれて、ローリスク・ローリターンの債券の配分を増やして、値動きの安定性を重視した運用に切り替えていきます。
このような運用をする理由は、ターゲットに設定した時期に株価が下落した場合でも、これまでの含み益を確保できる可能性が高まるからです。
老後資金を貯めるための制度であるiDeCoでは、ターゲットイヤーファンドは定年退職で年金が必要になる時期をターゲットとした商品を選べるため、有力な選択肢となるでしょう。ターゲットイヤーファンドは証券会社や銀行で特定口座などでも購入できますが、iDeCoなどで長期運用する方に向いている商品といえます。
アメリカの個人年金ではターゲットイヤーファンドが主流に
個人の資産運用が古くから根付いているアメリカでは、401kと呼ばれる個人年金でターゲットイヤーファンドを用いて運用している方が数多くいます。
日本のiDeCoや企業年金では、加入者が運用商品を選ばなかった場合の指定運用方法(デフォルト商品)が、定期預金などの元本保証型商品に設定されていることがほとんどです。一方、アメリカではターゲットイヤーファンドがデフォルト商品に設定されていることが多く、自分で商品を選ばなかった401kの加入者は自動的にターゲットイヤーファンドで運用することになります。
アメリカで20代~30代の若者が401kを利用する際、ターゲットイヤーファンドを利用することが多くなると、毎月安定的に株式市場に資金が流入することになります。個人投資家の長期投資の資金が市場へ定期的に流入することが、米国株式市場の長期的な成長の一因になっているといえるでしょう。
株式市場が安定的に成長を続ければ、さらなる投資資金を呼びやすくなるという好循環が生まれます。長期で見てみると、アメリカの株式市場は日本の株式市場よりも大きく成長しています。ターゲットイヤーファンドを通じて、個人にも株式投資が根付いている米国経済の強さがうかがえます。
ターゲットイヤーファンドの注意点は?
長期の資産運用では株式や債券など、さまざまな資産のバランスをとりながら運用することが大切で、市場の変化やライフステージに合わせた資産配分のメンテナンスが欠かせません。ターゲットイヤーファンドはゴールとなる時期を規準に資産配分が変わっていく仕組みなので、自分でメンテナンスをする必要がありません。
普段、仕事などが忙しい方は、iDeCoなどの運用のために多くの時間を割くのは難しいかもしれません。メンテナンスの必要がないターゲットイヤーファンドであれば、ほったらかしで運用できるため、多忙な方にとってのメリットは大きいでしょう。
ただし、ターゲットイヤーファンドにはデメリットもあります。ターゲットイヤーファンドを運用している運用会社にとっては、資産配分を変更するために株式や債券などの売買を行う必要があり、管理の手間がかかります。そのため、保有期間中の運用管理費用である信託報酬が一般的なバランス型ファンドよりも高めに設定されていることが多く、信託報酬が運用利益を圧迫してしまう可能性があります。
また、ターゲットイヤーファンドはゴールとして設定した時期に向けて徐々に株式の割合を減らしていく仕組みのため、ゴールの時期に株価が上昇した場合は、その恩恵を受けられません。ターゲットイヤーには自分の退職時期など、自分のライフプランや年齢を基に選ぶことになりますが、市場が自分のライフプランに合わせてくれることはありません。場合によっては、一般的なバランス型ファンドより運用効率が悪くなる可能性もあることを知っておきましょう。