岸田政権が掲げる「資産所得倍増プラン」。そして「インベスト・イン・キシダ」の掛け声……。「貯蓄から投資へ」のスローガンは昔から叫ばれていますが、投資文化が根付いていない日本では、なかなか浸透しません。そんな中、なぜ岸田政権は改めて投資を促すのか、そしてなぜ国民が投資することが必要なのか、分かりやすくまとめました。

  • 岸田政権は「貯蓄から投資へ」を後押しするため「資産所得倍増プラン」を掲げる
  • 物価上昇で家計が苦しい中、資産を守る意味でも運用が不可欠な時代になった
  • 投資文化が日本に根付くかどうかがいま試されている

岸田政権の「資産所得倍増プラン」とは?

「眠り続けてきた預貯金をたたき起こし、市場を活性化するための仕事をしてもらう」――2022年5月5日にロンドンで行った講演で岸田総理はこう話し、「資産所得倍増プラン」を高らかに宣言、「インベスト・イン・キシダ(キシダに投資を)」と呼びかけました。日本に眠る1000兆円を超える現預金の一部を投資に回すことで、経済を活性化させるとともに、投資から得られる収益で国民の資産をふやすことが考え方の根本にあります。

さらに、6月7日には「経済財政運営と改革の基本方針」(骨太の方針)発表され、閣議決定されました。「資産所得倍増プラン」について、岸田総理は「複数年度にわたる具体的なプランを本年中に策定し実行する」と発言しています。

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岸田政権が掲げる「資産所得倍増プラン」とは、約1000兆円の個人貯蓄を含む、個人金融資産約2000兆円を貯蓄から投資に回すよう働きかけるものです。少額投資非課税制度(NISA)やiDeCo(個人型確定拠出年金)の拡充・改革などで実現を目指します。

こうした背景もあり、「貯蓄から投資へ」がいま改めて脚光を浴びている状況です。

資産倍増のイメージ
岸田政権が掲げる「資産所得倍増プラン」で、現預金は貯蓄から投資へ向かうか?

いまなぜ「貯蓄から投資へ」なのか

政府が「貯蓄から投資へ」を勧める理由は、個人金融資産が預貯金に滞留しているからです。日本には投資文化が浸透しておらず、これらの資金は、ただ眠っている状態といえます。岸田政権は、このお金を投資によって経済の現場へ回すことで、景気の活性化を実現しようとしているのです。

日本は20年以上、超低金利が続いています。この低金利環境下では、貯蓄だけで金融資産を大きく増やすことは不可能であり、多くの人が将来の資金計画に不安を感じています。

一方、投資先進国といわれる米国では、投資文化が個人にも根付いているといわれます。少し前の資料ですが、金融庁が米国・英国・日本の家計金融資産構成比を公表しています。家計金融資産に占める現金・預金の割合は、米国が13.7%、英国が24.4%なのに対し、日本は51.9%

一方、株式・投信の割合は、米国・英国・日本の順番で、45.4%、35.7%、18.8%です。いかに日本に投資が根付いていないかわかります。

各国の家計金融資産構成比
出所:金融庁「家計金融資産の現状分析」より

さて、岸田政権によって話題になった「貯蓄から投資へ」という言葉ですが、これは今に始まったことではなく、ずっと昔から言われてきました。2003年頃から金融庁が旗振りを始め、金融税制の緩和、NISA、iDeCoの開始など、個人投資家に有利な投資制度が段階的に整備されてきたのです。最近では、高校の家庭科のカリキュラムに「資産形成」がテーマとして取り入れられたのも記憶に新しいでしょう。

足元では、日本経済は物価上昇や円安にさらされ、非常に厳しい状況だと言わざるを得ません。つまり、資産を現金・預金で保有しているだけでは、物価上昇に追いつかず、目減りする環境に突入したということです。今後は資産を守るためにも、投資を検討すべきフェーズに入ったといえるでしょう。

資産保全のためにも投資が必要
物価上昇のいま、資産を守るためにも投資を検討すべきフェーズに入った

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投資を実践している人はどのくらいいるか?

それでは、日本人のどれくらいが投資による資産形成を実践しているのでしょうか。6月6日に発表されたJNNの世論調査によると「投資に回す貯蓄がない」という人が34%となっています。

また、別の内閣府が実施した調査によれば証券投資を「現在行っている」と答えた者の割合が9.8%、「以前行っていたが、現在は行っていない」と答えた者の割合が8.8%、「行った経験はない」と答えた者の割合が79.7%ともなっています。

内閣府 世論調査

現状を見れば、日本人が貯蓄から投資へ、米国並みにシフトするのは、まだまだ長い道のりになりそうです。その一方で「成長と分配の好循環」を掲げる岸田首相は、株式の譲渡益や配当金といった金融所得にかかる税金を強化する考えも捨てきれていないようです。分配の原資を確保するために、増税するというわけです。この点からも、岸田政権の金融政策に関する発言に一貫性がないといわれるのも、納得せざるを得ないところでしょう。

ただし、岸田政権がどのような動きをしようと、将来に向けた資産づくりのためには、自助努力が必要であり、その選択肢の一つとして、投資が必須なのは明確な明らかです。日本に投資文化が根付くかどうか、いま試されているのではないでしょうか。

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