金にはインカムゲインがない、つまり時間は味方にならない?
核戦争のリスクヘッジではなく、投資対象としての金で知っていただきたい点が、もう一つあります。
「金にはインカムゲインがない」という点です。不動産の家賃、株式の配当金と株主優待、そして債券や預金の利息に相当するインカムゲインが、金には全くないのです。
インカムゲインが全くないと言うことは、金には時間の経過とともに「インカムゲインが積み上がる」こともなく、時間の経過によって得ることができる「複利の効果」もありません。
例えば、債券の利息はそのままでは複利効果を生みませんが、筆者は外国債から得た利息を外貨建てMMFで運用しています。そして、外国債の満期(償還)時に帰ってくる額面(≒元本)と、外貨建てMMFで運用した利息を合わせて、次の外国債の購入に充てています。そうすることで、いくらかの「複利の効果」を得ることができます。金には利息がないので、そのような運用ができないのです。
そもそも、金は資源の一つにすぎません。株式を発行する企業のように、時間の経過とともに成長を見込めません。
つまり、金にとって時間は「味方」ではなく、単なる「浪費」にしか過ぎないのです。
金と株式、債券、不動産との、簡単な比較を以下にまとめてみました。
金(=ゴールド) | 国内株式 | 国内債券 | 国内不動産 | |
---|---|---|---|---|
価格変動 | あり | あり | あり | あり |
為替変動 | あり | なし | なし | なし |
インカムゲイン | なし | 配当金、優待 | 利息 | 家賃 |
満期 | なし | なし | あり | 無いが劣化する |
成長 | なし | あり | 影響なし | 周辺の再開発の恩恵 |
つまり、投資の対象としての金はインカムゲインもなく、成長もないため、価格変動(売却益)と為替変動(為替差益)の2つだけで勝負することになるのです。
核の炎に耐え得るかも知れない金も、投資対象として見るといかにハイリスクな投資なのかが、お分かりいただけましたでしょうか?
価格変動のある金を、為替変動のあるドルで積立投資していく「ドルコスト平均法」とは、ハイリスクな投資対象である金の2つのリスクを、時間の経過とともにならすことでハイリスクを抑えつつ、高値づかみを避けながら入手するというコンセプトなのです。
チャンスは最大限に生かす、それが私の主義だ(?)
勘の鋭い読者の方でしたら、すでにお気付きかもしれません。筆者は投資対象としての金がハイリスクであることを強調しています。では、そのハイリスクを強調することに、一体、何の意味があるのか?
ドルコスト平均法は、実はハイリスクな投資対象、つまり「価格の変動の幅が大きく、為替の影響を受ける投資対象」にこそ向くのです。
ということは?
今、日本だけでなく、世界中で株価が不安定で、乱高下していますよね。あるいは、数カ月前に比べると株価が落ち込んでいますよね。そして、「今のこの状況がいつまで続くか分からない」という不安と焦りに駆られていらっしゃる読者も多いのではないでしょうか?
「投資のリスク」をまざまざとお感じになられている方、このまま投資を続けても、積立投資をしていても「ピンチが続くだけではないのか?」と自問自答をなさっている方も多いと思います。
しかし、「ピンチはチャンス」とも言いますよね。
そして、あのセリフです。
「チャンスは最大限に生かす、それが私の主義だ」
そうです。積立投資をなさっていらっしゃる方にとって、実は今、「バーゲンセールの真っ只中」とも言えるのです。
積立投資の本来の目的は「損益分岐点の引き下げ」?
投資とは「安く買って、インカムゲインを得て、最後に高く売る」ことができれば成功ですし、それこそ投資のあるべき姿を体現していますよね? しかし、積立投資は違います。
積立投資とは「安く買う、安く買う、安く買う」のが、あるべき姿なのです。積立投資の目的は「損益分岐点の引き下げ」なのです。
どういうことなのでしょうか?
というわけで、次回は「見せてもらおうか!積立投資の実力とやらを~その2 積立投資の目的は損益分岐点の引き下げ」というテーマで、ドルコスト平均法の実力をさらに詳しく見ていきます。
投資の世界に「損益分岐点」という用語? これってどういう意味?
「積立投資を始めたのは、若さゆえの過ちだったかな?」とつぶやくことがないよう、次回をお待ちくださいませ。
(次回は5月18日を予定しています)