資産運用に興味があっても、初心者にとって株式投資のハードルは高いもの。本連載では、現役の証券アナリストが株式投資の魅力や付き合い方をやさしく伝えます。

  • グーグルやアマゾン、コカ・コーラなど日本でも有名な企業に投資できる
  • 内需に支えられた経済成長や企業の収益力が株価を支えてきた
  • 外国株投資は為替リスクがあり、手数料も高め。情報開示が不十分なことも

20年以上にわたり増配を続けている米国企業も

今回は、米国株への投資についてのお話です。

近年、米国株へ投資する個人投資家が増えています。背景には、グーグル、アマゾン・ドットコム、フェイスブック、アップル、マイクロソフトのいわゆる「GAFAM」のような成長力のある企業が増えてきていることがあります。株価の上昇が続いているため、利益を得た成功体験により興味をもつ人が一層増えているという側面もあるでしょう。

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また、ネット証券を中心に米国株を取扱う証券会社が増えており、手数料も引き下げられる傾向にあることから投資への環境が整いつつあります。さらにインターネットや新聞などでも米国株に関する情報が多くなり、米国株に関する投資の情報を集めやすくなっています。

米国企業の魅力のひとつに、グローバルに事業を行う成長力や株主への還元性向の高い魅力のある企業が多いことが挙げられます。前述の「GAFAM」のほか、コカ・コーラやマクドナルド、ジョンソン・エンド・ジョンソン、プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)、ウォルマートといった日本でも有名な生活密着企業にも投資できます。これらの企業は株主への配当も手厚く、20年以上にわたり増配を続けている企業もあります。

【図表1】マイクロソフトの株価(日足、終値)
マイクロソフトの株価
期間:2000年1月3日~2020年10月9日
出所:市場データよりMonJa作成

米国の名目GDPは30年で3倍以上に増加

また、新型コロナウイルスの影響が懸念されていますが、米国は日本に比べて高成長が続いている点も魅力です。国内で新たに生み出されたモノやサービスの付加価値の合計であるGDP(国内総生産)で比較すると違いがよくわかります。

およそ30年前の1990年時点では、米国の物価の変動を考慮しない名目のGDPは約5.9兆ドルでした。1ドル=105円で日本円に換算すると約620兆円となります。2019年時点の米国のGDPは約21.4兆ドル(約2247兆円)と、30年で3倍以上に増加しました。対して日本のGDPは、1990年当時は437兆円、2019年時点で553兆円となっています。日本も増加してはいますが、およそ2割しか伸びていません。

NYダウは30年間で10倍以上に上昇

株価指数も同様に差がついています。日本の個人投資家にもっとも馴染みの深い日経平均株価の史上最高値は1989年につけた3万8915円ですが、30年後の直近でも2万5000円を下回っている状況です。

対して米国ニューヨーク証券取引所に上場する主要な企業で構成されるダウ工業株30種平均(NYダウ)は、1989年末におよそ2700ドル台でした。その後、ITバブル崩壊やリーマン・ショックなどの波乱による上下を繰り返しながらも右肩上がりの上昇が続いています。コロナ後の直近でも2万8000ドルと、NYダウは30年間で10倍以上に上昇しています。

米国は、長期にわたり労働者の賃金がゆるやかに伸び続け、消費も同様に伸びています。内需に支えられた経済の成長や企業の収益力が株価を支えてきたといえるでしょう。

【図表2】1990年以降のNYダウの推移(日足、終値)
1990年以降のNYダウの推移(日足、終値)
出所:市場データよりMonJa作成

米国株を含めた外国株投資の注意点とは?

このように、米国株への投資には多くの魅力があります。では、米国株を含めた外国株投資を始める際に気を付けなければいけない点は、どのような点でしょうか?

注意点1 為替リスクがある

例えば米国株への投資では、手持ちの円をドルに両替をして投資を行うため、株価変動などのリスクのほかに為替変動によるリスクがあります。

円高の時点で円をドルに変えて投資をして、円安・ドル高のときに円に戻すと為替差益を得ることができます。逆に両替したタイミングよりも円高・ドル安が進むと為替による差損が発生してしまいます。

ただし、現在ではほとんどの証券会社で株式の取引時に外貨をそのまま保有することができます。株式の売却時が円高なら、ひとまず外貨のまま保有して円安・ドル高になるのを待つ手もあります。

注意点2 日本株投資より手数料が高め

証券会社にもよりますが、外国株投資は現地の証券会社に注文を取り次いだりする関係上、日本株投資よりもコストが高めになります。また、外貨の両替時にも手数料がかかる場合があります。取引の回数が増えると投資のリターンの差となってしまいますので、手数料は留意したいポイントです。

注意点3 情報開示が不十分なケースも

米国株の主要な企業であれば情報開示も充実していますが、外国企業はまだまだ情報開示が不十分であることも多く、その多くは英語などの外国語で表記されます。証券会社などの投資情報も充実してきてはいますが、日本からの投資では、まだまだハンディがあるという点には留意したいところです。

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