ブレード3枚のプロペラ型が主流

風力発電は、風の運動エネルギーを風車で機械的な回転力に変えて、この回転力を使って発電機を回して発電を行います。現在の主流は、ブレード(羽根)が3枚のプロペラ型で、高いタワーの上に「ナセル」と呼ばれる大型の箱が載っており、そこにローターが組み込まれて発電を行います。

タワーの高さは50~100メートルが標準とされています。タワー内部には送電用の電線や保守・点検のために利用するエレベーターが設置されているのが普通です。ローターが高い位置にある方が地表に比べて乱れのない、強い風が吹くので都合がよく、風速3メートル/秒から台風並みの25メートル/秒の間であればローターが回り、発電できるようになっています。

ナセルの中には人が作業できるスペースがあり、発電機のほかに、回転数を上げるための増速機、変圧器、ブレーキ、制御モーターなどが入っています。最近の大型の風車では、ナセルだけで数十トンもの重量があります。

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増速機は、風車の回転を発電機が必要とする回転数まで高める役割があります。標準的な風力発電1基で2万点の部品が使われていますが、その大部分が増速機の歯車です。

直径80メートル級の2MWの大型の風車では、ローターは4秒で1回転します。1分間では15回転くらいです。風速8メートル/秒の場合、ローターの先端はその5~10倍の速度で回っており、この場合は羽根の先端の速度は40~80メートル/秒となります。時速にすると140~280キロメートル/時です。

風力発電の風車はゆっくりと回転しているように見えるので、あれで発電できるのかと心配になりますが、羽根の先端は新幹線並みのスピードで回転していることになります。

羽根と羽根との間が広く空いているように見えて、幅の広い羽根が常に風を受けるように計算されているので、ゆっくり回っているように見えて受けるべき風はすべて受けてエネルギーに変えているのです。

トラリピインタビュー

ブレードの枚数も多いとかえって効率は低下してしまうので、経済性と風をとらえる性能や、強度、騒音を考慮すると、現在は3枚羽根が最もバランスがよいとされています。

風力発電の風車風力発電の風車は3枚羽根が最もバランスがよいとされる

ゆっくりしたローターの回転を100倍から120倍に回転数を高めているのが増速機の役割です。増速機は歯車を増やすことで、1分間に15回転するローターの回転数を1500~1800回転にまで100倍に高めます。

通常の歯車は、自動車のエンジンのように、高速の回転数を低速で一定の回転数に減速するために使われます。それに対して風車の場合、低速の回転数をきわめて高い回転数にまで上げるという、通常とは逆の働きが求められます。そのために大きな負荷がかかり、風力発電の設備の中でも最も故障が起きやすい部分となっています。

ナセルとタワーの間には、風向きに対してナセルを制御する歯車とモーターが付いています。風向きに合わせてナセル全体の方向を変えて、ローターの回転面を風の方向に常に直角に当たるように調節しています。

大型化の流れが加速、風の力の3割を電気に変換

発電機は大型の風車であれば、出力数百kW~3000kWくらいまでの規模が取り付けられています。

近年の風力発電はますます大型化の流れが強まっています。風から取り出せるエネルギーは風速の3乗に比例し、ローターの回転面積に比例するという関係があります。そのために風力発電装置は、できるだけ大きな羽根を持った風車を、できるだけ風の強いところに高い位置で設置した方が効率がよいということになります。

これが洋上風力発電となると、ますます風車は大型化することになるとみられます。それは洋上での風車のコストは基礎部分の設置コストに比例するので、より大型の風車を設置することによってコストを低減することができるためです。

実際に風が吹いて風車が回った場合、どれくらいの割合で風を電気エネルギーに変換できるかというと、完璧に理想的な風車を作った上で理論上の限界は59%とされています。

実際にはそこまでは発電できません。現実は風の力を100とすると、そのうちの50はローター(風車)の回転時に空気力学的にロスが発生し、続いて増速機で回転数を上げる時に機械的損失で4%が失われます。さらに発電機を回して電気を発生させる際に6%くらいエネルギーが失われます(電気機械的損失)。

結果として実際に風のエネルギーの40%が取り出せる電気エネルギーの最大値になるとされています。さらに発電機を回して、蓄電池に貯めて、インバーターで変換した場合、最終的には風の力の30%が電気として取り出されます。

日本の一般家庭の場合、年間の電力使用量は3500kWくらいです。定格出力が2MWの風力発電の場合だと、利用率を25%とすると1年間の発電量は「2MW×0.25×24時間×365日=4,380,000kW」となり、これを各家庭の年間使用量の3500kWで割ると約1200世帯分の電力をまかなえることになります。

定格出力とは、風車の発電能力を表す呼び方で、ある一定の風速下でその発電機が1時間に生み出す電力のことを指します。

風力発電の場合、風の強弱があるためいつでも同じ出力が得られるわけではありません。定格出力で示される発電能力がいつもフルに発揮されるものでもないのです。定格出力に対して実際に発電した電力の割合を「利用率」と呼び、日本では利用率が20~30%くらいの発電設備が多いようです。

地理的条件に恵まれる欧州、日本は洋上風力発電に可能性

現在、世界では風力発電の風車は12万基くらい建っています。そのうちの半分くらいがヨーロッパにあります。ヨーロッパは800年以上にわたって、風車を粉ひきや揚水に利用してきた長い歴史がものを言います。

ヨーロッパは地理的にも好条件がそろっていて、デンマークやドイツの北部では平坦な土地に常に安定して偏西風が吹いているため、それが風車を設置するのに望ましい条件を形作っています。

日本でもすでに1500基も風車が立っていますが、海岸線に沿ったところに一番多く設置されており、その次に多いのが海からあまり離れていない丘陵地帯です。年間を通して強い風の吹くところが風車の設置に適しているのですが、それだけでは充分ではありません。生み出した電力を送るべき送電線が近くにないと具合が悪いのです。ブレードやタワーという巨大な構築物を難なく運ぶことができる広い道路も必要です。

北海道では風が強く吹く地域もありますが、広い土地でも接続する電力網がないところもあって、せっかく発電しても電力を送れない場所が多いのです。日本海側は冬になると非常に強い雷が発生することも多く、これも日本には風力発電を設置するのに向いていないとされる理由でもあります。

そこで洋上風力発電のアイディアが出てきます。周囲を海で囲まれた日本は排他的経済水域も世界で第6位と広く、洋上での風力発電には適した場所が多くあります。日本の近海は遠浅の海域が少なく、陸から離れるとすぐに水深が深くなるため、海底に据え付ける形式よりも、海に浮かべる浮体式の洋上風力発電方式が有望と見られています。

技術的にはまだ克服すべき課題がたくさんあるので、これからの新たなブレークスルーが待たれるところです。

風力発電機器のメーカー別のシェアを見ると、第1位がGE+アルストム、第2位がエネルコン、第3位がベスタス+NEGミーコン、となっています、さらに第4位には、日本の日立(6501)と富士重工(7270)、第6位に三菱重工(7011)、第7位に日本製鋼所(5631)の名前が挙がっています。

日本の技術が主流に返り咲く日も近いと思われます。この分野からは当分、目が離せません。

日立製作所(6501)/日本製鋼所(5631) 月足、2012年~

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