「預金なら安心」って本当なの? 「元本保証」って、実際に何を保障してくれるの? 実は、現金にもリスクが潜んでいるのです。本連載ではそんな「現金のリスク」を切り口に、お金のほんとうの価値を守るための資産運用について考えていきます。今回は、株式の信用取引の状況を表す「信用倍率」に注目して、株価や現物取引との関係を探ります。

  • 信用倍率は、信用取引の取り組み状況を示す値
  • 信用取引とは、投資家が証券会社から資金や株式を借りて行う株取引
  • 信用倍率が1.0より上か下かが、株価が上がりやすいかどうかの目安となりうる

東京では緊急事態宣言が延びたのに加え、自治体によっては夏休みの期間も延びたようですね。株価も大きな変化がなく、何とはなしに停滞気味です。先行きは、どうなるのでしょうか?
先行きといえば、保有している個別銘柄の先行きも気になっている方、いらっしゃいませんか? ひょっとすると、「信用倍率」が参考になるかもしれません。

株式の「信用倍率」とは?

そもそも信用倍率とはなんでしょうか? 企業に対する「信用の度合い」を計るものではありませんよ。企業が発行する社債に対する信用の度合いを測る尺度として「格付け」がありますが、格付けと信用倍率とは全く関係がありません。

信用倍率は「信用買い残高÷信用売り残高」という式で計算することができ、信用取引の取り組み状況を示す値です。

では、信用取引とは何でしょうか?

信用取引とは?

「信用取引ではない」一般的な株式の取引では、投資家がご自身の手元の資金で株式を買ったり、ご自身が保有する株式を売ったりしますね。こうした取引を「現物取引」と言うことが多いようです。

一方で信用取引では、投資家が証券会社からお金を借りて株式を買います。また、証券会社から株式を借りて株式を売ります。
立場を変えると、証券会社は投資家を信用してお金を貸したり、株式を貸したりします。だから「信用取引」なのです。

MonJa読者アンケート

「証券会社からお金を貸してくれるのなら、手元資金がゼロでも株式投資ができる?」
いいえ。証券会社からお金を借りて株式を買う、いわゆる「信用買い」の場合、委託保証金を納めなくてはなりません。委託保証金の額は、約定価額の30%とされています。また、お金を借りていますので、決済の日まで証券会社に金利を払います。

そして、証券会社から株式を借りて、借りた株式を売却する取引を行う「信用売り」も、信用買いと同じく委託保証金が必要です。金利の代わりに貸株料を払うことになります。なお、信用売りは「空売り」とも言われています。

ところで、委託保証金は現金のほか、国債や株式などの代用有価証券も認められています。時価の80%が委託保証金として認められる額になります。現物取引で買った株式の株価が低迷したままの、いわば塩漬けの状態になってしまっている場合に、代用有価証券として活用する、という考え方もあります。

信用売りは現物取引よりも短期間で大きな利益を挙げることも可能ですが、計り知れない損失を被ることを覚悟しなくてはならない取引でもあります。

信用取引
信用取引は、証券会社からお金を借りたり、株式を借りたりして行う取引のこと。「信用売り」では大きな損失が出ることもある

信用倍率を現物取引に活かす

さて、信用倍率の話に戻ります。信用倍率を、株式の現物取引にどう活かせばいいのでしょうか?

信用倍率は、ヤフーファイナンスでは銘柄ごとの「詳細情報」のページの下欄に、信用買い残高(信用買残)と信用売り残高(信用売残)とともに「信用取引情報」として載っています。
「信用買残」は、いずれ売ることになる「信用買いの残り」を意味し、逆に「信用売残」は、いずれ買い戻されることになる「信用売りの残り」を意味します。

信用倍率と株価の関係は、以下のような目安と申しますか、傾向があるようです。

信用買残 > 信用売残 で信用倍率が1.0以上
株価は過熱気味で、株価は上がりにくい傾向

信用買残 < 信用売残 で信用倍率が1.0未満
将来の買い需要が見込まれ、株価が上がる傾向

現物取引と信用取引との最大の違いは、「証券会社と貸し借りの関係がある否か」です。現物取引は、もちろん証券会社との貸し借りの関係はありません。しかし、信用取引は先述の通り、貸し借りの関係があります。

貸し借りの関係である以上、いずれ返さなくてはなりません。「信用買い」の場合には、株式を売って、証券会社には現金で返します。「信用売り」の場合は株式を買い戻して、証券会社には借りた株式と同じ銘柄の株式を返却します。

ですので、信用倍率が1以上、つまり「いずれ売ることになる株式」の方が「いずれ買い戻される株式」より多い状態であれば、株価は上がりにくい傾向にある、という判断に至りますし、逆に信用倍率が1未満ですと、将来は買い戻しの需要が強く、株価が上がりやすいという判断に至るのです。

信用倍率はあくまでも目安

ここまでご覧いただいて、「信用取引はしないけど」保有している銘柄や、買おうとしている株式の株価の先行きを、信用倍率を基に占うことができそうだと思っている方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、信用倍率は絶対的なものではありません。信用倍率は極端に増え続けることもあり、筆者は過去に「信用倍率100倍」という驚異(?)的な値を見た記憶があります。また、ヤフーファイナンスの信用倍率は概ね1週間に1回の更新頻度です。ですので、信用倍率がある日、突然、大きく下がったり、上がったりということもあり得るのです。

信用倍率は、あくまでも目安のひとつとしてご活用なさってくださいませ。