現役証券アナリストの佐々木達也さんが、株式市場で注目度が高い銘柄の強みや業績、将来性を解説する本連載。第14回は、インターネットを通じて印刷を低価格で仲介する「ラクスル」などを運営するラクスル(4384)を取り上げます。

  • 主力は印刷事業の「ラクスル」。短納期・低価格で固定ユーザー数が着実に増加
  • 顧客と印刷業者を直接仲介し、win-winのビジネスモデルを構築
  • 経営指標として重視する売上総利益は過去4期にわたり年平均44%と成長が続く

ラクスルはどんな会社?

ラクスルは「印刷や物流・広告などのデジタル化が進んでいない産業に対してインターネットを持ち込み、その産業構造を変革する」ことを目標に掲げています。最近では女優の「のん」さんを起用したテレビCMで社名をご存知の方もいらっしゃるのではないでしょうか?

設立は2009年と比較的新しく、代表取締役社長CEOの松本恭攝氏が「世の中は想像以上にアナログで非効率な事業が多くデジタルの力を使えば便利になり生産性はもっと向上する」との想いで事業をスタートさせました。近年大きなテーマとなっているデジタル・トランスフォーメーションに早くから事業機会を見出し、地道な変革を続けている企業とも言えそうです。

新しいNISAの“裏技”教えます! ニッセイアセットマネジメントの情報発信&資産運用アプリ

主力事業は印刷事業の「ラクスル」です。広告やチラシ、ノベルティなどの印刷物のプラットフォームを運営しています。ラクスルは自社サイトで事業者や消費者から印刷物の注文を受け、データのチェックや決済、請求などの手続きを代行し、納品を手配します。近年でも短納期・低価格などの使いやすさが顧客に受け、固定ユーザー数が着実に増加しています。

ラクスルの強みは?

印刷事業の「ラクスル」の強みは、自社で印刷工場を持たず提携している中小の印刷・物流会社に注文を仲介している点です。

印刷業界はこれまで下請け・孫請け中心の工場も多くピラミッド型の多重下請けの構造でした。受注形態も営業担当者を介して受注する形態も多く収益性も低いことが課題でした。また顧客が小ロットでの製作を希望していてもコストに見合わないこともありました。

しかしラクスルのビジネスモデルは、受注した注文をラクスルが適宜、稼働が可能な工場に仲介することでリーズナブルな価格で印刷することができます。これにより顧客は低価格かつ小ロットでの注文も可能になり、印刷業者は印刷設備を眠らせず活用でき、新たな需要も創出できるといったwin-winのビジネスモデルを構築しています。

同様に、物流プラットフォームの「ハコベル」事業は、荷主からプラットフォームでの仕事を提携している全国のドライバーに配信し、その時空いているドライバーに仕事を仲介する物流版ウーバーのようなビジネスモデルを構築しています。

ラクスルの業績や株価は?

ラクスルの2022年7月期は売上高が前期比39%~43%増の356億円~366億円、営業利益(※)が20%~32%増の10億円~11億円と大幅増収増益を見込んでいます。

※前期は非連結決算で株式報酬の費用を考慮した参考値です。

2月1日にEC向けの段ボールで高シェアの「ダンボールワン」社の買収を完了したことから業績予想を上方修正しました。新型コロナにより印刷の「ラクスル」と物流の「ハコベル」が影響を受けて業績の下押し圧力となっていましたが、感染にもピークアウト感が出てきたことから今後は業績回復を見込んでいます。

ラクスル(4384)の株価(2021年1月~、月足、終値)

2月18日の終値は3130円で、投資単位は100株単位となり、最低投資金額は約32万円です。

ここ最近はアメリカの金融引き締めへの警戒感で成長株に逆風が出ており株価は下落が続いています。しかしラクスルが重要な経営指標として重視している粗利に当たる売上総利益は2021年4月期まで過去4期にわたり年平均44%と成長が続いています。日本の企業のデジタル革命はまさに始まったばかりで今後も業績拡大による株価の復調に期待しています。

メルマガ会員募集中

ESG特集