豊かな人生とは何をもって言うか、その指標はお金だけでしょうか? ビジネスを成功させた人に聞くと「人に恵まれた」エピソードが必ず語られます。コロナ禍を体験し、先が見えない世の中だからこそ「人と繋がる」ことの大切さが身に沁みます。“人”という字が支え合っているように、人と出会って何を学んでいくかは、人生において大切な自己投資になります。この連載では、専門知識に秀でたスペシャリストや様々な経験を重ねたその道の達人に、豊かな生き方の極意を語ってもらいます。
第15回のテーマは「夜の銀座で人脈をつくる」。銀座ママ歴は20年をゆうに超える成田のにさんのお店を訪ね、お話を伺いました。(聞き手=さらだたまこ)
成田のに(なりた のに)さん
東京・銀座8丁目の「ソレイユのに」のママ。
東京生まれ。OL・百貨店の販売の仕事を経て、会員制「クラブ順子」でホステス修業。伝説の田村順子ママの薫陶を受ける。独立して、銀座6丁目で開業してママに。現在は8丁目に移転。お店は紹介による会員制。
女性にも勧めたい夜の銀座入門
令和4年3月22日、マンボウ(まん延防止等重点措置)が解除になったので、筆者も久々に家を出て、電車に乗って銀座に繰り出しました。
なにせ、令和4年の声を聞いてまもなく、オミクロン株が猛威を振るって、仕事はほぼリモート、不要不急のおでかけは全部キャンセルになって、ずっとお籠もり状態が続いていましたので、数ヶ月ぶりに見た繁華街のネオンが、しかもことさら銀座だと思うと、とても眩しく感じました。
さて、今回の取材の目的は、銀座の夜に自己投資!
まあ、上つ方のビジネスマンなら、おなじみの世界だと思いますが、女子にとっては、関心があってもちょっとハードルが高い世界かと思われます。
筆者は食べ歩きのグルメ取材も仕事のテリトリーなので、知らないお店でも巷の評判や、たまに看板を見ただけで、ひとりで入っていって覆面リサーチした後に取材を申し込む……なんてことをしばしばやってきたわけですが、銀座のママの店となるとそうはいきません。
銀座のママの店(銀座でなくてもこの類いのお店)はいずこも大抵、一見さんお断りで、最初は店に馴染みの上客の誰かに連れていってもらって……という紹介が必要なのです。
というのも、ここは単なる酒場ではなく、社交の場。紳士・淑女が集い、お互いに有益な情報を交換したり、人脈を広げる交流のサロン。そこには不文律があって、明文化されてないルールを空気で感じて理解し、享受できる人たちだけが集えるクローズされた空間なのです。
その不文律を司るのがお店のママ。いわば、ママがバイブルということになります。
というと、なんだか、やたらハードル高い印象になってしまいましたが、令和の時代にキャリアを磨きたい若い女性にこそ、銀座になじみのお店を持って、最強のママと懇意にしていただきたいと思います。
そこで、今回お話を伺ったのは、銀座8丁目の「ソレイユのに」のママ、成田のにさん。ごく普通のOL生活を送っていたが、あるとき、銀座の老舗「クラブ順子」の田村順子ママに出会い、ホステスにスカウトされたのが、のにさんのその後の人生を大きく変えました。
田村順子さんは、昭和の銀座全盛期にその名を轟かせ、テレビ番組にも出演、映画にも主演した伝説のママ。いつも華やかなドレス姿でフランス人形を彷彿とさせた順子ママでしたが、その薫陶を受けた成田のにさんも、和服美人だけど、雰囲気はフランス人形だな……というのが最初の印象でした。
さて、一見さんお断りのお店に、最初はどうやってアプローチしたらいいのでしょうか?
銀座の場合、ママのいるお店は6丁目から8丁目あたりにひしめく雑居ビルに入っていることが多いのですが、会員制でPRの必要もないので、ネットで検索しても、ヒットしないし、よくわからない世界です。
しかも、建物自体が裏路地にあったり、表に面していても入り口がわかりにくく、エレベーターを降りても、いくつか店があって、見つけにくくなっているのが常で、やはり最初は紹介者に連れて行ってもらうのが正解。
なので、周りに、夜の銀座事情に詳しそうな人がいればいいのですが……。
意外な穴場は、身近にいるかもしれません。たとえば父親に「お父さん、銀座になじみにお店があったら、向学のために連れていって!」と言ったら、「ええっ!」と驚きながらも張り切って、とっておきの最強のママの店に連れていってくれるかも!
自分の父親でなくても、親戚のおじさんでも、親友のお父さんでも!
筆者の場合は、飲食店の取材が多いので、親しくなったレストランのオーナーから紹介してもらったこともありました。
ちなみに、今回の成田のにさんは、この連載の第1回で登場した井上一生さんのご紹介です。