宮崎県延岡市で保険業や資産運用のアドバイスに携わる小田初光さんが、地方で暮らす生活者のリアルな視点で、お金に関するさまざまな疑問に答えます。今回もNISAやiDeCoで資産形成を始めたいと思いながらも、何を買っていいかわからないと悩む30代の女性に向けて、投資信託を選ぶ際に参考にしたい「評価機関による投資信託の評価」の活用法について解説します。

  • 投資信託を選ぶのが難しい場合は、評価機関による第三者目線の評価が役立つ
  • QUICKファンドスコアは、長期投資にふさわしいかどうかで投資信託を評価する
  • 下値抵抗力が高い投資信託は過去のパフォーマンスが安定しており、長期投資に向く

さまざまな角度から投資信託を比較する評価機関

【質問】
NISAやりたいんですよ。iDeCoもやりたいんですよ。でもどうすればいいのかわからないんです。何を買えばいいのかわからんし、どこに行けば良いじゃろうか?

前回までは、相場が暴落時に投資信託を選ぶステップとして4つのやるべきことを説明しました。

アート投資を資産形成に!

資産運用の主役。株式に投資する投資信託を選ぶ手順

初心者投資家が最初に、絶対に目にしなければならない投資信託の月次報告書の中で重視すべきポイントを説明しましたが、そもそもたくさんある投資信託の中から、どこの運用会社の商品が良いのかを決めるのは容易ではありません。

もしかして「月次報告書自体知らないのですが? それ何ですか?」という方もいるかもしれません。商品の良い悪いは別にして、金融機関に行くと自身の意思とは関係なく、どうしても人気商品に誘導されて買ってしまうことになります。
そこで一つの目安として、投資信託を第三者目線からの情報によってチェックすることが大切になります。さまざまな角度から投資信託を比較している、評価機関があることをご存知でしょうか。

気になった投資信託の「評価」がどうなっているのかは、複数の評価機関で細かく分析されているので、使わない手はありません。
パフォーマンスは過去のデータに基づくものであり、今後もそうなるとは限らないので注意が必要になりますが、評価機関の評価を見ることで、自分の考えとの最終すり合わせをすることができます。

評価といってもいろいろで、評価機関によっては短期的パフォーマンスを重視するものと、長期的パフォーマンスに重視するものとに分野が分けられているようです。
初心者にとってはどうしても、上昇相場での数値が良くなりやすい短期のパフォーマンスが目に行く傾向にありますが、今回は「投資の王道」である長期投資にふさわしいかどうかという観点で投資信託を分析し、「総合スコア」として1~10の10段階に分類して、上に行くほど高評価とシンプルで分かりやすい「QUICKファンドスコアを推奨いたします。

長期投資の目線を重視するQUICKファンドスコア

QUICK資産運用研究所が算出するQUICKファンドスコアは、長期投資家向けに、運用実績の長期的な積み重ねを重視する評価になっています。日本経済新聞社や、多くの金融機関も参考にしている評価です。部門別に分けられているのも便利で、私も最終判断の確認に使わせてもらっています。

今回は、QUICKファンドスコアを見る際の要点をもとに、投資信託の評価や選び方について深掘りしていきます。

QUICKファンドスコアは、投資信託の評価をするうえで、

①リスク……運用方針に見合ったものか?
②リターン……リスクに見合ったリターンを上げているか?
③下値抵抗力……下げ相場での価格の落ち込みが小さいか?
④コスト……コストに見合ったリターンを上げているか?
⑤分配金健全度……元本を取り崩して分配をしていないか?

の5項目によって、総合スコアを判定していくことになります。

5項目とも当たり前といえば当たり前の内容ですが、特に長期投資に欠かせないものとして③下値抵抗力、④コスト、⑤分配金健全度があります。
私が特に注目すべきと考えるのは、下値抵抗力です。この3項目に関しては、長きにわたり安定した儲けが得られているかを見極める指標になるのですが、下値抵抗力の評価をもとにして下げ相場になぜ強いのかを考えていくと、「なるほど、そうなんだ、わかった」と思えてきます。

投資信託の下値抵抗力と現金比率

直近の日本経済新聞に、「投資信託の運用会社を含む機関投資家は『トランプ関税』による株価乱降下に対して保有株の一部現金化で思わぬ損失を回避しようとしているが、相場の急回復時のリターンを取り損ねる可能性もある」と書かれていました。
簡単に説明すると、「強烈な下落相場が続くときには、儲けがあるうちに利益を取っとかないと、それ以上に下落したら儲けがなくなりますよ。ただ相場が強烈な上昇になると、それに備えて買っておかないと儲けが逃げますよ」となります。
下落相場になったときに余力資金がないと安い銘柄が多く買えないので、大きな儲けはないと言っています。

投資信託の運用には、投資家からの資金が必要になります。投資家から集まったお金が純資産総額となって、ポートフォリオを構築していきます。そしてポートフォリオを構成するにあたって資金の配分を決めていくのですが、大半の投資信託は、例えば日本株中心の銘柄で構成する商品ならば限りなく100%が日本株の銘柄で構成されています。なぜなら、上昇相場サイクルではリスクを取るだけパフォーマンスは良くなるからです。

そしてこのとき、リスクを抑えるためにポートフォリオに現金としての枠を取っていれば、下落時に銘柄を安く買い付けできることもできます。インデックス商品とアクティブ運用商品の違いとして、このポートフォリオの現金枠を多めに設定している商品もあることが、ファンドマネージャーの権限があるアクティブ運用商品の強みです。

新聞では、相場の方向感が変化している状態では、『ひふみ投信』の現金比率が2025年2月末で2.57%だったのが、1カ月後の2025年3月末時点で11.5%と、利益を確保して現金比率を高め、コモンズ投信も同様にして守りの戦略になっていくしかないと書かれています。
一方、別の商品では、すでに現金比率を5~6年前から高めていき、現在では12%を超える現金が準備されており、下落時に買いに走っている攻めの商品もあります。言わずと知れた『さわかみファンド』です。

一般の金融機関では買えない「直販」の投資信託

現金比率を高めるということは、それだけ運用できる銘柄も少なく、短期的なパフォーマンスを得られないことになりますが、長期的には下落時に安値で買えることにもつながり、パフォーマンスは安定することになります。いかに長期投資に視点を置いているかが理解できます。
下値抵抗力の評価も、短期的な動きに一喜一憂しない運用方針に基づくものとなっています。短期運用のパフォーマンスでは『ひふみ投信』、長期運用ではインデックス商品も上回っている『さわかみファンド』と指標も語っているのがわかります。投資家の運用期間で投資信託を選ぶことができる項目とも言えるでしょう。

【図表】QUICKファンドスコアの比較(2025年4月末時点)
ひふみ投信 さわかみファンド
総合 4 8
リスク 2.7 7.7
リターン 3.4 1.6
下値抵抗力 1.4 8.1
コスト 8.6 7.9
分配金健全度 10 10

出所:QUICK資産運用研究所

次回も、続けてインデックス商品とアクティブ商品の投資信託を深掘りしていきます。