「預金なら安心」って本当なの? 「元本保証」って、実際に何を保障してくれるの? 実は、現金にもリスクが潜んでいるのです。本連載ではそんな「現金のリスク」を切り口に、お金のほんとうの価値を守るための資産運用について考えていきます。今回は、長期分散投資における「日本株」の意義について考えます。

  • 投資効率を示すシャープレシオの値が、日本株に投資すると低くなる傾向
  • 先進国や新興国の株式・債券に分散投資すると、投資効率は上がりやすい
  • マイナス金利の状況では、債券の資産分散効果が得られにくい可能性も

読者の皆さま、こんにちは。首都圏などで二度目の緊急事態宣言が出て、本稿執筆時点で、すでに折り返しの2週間を過ぎました。今のところ、株価は順調なようですが、今後は、どうなるのでしょうか?
「節分天井彼岸底」という投資の格言もあります。短期的には、やはり格言通りなのでしょうか?
いずれにせよ、投資は「未知の未来への投資」です。

短期的には格言通りなのか否かが気になるところですが、長期的には、いかがでしょうか?
繰り返しになりますが、投資は「未知の未来への投資」ですから、ここでは過去を振り返って、未来を考えることにしましょう。温故知新ですね。

過去を振り返ると、日本株への投資に疑問符が?

さて、のっけから突拍子もない見出しですが。今まさに絶好調な日本株を否定するかのような見出しです。どういうことでしょうか?

本連載の28回目から32回目にかけて、「アクティブなインデックス、まるでフェイクミートみたいなインデックスファンド」について、日本とアメリカを比べつつ紹介させていただきました。アクティブ運用とは、日経平均株価のような市場平均に勝つことを目指して投資先を選ぶ方法。インデックスファンドは、株価指数への連動を目指すファンド(投資信託)のことです。
「フェイクミートみたいなインデックスファンド」とは、「草食系」のインデックスファンドでありながら、より高い利益を求める性質を持つ株価指数に連動する、「肉食系」と性質を合わせ持つファンド、という意味を込めています。

そんな「アクティブなインデックス」は、TOPIX(東証株価指数)のような株式市場全体を反映するインデックス(指数)に比べれば、よりパフォーマンスが優れている(はずの)株式を選んでいる、という特徴があるのですが……。
アメリカでは、第29回でご紹介したNYダウ第30回の配当貴族のように、実際の株価指数の動きを見てもおおむねその通りになっているのですが、日本では、TOPIX Core30JPX日経400などを見ても、どうも事情が異なっているようでした。

ウォール街
やはり投資するならアメリカがいい?

そのために「未知の未来への投資」をして、ご自身の将来の資金設計に備えるのでしたら、「投資するなら日本より、むしろアメリカの方が良いのでは?」という疑問をお感じになったり、「短期的には日本株でも良いかもしれないが、長期的には、日本株だけで大丈夫なのだろうか?」と一抹の不安を感じられた方、いらっしゃいませんか?

ひょっとすると、そうした疑問や不安が、本稿では確信へと変わるかもしれません。

未知の未来に投資をし、将来の資金設計に備えるには「長期と分散」

【図表】投資対象の比率別シミュレーション
投資対象の比率別シミュレーション
引用元:myINDEX資産配分ツール

上の表をご覧ください。こちらは投資情報サイト「myINDEX」が提供する「myINDEX資産配分ツール」を使って算出した、2000年12月末から2020年12月末までの、過去20年間の投資実績データです。

投資対象は株式と債券で、それぞれ日本・先進国・新興国に分けています。

投資配分の数字ですが、例えば、最上段の横列は日本株と日本債券に、それぞれ50%ずつの割合で投資している、という意味です。上から4行目は、日本株・先進国株・日本債券・先進国債券に、それぞれ25%ずつの投資配分で投資しています。

表の右の3行は、得ることができる「年平均リターン」と、覚悟が必要な「リスク」(値動きの大きさ)ですが、投資配分の比較をするのでしたら、「シャープレシオ」を用いた方が良いかもしれません。

シャープレシオは「リターン÷リスク」で大まかに計算することができる、いわば投資効率です。シャープレシオの高い方が、効率の良い投資配分と言えます。

先ほどご覧いただいた表は「過去20年間の投資実績」ですから、長期投資の実績と言って差し支えないでしょう。

ここで考えてみたいのは、分散投資です。
先ほどの表では、上段から中央部分にかけて、資産配分を複数の投資対象に分散したものになっています(表の下段は、いずれもその資産単独の配分ですので、分散にはなっていませんが、ご参考までに載せておきました)。

いかがでしょうか?
日本株の配分が高いほど、シャープレシオが低い、つまり投資効率が芳しくないといえそうです(上の表では太字で表示しています)。

逆に、日本株の投資配分を低くするか、あるいは日本株の投資配分をゼロにしたシャープレシオの方が高い、つまり投資効率が良い傾向なのが分かります。

その傾向を裏付けているのが、表の下段で示している、資産単独の配分です。
日本株100%の数値をご覧いただくと、表の中では最低のシャープレシオです。

ところで筆者は、過去の稿(第6回)にて、「国の経済成長に大きく貢献しているのは企業です。企業が挙げる利益こそがGDPであり、企業の成長こそがGDPの伸び」、また同じく「企業が成長すれば株価が上がる傾向にあります」という持論を紹介させていただきました。
日本株100%のシャープレシオを見るにつけ、停滞する日本経済の姿を重ねてしまうのは筆者だけでしょうか?