宮崎県延岡市で保険業や資産運用のアドバイスに携わる小田初光さんが、地方で暮らす生活者のリアルな視点で、お金に関するさまざまな疑問に答えます。今回も、初めて投資信託を検討する投資初心者のために、実際の投資信託を比較してみます。今回は「手数料」の違いについて掘り下げていきます。

  • 保有するだけで1年間で5%も手数料を取られる投資信託もある
  • 投資信託によって信託報酬は大きく異なる。購入手数料もばらばら
  • 同じ投資信託でも、買う場所によって購入手数料が3.3%にもゼロにもなる

100万円の投資信託が、1年後には95万円になる

【質問】
初めての投資信託を買おうと思います。ところが? 同じ日本株の投資信託なのに、手数料がバラバラなのですが……。なぜ、こんなことになっているのですか?

なるほど。確かに手数料は大事な問題です。今は一般的な定期預金(メガバンク)の金利が年0.002%で、100万円を1年間預けても利息は20円の超低金利時代です。

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なのに、ある代表的な投資信託は、100万円で購入すると、最初の1年間は保有するだけで約5万円も手数料を取られてしまう。手数料の合計は5%になります。もう一度言います。5%です。1年間保有という条件で投資をスタートしたら、1年後に投資信託の元本が95万円に減ることが確定しているということです。維持するには1年間で5%以上のリターンが必要です。これは到底納得できるものではありません。
これが「コストリスク」と自分が勝手に言っているものです。

投資信託に投資するときは必ず、買い手と売り手がいます。つまり、私たち投資者(受益者)が買い手となり、売り手側が投資信託の運用会社(委託会社)、資金を保管管理する信託銀行(受託会社)と、証券会社・銀行などの金融機関(販売会社)となります。

この売り手側の手数料配分によって、買い手が払うコストも決まってきます。金融機関によって定期預金金利に差があるように、投資信託の売り手にも手数料差があって当然です。
そこで今回は、手数料の差を比較しながら投資信託の賢い買い方を考えていきます。

購入手数料・信託報酬・信託財産留保額

その前に、投資信託の手数料についてあらためて説明します。主な手数料は以下の3つです。

投資信託の主な手数料
手数料 概要 受け取る人
購入手数料 購入時に投資者が負担する費用。
購入時手数料、販売手数料と呼ぶこともある
販売会社
信託報酬 投資者が信託財産として間接的に負担する費用。
毎日計上され、基準価額の計算時に
信託財産から差し引かれる
委託会社、受託会社、
販売会社で分ける
信託財産
留保額
投資者が解約時(売却時)に負担する費用 受け取らない
(基準価額に反映)

コストパフォーマンスも、運用成績とともに重要な投資信託のパフォーマンスのひとつです。前回に引き続き、主に日本株式に投資する、それぞれ特性が異なる5種類の投資信託を比較しながら、コストはどうなのかを具体的に見ていきます。
なお、5つの商品の選別に際しては、私自身で投資をしているものや、これから運用を考えているものを選んでいます。決して推奨しているものではありませんのでご了承ください。

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日本株式の投資信託を手数料で比較

前回と同じく、パッシブ運用のインデックス型(日経平均株価連動)1商品と、ファンドマネージャーが運用するアクティブ運用型を3商品、そしてバランス運用型1商品で個別の特徴をつかんでいきます。この5商品の特徴を頭に入れておけば、他商品を購入する際も目安となるでしょう。

投資信託名 種別 購入
手数料
信託報酬 信託財産
留保額
設定日 運用会社
たわらノーロード
日経225
インデックス型 0 0.187% 0 2015/12/7 アセット
マネジメントOne
ひふみ投信 アクティブ型 0 1.078% 0 2008/9/30 レオス・
キャピタルワークス
さわかみファンド アクティブ型 0 1.100% 0 1999/8/24 さわかみ投信
損保ジャパン・
グリーン・オープン
「愛称:ぶなの森」
アクティブ型 3.3% 1.650% 0.3% 1999/9/30 SOMPOアセット
マネジメント
MHAMスリーウェイ
オープン
バランス型 1.1% 0.935% 0 1993/11/26 アセット
マネジメントOne

※手数料は税込み。購入手数料は上限(実際の手数料は販売会社により異なります)。データは2022年2月17日時点

ここで紹介したのは、各商品の「投資信託説明書(交付目論見書)」にある、「お客様にご負担いただく費用」として記載されている内容です。

日経平均株価に連動するインデックス型の①たわらノーロードと比べて、運用会社が独自の視点で運用しているアクティブ型の②、③、④、⑤は信託報酬が高く、④ぶなの森には購入手数料と信託財産留保額が、⑤MHAMスリーウェイオープンにも購入手数料がかかるのは致し方ないとも思うのですが、その中でも②ひふみ投信、③さわかみファンドが手数料を信託報酬のみにしているのは、直接販売(金融機関を通さずに、運用会社が直接販売する)に徹しているからです。

投資者が運用会社に直接コンタクトしないと買えない仕組みはコスト削減につながり、なおかつ直接販売の傾向として、投資者は自身で納得して買っているので、解約も少ないなどあります。まさに長期運用向けの仕組みといえるでしょう。

「どこで買うか」で投資信託の購入手数料は変わる

「投資信託の売り手にも手数料差があって当然」と言いました。投資信託の手数料のうち、購入手数料はあくまで上限であり、販売会社が自由に決められます。
実際に、ネット証券の口座を開設して購入して販売窓口を省くことで、購入手数料の上限が3.3%の④も手数料を0にすることができます。さらにネット証券特有の独自ポイントをつけることも可能になります。
投資信託に限らず、買う前に一度立ち止まり、自分で調べていけるかが、「賢い買い方」ができるかどうかの分かれ目です。

冒頭では「ある代表的な投資信託は1年で5%の手数料がかかる」と言いました。実はこの5%のうちの3.3%が購入手数料です。ネット証券であれば、手数料は信託報酬だけの約1.7%で済むので、その違いがわかると思います。同じ投資信託でも、どこを窓口にして購入するかでスタートが変わってしまいますので、ご注意ください。

そして、信託報酬が最も低い代表格が、①のようなパッシブ運用のインデックス型であることも覚えておいてください。

ちなみに①と②はつみたてNISAの対象商品にもなっています。②のひふみ投信は、日本株が中心の投資信託の中では信託報酬が比較的低く設定されています。いかに手数料が安価であるかが、長期運用には重要という事実も見えてきます。

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